大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(う)1193号 判決

被告人 土屋権六

〔抄 録〕

検察官の所論は、原判決は本件公訴事実と同一の外形的事実を認めながら、公職選挙法一三八条一項及び同法一四二条一項の各規定は憲法二一条一項に違反し無効であるとの見解のもとに、被告人に対し無罪を言い渡したが、右は法令の解釈、適用を誤り、しかもその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れないというにある。

よつて審案するのに、公職選挙法一三八条一項が戸別訪問を禁止し、又同法一四二条一項が文書図画の頒布を制限しているのは、公職の選挙が自由、公正に行なわれることを確保し、ひいて公共の福祉を保持せんとするものに外ならないのであるから、かかる一定の規制は、憲法の保障する表現の自由に対し許容されるところの必要かつ合理的な制限であると解すべきであり、前記公職選挙法の各規定をもつて憲法二一条に違反するものということはできない。そして、このことは、すでに幾多の最高裁判例(昭和四四年四月二三日最高裁大法廷判決、刑事判例集二三巻四号二三五頁等)の明示するところであつて、当裁判所もまたこれと見解を同じくするものである。してみれば、原判決のこの点に関する見解及びこれと結論を同じくする弁護人らの縷述する見解は、いずれも右と異なる見地に立脚する解釈であつて、左袒できないところであり、又弁護人らが当審において提出した各資料の記載内容を検討しても、当裁判所の前記結論に消長を来たすものではない。畢竟、原判決は法令の解釈、適用を誤り、しかもその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、とうてい破棄を免れない。検察官の論旨は理由あるに帰する。

(栗本 石田一 藤井)

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