東京高等裁判所 昭和44年(う)2009号 判決 1970年2月05日
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役三年六月に処する。
原審における未決勾留日数中一二〇日を右本刑に算入する。
原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人我妻源二郎、同矢作好英連名提出の控訴趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。
これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
原判決は、被告人の本件所為に対する法令の適用において、「強盗強姦未遂の点は刑法二四三条、二四一条前段に、強盗致傷の点は同法二四〇条前段にそれぞれ該当するが、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合である」としているけれども、本件所為に対する擬律としては、強盗強姦未遂罪(致傷の点を含む)として同法二四三条、二四一条前段のみを適用すれば足りると解するのを相当とする(昭和八年六月二九日大審院判決、刑集一二巻一二六九頁参照)ところ、原判決は、同法五四条一項前段、一〇条を適用し、結局一罪として犯情の重いと認めた強盗強姦未遂罪の刑で処断しているのであるから、結論においては、正当なるに帰し、原判決の右法律適用の誤りは、原判決に明らかに影響を及ぼすものとはいえず、この点を以てしては、未だ原判決破棄の理由とはなし得ないというべきである。<以下略>(井波七郎 足立勝義 酒井雄介)