東京高等裁判所 昭和44年(ラ)259号 決定
記録によれば、本件は、抗告人(原告)が提起し、原審が昭和四二年七月一四日受付けた「不動産四四筆の返還と損害賠償の訴え」と題する訴状につき、同月二四日原審裁判官が、請求の趣旨及び請求の原因の記載不明確を理由に右訴状の補正を命じ、該補正命令は同月二七日抗告人に交付送達されたところ、抗告人はこれに対し同年八月四日と同年一二月二五日の二回にわたり「補正命令の解答」と題する書面を提出したが、同裁判官は昭和四四年二月二五日補正命令にもかかわらず、これを明らかにするに足る補正をしないので民事訴訟法第二二八条第二項により前記訴状を却下する旨訴状却下命令を発したので抗告人が右却下命令に対し即時抗告に及んだものであることが明らかである。
ところで民事訴訟法第二二八条の裁判長の訴状審査権の対象は、相当額の印紙貼用の有無のほか同法第二二四条第一項所定の必要的記載事項の記載の有無に関する形式的事項に限られるのであつて、記載された請求の趣旨、原因が捕捉しがたく不明確というが如きは本来釈明の対象に過ぎず、前示訴状審査権ないしは補正命令の対象とはならないものと解すべきである。のみならず、前記訴状によれば、請求の趣旨、原因の記載があり、その意は、これを捕捉するにくるしまざるを得ないとはいえ、詐取された原告所有の不動産四四筆の返還と盗伐による損害賠償の請求をなすというにあるものとうけとれないことはなく、殊に、補正命令に対する二回にわたる解答と題する書面によれば、原告は、少なくとも特定不動産の所有権にもとづきこれについての特定の登記の抹消登記と右不動産上の立木の盗伐を原因とする損害賠償との請求をしていることが認められるから、この点において請求の趣旨、原因の記載ありとするに妨げなく、いずれにせよ、その記載が不明確であるとして、訴状を却下することは許されない筋合である。その趣旨不明の箇所は宜しく釈明権を行使し、しかもなお、その意不明のときは請求は理由なしとして、これを棄却すれば足りるのである。
(長谷部 鈴木信 麻上)