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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)119号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一 本願考案の明細書および図面によると、その明細書中「考案の詳細な説明」の項には、「この考案は、特に稲・麦などの藁束る切截するときの結束している繩を切截する束切り装置に係り、束切り刃を上下に対向する送り込みロールの中間に位置させることにより確実に繩を切截するとともに送り込みロールにからみつく藁を有効に除去するようにした飼料截断機における束切り装置に関する。」ものであると記載され、続いて、「従前の飼料截断機における束切り装置は、上下に対向させて軸架した送り込みロールと回転刃を装架した切截室との間に設けた誘導板の下面に資料の供給される方向に刃縁を沿わせた束切刃を装着するか、あるいは固定刃の受台の上面に回転刃の回転軌跡に近接させて束切刃を装着し、送り込まれる資料がこの束切刃に接触して流れていくときに資料を結束している繩を束切刃で切断することにしている。しかし、これらの手段においては、送り込みロールにて送り込まれる資料の通路の途中に束切刃を固設し、流れ込まれてくる資料をこれに接触させて結束している繩を切断するようにしていることから、資料を束切刃に向けて押し付ける作用がないので、結束した繩が束切刃の上を滑つて流れ切断されない場合がある。そして、送り込みロールと切截室の間は比較的間隔があつて、送り込みロールの間隙においては充分に挾圧されているが、その間を過ぎて切截室に向うときに挾圧が解放されて結束がゆるむことから、束が小さかつたり、あるいはは結束がゆるんでいるときにこの傾向が著しい。本考案はかかる点について特に工夫したものである。」と、従前の飼料截断機における束切り装置の技術的欠陥およびこの欠陥の克服が本願考案の課題であることについての記載がされ、図面(別紙(一)のとおり)の実施例の説明に次いで、「本考案の特長は、かく、束切りナイフ(8)を上下のロール(4)(5)の間に配設し、これにより上下のロール(4)(5)の間に挾み込まれて押しつぶされている資料束に対して作用させ、上下のロール(4)(5)に挾み込まれて移動する資料の移動と、同時に上ロール(4)で資料を下ロールに向けて押し付けるその押圧をもつて束切ナイフ(8)に資料を押し付け結束している繩を有効に切断しようというのである。」と記載されていることが認められ、叙上の事実に前記認定の明細書中の本願考案の実用新案登録請求の範囲および作用効果についての記載ならびに前記図面の記載を総合すると、本願考案は、従来の飼料截断機における束切り装置にあつては、前記認定の構成のため送り込まれる資料を束切りに向けれ押し付ける作用がないため、結束した繩が束切り刃の上を滑つて流れ切断されにくい欠陥があるところ、本願考案はこの欠点を解決することを技術的課題とし、この課題解決のため、従前のものと異なり、束切りナイフ(8)を上下のロール(4)、(5)の間に配置する構成としたもので、この構成により、資料の結束繩は、上下ロール(4)、(5)の間に挫み込まれて移動する資料の上下ロールによる送り出し力と、上ロール(4)の下ロール方向への資料に対する押圧力との合成力により切断されるが、この場合、上ロールの下ロール方向への押圧力が資料を束切りナイフに押し付ける作用をするから、押切り作用により束切りナイフ(8)に押し付けられた資料の結束繩を確実に切断する効果を奏しうるものであつて、本願考案の要旨は、実用新案登録請求の範囲に記載のとおり、「切截室(2)の供給口(3)入口に上下に対向させて軸架した上下の送り込みロール(4)(5)の下ロール(5)に近接させて束切りナイフ(8)を本体(1)に対し固設し、その刃先(8b)を下ロール(5)の周面に沿いその回転方向に沿わせて上下ロール(4)(5)の間隙内に臨ませ、それの刃縁(8a)側を上下可動に設けられバネで下方へ附勢されている上ロール(4)の下面に対向せしめた飼料截断機における束切り装置。」にあるものと認められる。

三 一方、引用例の実用新案公報によると、引用例は、昭和三八年五月一七日に出願公告された実用新案公報であり、その考案の構成は、被截断飼料送出ロール3、4を上下に対向させるとともに、上方送出ロール3は昇降自在になし、下方へ弾圧して収蔵並架し、飼料供給室2の後方に設けた円筐6内には回転刃9を軸架して、その内方に打撃破砕板10を装設し、上記下方送出ロール4の後方において機台1に固定刃受台12を固設し、その上端部は前部へ折曲12して先端を上記送出ロール4に近接させ、該受台12の後面には回転刃9と係合する固定刃13を着脱自在に固着し、固定刃受台12の上端折曲片12'の上面中間部には三角状の被截断飼料結束体切刃14を回転刃9の刃先軌跡円11に近接させて着脱自在に固定し、切刃14の前方斜辺に刃14'を形成してなる飼料截断機における被截断飼料結束体の切断装置の構造にかかり、右の構造から、被截断飼料は送出ロール3、4間に挾持されるとともに固定刃受台12の上端折曲片12'上を固定刃13に接する状態で円筐6内へ送り込まれるから、飼料結束体は飼料切断前に上記切刃14に引掛り、その斜め刃14'に摺動して、これにより切断されるか、または飼料結束体の下部が切刃14に引掛つて斜め状態となつた時、回転刃9と固定刃13との係合により結束体が飼料と同時に切断されて結束が解かれ、結束体の切断を確実になしうる作用効果を奏するものであることを認めることができる。

