東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)22号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本願考案の登録請求の範囲の記載によれば、そのうち「裏打ちされるよう」との記載は「折返側片(7)(7')が被覆面(2)および(3)の開口部側縁の裏面に」との記載のみを受けることは文理上明らかであるから、本願考案の各構成片の接合のうち、折返側片(7)(7')と被覆面(2)(3)との接合の方法は、前者が後者の開口部側縁の裏面に裏打ちされるよう接合する方法(以下「裏打ち接合」という。これが面接合であるか否かはしばらく措く。)に限定されるけれども、その余の各構成片の接合の方法には制限がないと認めるのが相当である。もつとも、本願明細書の「考案の詳細な説明」の項には、「各当接面に接着剤を塗布し一体的に接合する」および「上蓋片および下蓋片を接合するに際しては従来のケースの如き綴金を使用することなしに構成する」との記載があることが認められるけれども、前示登録請求の範囲にはその旨の記載がないし、「考案の詳細な説明」の項にも「接合」の意義を明確に定義した記載はないことが認められるので、右記載に基づいて本願考案の各構成片の接合の方法が接着剤による面接合に限定されると認めることはできない。
一方、当事者間に争いのない先願考案の登録請求の範囲には、各構成片を組立て接合する旨の記載がないので、組立て接合する方法が先願考案の構成要件でないこと、したがつて先願考案の接合の方法が原告主張の止針による綴着に限定されないことが明らかである。しかし、前示登録請求の範囲の記載によれば、先願考案は「書籍箱」の考案であることが明らかであるから、先願考案は各構成片の全部または一部を組立て接合することを当然の前提としていることも明らかである。そうだとすると、先願考案が本願考案と同一考案か否かを決するには、先願考案が当業者間に周知の方法によつて各構成片を組立て接合するものとして、これを本願考案と比較すべきである。換言すれば、前認定の本願考案において各構成片を組立て接合する方法が当業者間に周知なものであるならば、本願考案は先願考案と同一考案と認めて差支えないところ、各構成片を組立てることおよび折返側片(7)(7')と被覆面(2)(3)を除く各構成片を相互に接合することが当業者間に周知であることは吾人の常識に照らし明らかであるが、折返側片(7)(7')を被覆面(2)(3)に裏打ち接合することが周知の方法であるか否かは必ずしも明らかでない。そこで、証拠を検討するに、<書証>によれば、箱の開口部を折返片で裏打ち接合した構造とする実用新案の出願公告が二件先願出願前になされていることが認められるが、右事実だけでは箱の開口部を折返片で裏打ち接合することが当業者間に周知の方法であつたことを推認するに足りないし、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
<書証>に示された折畳函は、箱の開口部に折返片と縁片によつて袋状部を構成するものであつて、開口部を折返片で裏打ち接合するものではないことが認められる。
以上判示したとおり、本願考案と先願考案が同一考案であることを認めるに足りる証拠がないから、審決には原告主張の違法があるといわねばならない。
よつて、原告の請求を認容する。
(服部高顕 滝川叡一 奈良次郎)