大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和44年(ラ)1025号 決定

抗告人はまず、抵当権実行のためにする不動産競売手続についても民事訴訟法第六五六条の規定が適用され、またはこれを類推すべきであることを前提として、本件競売手続が違法であると主張する。しかしながら、抵当権者はもともと抵当権の実行として目的不動産の競売を申し立てうる権利を有するのみならず、抵当権実行のためにする競売手続においては、裁判所は申立抵当権者のためばかりでなく、すべての抵当権者のために競売を行なうものであることを考えると、不動産強制競売手続に関する民事訴訟法第六五六条の規定を抵当権実行のためにする不動産競売手続に適用し得ないのはもとより、これを準用ないし類推適用すべきでもないと解するのが相当である。抗告人の所論はこれと見解を異にするものであつて採用することができない。

次に抗告人は、本件競売の目的たる不動産のうち、原判決添付・別紙物件目録(ハ)の建物は抗告人の所有に属するが、右は抗告人の夫西山元一所有にかかる同目録(イ)、(ロ)の地上に建在する建物であるから、右(ハ)の建物は(イ)、(ロ)の土地および同目録(ニ)の建物と一括競売すべきであるにもかかわらず、原決定が個別競売をしたことは違法であると主張する。本件記録によると、本件競売の対象となつた前記、(イ)、(ロ)、(ニ)の各不動産は西山元一の所有するところであり、前記(ハ)の建物だけが抗告人の所有に属しており、また右(イ)、(ロ)、(ニ)の各不動産については中小企業金融公庫を第一順位者として債権額四〇〇万円につき、株式会社常盤相互銀行を第二順位者とし債権額七〇〇万円につき、大東京信用組合を第三順位者とし債権極度額三五〇万円につきそれぞれ抵当権または根抵当権が設定されており、右(ハ)の建物については前記株式会社常盤相互銀行の債権額七〇〇万円を第一順位とし、前記大東京信用組合の債権極度額三五〇万円を第二順位としてそれぞれ抵当権または根抵当権が設定されており、右大東京信用組合の申立により本件競売手続が開始されたものであることが認められる。ところで、右のごとく同一の債権を担保するため数個の不動産のうえにいわゆる共同抵当が設定されている場合に、その一部につき申立抵当権者に優先する先順位の抵当権が存するときには、これら先順位抵当権者はその対象たる不動産の競売売得金からその順位に従つて優先弁済を受けるものとされる結果、右競売売得金を確定する必要があるので、右のような場合には各別に競売をなすべく、一括競売はこれをなすべきではない。してみれば、前記(ハ)の建物を、(イ)、(ロ)、(ニ)の各不動産と一括競売しなかつたことが違法であるとする所論は採用の限りでない。

(多田 上野正 岡垣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!