大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(う)579号 判決

被告人 松本慶輔

〔抄 録〕

原判決挙示の証拠によれば、原判示の恐喝(既遂)の事実を認めることができる。所論は、原判示の千葉酋耳は、原判示の有限会社小島商店の単なる店員であつて、同商店所有の金銭については、法律上はもとより、事実上も処分の権限または地位を有しないから、同人を恐喝して同人からレジスター在中の同商店所有の現金を交付させても(処分権限を有する原判示の小島以志をも恐喝したことによつて恐喝の未遂となることはあつても)、恐喝の既遂にはならない旨主張する。

しかし、目的物につき、処分権限を有しない者の所持、すなわち、事実上の支配であつても、その所持は、所持として法律上の保護を受けるものであるから、本件の場合、前記千葉がレジスター在中の前記小島商店所有の現金につき、処分権限を有しない者であることは、所論のとおりであるが、同人に対し、原判示のような恐喝手段を用いて、同人を畏怖させ、同人をしてレジスターを開扉させて在中の事実上同人の所持にかかる現金一万二千円を交付させた以上、やはり恐喝罪(既遂)となるのである(昭和二四年二月八日第二小法廷判決、最高裁判所刑事判例集三巻、二号、八三頁参照)。よつて原判決には何ら所論のような事実誤認ないし法令適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。

(樋口 浅野 井上)

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