東京高等裁判所 昭和44年(ネ)2472号 判決
一、本件土地が自作農創設特別措置法によつて売渡された土地であり、その売渡の日が昭和二五年一一月一日であることは当事者間に争いがないから、農地法第二章第一節の規定および同法第七三条ならびに農地法施行法第一二条によつて、本件売買については、昭和三三年一〇月三一日までは農林大臣の、同年一一月一日以降は千葉県知事の各許可がその効力発生の要件であつたことが認められる。
訴外鑓田半が昭和三三年九月二四日死亡して、控訴人鑓田りつおよび同鑓田貞治が被控訴人主張のような割合で本件土地の持分を相続によつて承継取得し、昭和四〇年六月三〇日その旨の所有権取得登記を経由するとともに、同日本件土地を被控訴人主張のように(一)ないし(六)の土地に分筆登記したことは当事者間に争いがない。
前記岡沢忠夫が昭和四二年一〇月二一日死亡して、第一審脱退原告岡沢絹代が相続によつてその地位を承継し、同日前記売買契約に基づく(一)ないし(六)の土地の条件付権利を被控訴人に贈与したことならびに、これに伴い前記仮登記につき同年一二月一八日付をもつて、右岡沢絹代および被控訴人のため順次所有権移転請求権移転の各付記登記が経由されたことも当事者間に争いがない。
その後昭和四〇年八月一七日付をもつて千葉県知事が、控訴人松尾、同岡村および同中島への、宅地転用の目的でする(一)ないし(六)の土地の所有権の移転を許可し、同土地が整地されて右地上に(七)および(八)の建物が建築され、右土地の現況が宅地であることは当事者間が争いがない。かように(一)ないし(六)の土地の現況が宅地に変じているとすると、前記のとおり、亡鑓田半と亡岡沢忠夫間の本件土地の売買に際しては、農地法所定の知事の許可(昭和三三年一〇月三一日までは農林大臣の許可)がその効力発生の要件であつたけれども、右売買契約は、本件土地の分筆後の土地である(一)ないし(六)の土地が現況宅地に変じたとき、右要件は不要に帰し、知事の許可を経ることなく完全に効力を生ずるにいたつたものというべきであるから、岡沢忠夫から岡沢絹代を経て、前記売買に基づく右土地の所有権を取得しうる地位を譲渡された被控訴人は、(一)ないし(六)の土地が現況宅地である以上いまやその完全な所有権を取得しているものと認められる。
二、控訴人松尾、同岡村および同中島に対する土地明渡の請求について考えるに、控訴人松尾が(一)、(四)および(六)の土地を、同岡村が(七)の建物を所有して(一)、(二)および(四)の土地を、同中島が(八)の建物を所有して(一)、(四)および(五)の土地をそれぞれ占有していることは当事者間に争いがない。しかして、右控訴人らはその占有権原としてそれぞれ右各土地の登記済み所有権を主張するところ右控訴人らの所有権取得登記はいずれも被控訴人の前記仮登記より後順位にあるものであるから、被控訴人が将来前記仮登記の本登記を経由したときは、右控訴人らはその所有権をもつて被控訴人に対抗し得なくなることはもちろんであるけれども、仮登記は本登記の順位を保全する効力があるにとどまり、仮登記のまゝで本登記を経由したと同一の効力があるとはいえないから、右本登記手続が終るまでは、右控訴人らは被控訴人に対し登記の欠缺を主張しうる第三者に該当し、被控訴人は右控訴人らに対しその所有権の取得を対抗し得ない筋合いである(最高裁判所昭和三八年一〇月八日第三小法廷判決、民集一七巻九号一、一八二頁参照)。それ故、未だ本登記が経由されていない現在においては、被控訴人は右控訴人らに対し、所有権に基づいて、右控訴人らの占有する各土地の明渡を求めることはできないが、将来被控訴人が右本登記手続を終つたときは、右控訴人らは被控訴人の右土地明渡請求に応ずべき義務を負うこととなる。
(古山 川添万 秋元)