東京高等裁判所 昭和44年(う)2113号 判決
被告人 落合定夫
〔抄 録〕
広田きみ子の裁判所に対する供述中鈴木輝一からの伝聞供述の部分については、同人が直接被告人らから原判示のような暴行を受けた旨の供述であり、鈴木輝一はその後死亡したものであるから、たとえ所論指摘のように本件犯行現場におけるその余の目撃証人が多数存在している場合でも、これらの証人が被告人に遠慮して真実を語りたがらない本件事案の性質にかんがみると、犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるというべきであり、従って、鈴木輝一の右供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるならば、刑訴法三二四条二項、三二一条一項三号により証拠能力を有するものと解すべきであるところ、右の信用性の情況的保障は、原供述者本人すなわち鈴木輝一の供述について具備されていれば足り、広田きみ子のそれについてまで右の要件が必要とされているものではないところ、鈴木輝一の右供述が通常の精神状態の下でなされ高度の信用性を具備している時期におけるものであることは、広田きみ子の原裁判所における供述により明らかであるから、鈴木輝一からの伝聞供述の部分(鈴木が受傷帰宅直後に妻広田きみ子に聞かれて「二番ともう一人の若い衆にやられた」といいましたという証人広田きみ子の証言)を原裁判所が事実認定の用に供したのは正当で、原裁判所には所論の訴訟手続の違反は存しないから、論旨は理由がない。
(寺尾 山本 渡辺)