四 そこで、前記認定の本願考案と引用例との構造および作用効果を対比するに、本願考案にあつては、束切りナイフ(8)の刃先(8b)が上下の送り込みロール(4)、(5)の間隙内に刃縁(8a)を上ロール(4)に向けて臨ませてあるのに対し、引用例においては、結束体切刃14は上下送出ロール3、4の後方に設けた円筐6内の回転刃9の刃先軌跡円11に近接させて設けられ、この切刃14の前方斜辺に刃14'が形成されている点で、両者束切りナイフ(結束体切刃)の設置場所を異にし、また、右構成の相違から、本願考案にあつては、被截断資料は、上下ロール間に挾み込まれて移動する上下ロールによる送り出し力と、上ロールの下ロール方向への押圧力との合成力により、束切りナイフに押し付けられ、その結果、飼料結束体が確実に切断される作用効果を奏するのに対し、引用例においては、本願考案と異なり、被截断飼料は、送出ロール(上下ロール)に挾持されて固定刃受台12の上端折曲片12'上を固定刃13に接する状態で進行していく間に飼料結束体の下部が上記折曲片12'上の切刃14に引掛り、その斜め刃14'に摺動することにより切断されるか、または結束体の下部が切刃に14引掛つて斜め状態となつた時回転刃9と固定刃13の係合により切断されるかのいずれかで切断されるものであり、したがつて、本願考案の束切りナイフに相当する斜め刃14'が本願考案のように確実に結束体を切断する作用効果を発揮しえないことは明らかであるといえる。そして、右のように、引用例において、切刃14の斜め刃14'が飼料結束体を確実に切断しえない場合を生ずるのは、被截断飼料を斜め刃に向けて上方より押し付ける作用がないことに起因することは、引用例の叙上の構成に照らし明らかなところというべきところ、前記認定のとおり、本願考案は、まさにこの種の欠点の克服を技術的課題とし、これを解決して、確実に飼料結束体を切断しうる顕著な作用効果を奏しうるものであるから、両者はこの点の技術思想を全く異にするというべきである。

五 被告は、引用例の場合においても、飼料結束体が斜め刃により切断される場合、被截断飼料はやや下方に向かつて進行するから、切断のために作用する力は本願考案の押切りのときと同様であり、したがつて、本願考案の作用効果は引用例に比し顕著なものではないと主張するから考えるに、なるほど前記甲第四号証には、「被截断飼料は、第2図に示すようにやや下方へ向つて進行する」との記載があるけれども、右の記載は単に被截断飼料がやや斜め下方に向かつて移動するというのであつて、この移動方向への上下ロールの送り出し力の作用と本願考案の場合における被截断飼料を上下ロールの間に挾持して移動する上下ロールの送り出し力と上ロールの下ロール方向へ飼料を押圧する力との合成力の作用とを同視することは到底できず(このことは、前記認定のとおり、引用例が本願考案の場合と同様の押切りによる確実な切断作用を生じない事実に照らしても容易に首肯しうるところである。)、また、その切断の作用効果においても顕著な差異があることは前記認定のとおりである。したがつて、被告のこの点の主張は、採用するに由ない。

また、被告は、両者の構成上の差異は、結束体切刃の設置位置の相違にすぎず、本願考案のように束切り刃を設けることは引用例から容易になしうる程度のものと主張するけれども、前記説示のとおり、両者の結束体切刃の設置位置の相違は技術思想を異にするものであり、その構成上の差異から、作用効果においても顕著な差異を生ずるものであることに徴し、本願考案が引用例からきわめて容易になしうるものとは到底認めることはできない。したがつて、被告の右主張も採用の限りでない。

六 上来説示のとおりである以上、本願考案をもつて、引用例からきわめて容易になしうる程度のものとし、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けえないものとした本件審決は違法があるものといわなければならないから、その取消しを求める原告の本訴請求は理由があるので、これを正当として認容……する。(柳川真佐夫 武居二郎 楠賢二)

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