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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)87号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決には、その主張の点に判断を誤つた違法がある旨主張するが、この主張は理由がないものというほかはない。すなわち、前掲当事者間に争いのない本願考案の要旨と、<書証>によれば、本願考案の電柱用バンドの緊締受金がU字状のものである点において、第一引用例の緊締縁および第二引用例の鉤金具がそれぞれ三角形状であるのと、その構成を異にすること、ならびに第一引用例の器具取付け金具の形状が、原告の主張するとおり、厳密な意味において、U字状とはいえないことが明らかである。しかしながら、本願考案において、U字状の緊締受金を用いたことの目的の一つが、その二本の脚部をバンド本体の二個所の取付け部に挿入して、安定に結合するためであることは、当事者間に争いがないところ、第一引用例の器具取付け金具において、二本の支持片の両端を折り曲げて二片の挾着片としたことも、右と同一の目的を有するものであることが認められる。もつとも、第一引用例の器具取付け金具は、これにボルトを嵌めて、中央片の外側に器具を取り付けるものであるため、中央片を平面とし、その両端を左右とも同じ側に、直角に近い角度を保つて折り曲げることにより、二本の支持片を形成したものであり、前認定のとおり厳密な意味においてはU字状とはいえないけれども、平面状の中央片を設ける必要のない本願考案の緊締受金において、前記の目的を達成するために、その形状をU字状とする程度のことは、当業者の容易に想到しうる事柄であるとするを相当とする。原告は、本願考案において、緊締受金をU字状としたことにより、原告主張のような特段の作用効果がある旨主張するが緊締杆を貫挿すべき透孔を緊締受金のU字状の彎曲部から離れた部分に設けた場合においては、原告主張の作用効果は全く得られないことは、その構造上明らかであるから、本願考案の構成要件として「ナットの受圧面がU字状の彎曲面にかかるよう透孔を設ける」旨の限定を欠く本願考案においては、常に原告主張の作用効果を、期待することができないものというべく、したがつて、本件審決が、本願考案において、緊締受金をU字状に形成したことに伴い特段の作用効果を奏することを肯認しなかつた点を非難する原告の主張は、全く理由がないものといわざるをえない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。

(三宅正雄 武居二郎 友納治夫)

<編注1>一 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四〇年四月三〇日、名称を「電柱用バンド」とする考案(以下「本願考案」という。)について実用新案登録出願をしたところ、昭和四二年一〇月二三日拒絶査定があつたので、同年一二月一五日、これに対する審判を請求し、同年審判第八、八〇九号事件として審理されたが、昭和四四年七月一五日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「本件審決」という。)があり、その謄本は、同年八月六日原告に送達された。

二 本願考案の要旨

バンドの本体2より分厚な金属板を中央においてU字状に彎曲した緊締受金4の両端の取付け脚片3、3を、一端に多数の透孔1、1を一列に穿設したバンドの本体2の他端に嵌挿して、該脚片を本体に鎔接して固着し、先端に掛止鉤5を有する緊締杆7を緊締受金4に貫挿して。ナット8をこれに螺合した電柱用バンド。(別紙一の図面参照)

<編注2>本件審決理由の要点

本願考案の要旨は前項(請求の原因二)掲記のとおり認められるところ、原審においては、「本願考案は、その出願前日本国内において領布された実公昭三六―八九三九号公報に記載された考案(以下「第一引用例」という。)に基づいて、その出願前にその考案の属する技術分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができるものであるから、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができない(緊締受具をバンド主体のものとすることは、たとえば実公昭三四―一八二三一号公報(以下「第二引用例」という。)にも記載されて、公知である。)。なお、引用例記載の電柱用バンドも多数の透孔を一列に穿設したバンド主体の端部に設けた緊締受金に挿入した緊締杆の掛止鉤を前記の透孔に引つ掛けるものであり、この点には本願考案との差異はなく、また、電柱用バンドの緊締受金として、金属板を折り曲げて形成したものを用い、その一部に形成した取付け部をバンド主体の端部の取付け部に嵌合して取り付けることは先に例示したように公知であり、そしてその公知の緊締受金において、その形状を単にU字形を呈すものとし、その両端には直角に折り曲げられた取付け脚片を形成して、これら各脚片をバンド主体の端部の取付け部に嵌合して間隔をおいて二か所で取り付ける程度のことは、当業者が適宜なしうることと認められるので、結局、本願考案は引用例の記載から当業者が容易と推考しうるものである。」という趣旨の理由により拒絶されたものである。

これに対し、請求人は、本願考案は、(1)バンドの本体と緊締杆を取り付ける緊締受金の両者を別々に造り、受金の脚片をバンドの端部に嵌めてこれを鎔接して固着した点および(2)緊締受金をU形のものとし二個所で脚片に取り付け、しかも、強度を必要とするこの緊締受金にバンドの本体よりも厚いものを用いた点で上記各引用例のものと異なる旨主張するが、(1)本願考案においてバンドの本体と緊締受金の両者を別々に造つた理由は、緊締受金を特に強度の大なるもので構成したことに基づくものと認められるところ昭和四二年一二月一五日付全文補正明細書四頁一三〜一六行の「この考案は……バンドの本体2と緊締受金4を別体に造つて……損傷し易い緊締受金のみに厚く強力な金属板を用い」との記載参照)、このように強度の特に要求される部分を他の部分よりも別個のもので造ることは常套手段であり、しかも、この両者を別個に造ることは第二引用例にも記載されているように公知の手段にすぎず、緊締受金の脚片をバンド本体の端部に嵌める点は第二引用例に明記されているように常套手段にすぎず、二つのものを結合するのに鎔着を用いることは、これまた常套手段にすぎない。したがつて、この点は、単なる改変の域を出ないものであり、考案の存在を認め難く、また、(2)本願考案においてU形の緊締受金を用いた理由は、その脚部を二個所の取付け部に挿入して安定に両者を結合するためと認められるが、このような目的のためにU形の金具を使用することは常套手段にすぎず、しかも、バンドに固定して使用する金具において、強度を必要とするこの金具をバンド本体より厚いもので構成することも、これまた常套手段にすぎないから(第一引用例記載の器具取付け金具参照)、このような相違点は、必要に応じて適宜採用できる程度のことというべく、そこに考案の存在を肯認することができない。

してみれば、結局、本願考案は、第一引用例および第二引用例記載のものより当業者が必要に応じてきわめて容易にできる程度のものであり、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、この審決の認定と同趣旨に出た原審の判断は正当である。

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