東京高等裁判所 昭和44年(ネ)1841号 判決
おもうに、家事に従事する主婦といえども、その労働により一家の家事を支え、外において勤労する家族をして家事の煩労を免れしめるものであるから、その労働をもつて経済的に無価値であるとかその経済的利益を評価することができないものとすることをえないのは当然であり、この理は六〇歳を超える主婦についても変りはない。このことは、主婦を失いまたは主婦を有しない勤労者が女中または家政婦等により家事を賄う場合が多いことから明らかである。しかし、ひとしく家事といつてもその規模は千差万別であり、家事労働の量においてもこれを画一的には決せられないから、その経済的利益の評価も勢い一定せず、しかもその評価は極めて困難である。それ故に、個別的な家庭における家事労働の経済的利益を評価する方法としては、その家事の量が女中または家政婦等を使用してこれを処理すべきものと一般に考えられる程度のものかどうかを基準とし、その基準に達するものについては女中または家政婦に対する一般相場の報酬額を参酌してその額を定めるを妥当と考える。しかし、この程度に達しない家事労働については、これを評価すべき適確な資料がないから、その経済的利益を主張する者においてその額の相当である事実を立証しないかぎり、その評価をなしえないものといわなければならない(この場合の立証としては、月になん回家政婦を使用して家事を処理させているか等の事実を明らかにすれば足りるであろう。)
(長谷部 石田実 麻上)