東京高等裁判所 昭和44年(ラ)897号 決定
抗告理由一について。借地法九条ノ二第三項は、同条第一項に基づき借地権者より第三者への賃借権譲渡の許可が申立られた際に、土地賃貸人が自ら賃借権、建物の買受けを申立てたときには、右買受けの申立に、申立権の濫用等申立を不相当とする特段の事情のない限り、右譲渡許可に優先して右買受けを命ずることを要する旨定めたものと解せられる。そしてこのことは競落により第三者がすでに建物所有権を取得し敷地貸借権を譲受けた場合に、同法九条ノ三第二項によつて、右九条ノ二第三項が準用される場合においても何等変りはないと解せられる。何んとなれば、競落により建物所有権を取得し敷地賃借権を譲受けた競落人も、右賃借権譲受けを土地賃貸人(所有者)の承諾がなければ、同人に対抗できず、右承諾を得られなければ土地賃貸人に対し建物買取請求権を有するにとどまる点において、競落によらない通常の土地賃借権譲渡の際の譲受け第三者とその地位は全く異らないのであり、競落による賃借権取得者がすでに競落代金の納入をして賃借権譲渡の対価を支払つていたとしても、右譲渡について賃貸人の承諾を得られない場合のあり得ることは、競落人においても当然予想すべきところであり、また、賃貸人に買受けが命ぜられると、右買受価格の支払いを受けることによつて競落人はすでに支払つた競落代金等を回収できるのであるから、賃貸人に優先買受けを命じても、競落による賃借権取得者に何等苛酷な結果は生じないからである。そして、抗告人主張のような事情があつたとしても、なお相手方の優先買受の申立に、それを許すことのできない特別事情があるとはいえない。
(川添利 荒木 田尾)