東京高等裁判所 昭和44年(ネ)2367号 判決
民事訴訟法第一七〇条は、送達の迅速、簡易、確実、経済を図るために、受訴裁判所の所在地内に住所、居所、事務所等を有しない当事者、訴訟代理人等に、裁判所の所在地内に送達を受くべき場所と送達受取人の届出を義務づけ(同条一項)、受訴裁判所の所在地に住所等を有する者にも右届出を許し(同条三項)ているのであるが、一方、右届出のあつたか否か等の点で不明確にならないように、本来具体的な訴訟事件ごとに、受訴裁判所に右届出をなすことを必要とし、当該裁判所に将来係属すべき訴訟事件につきあらかじめ一般的包括的に届出でることは許されないものと解するのが相当である。
然るに、前記規則にもとづき東京弁護士会所属弁護士から同会に提出される「同会を送達受取人とし、同会事務所(東京地方裁判所所在地である東京都千代田区所在)を送達場所とする。」旨の前記届出書二通のうち一種は東京地方裁判所に提出されるが、それは同裁判所執行官室(執行官法施行前は執行吏役場。以下同じ。)に保存備付せられ、かつ、その名簿一覧表が職務執行区域内各裁判所事件部各書記官室に配布されているにすぎないことは、当裁判所に顕著であるから、これを以つて民事訴訟法第一七〇条第一項が本来要求している届出があつたものと解することはできない。しかし、右一通が同執行官室に備付されると、当該弁護士を受送達者とする各訴訟事件の送達書類が前記(二)の1.の如くして送達され、右各事件の受訴裁判所もまたこれを適法な送達として取扱い敢えて違法視しないのが裁判所多年の慣行であるのみならず(必ずしも法規に正確に適合はしないが裁判所の慣行として適法と認められた送達の事例については、最高裁判所昭和二七年八月二二日第二小法廷判決及び同三〇年一〇月二八日第二小法廷判決参照)、たとえ民事訴訟法第一七〇条第一項が本来要求している届出には該当しなくとも、送達機関である受訴裁判所の書記官において当該事件の訴訟代理人である弁護士に対する送達が「所属弁護士会を送達受取人、同弁護士会事務所を送達場所として行わるべきこと」を予知し得べき前述のごとき措置の講じられている以上(控訴代理人林徹の氏名は、当裁判所書記官室に配付された前記一覧表に、本件原判決正本送達以前から登載されていることは、これまた当裁判所に顕著である。)、右慣行を容れても民事訴訟法第一七〇条第一項の届出の明確を期するとの法意はなんら害されないので同条第一項所定の届出があつた場合に準ずべきものと解するのが相当である。
(川添利 荒木 田尾)