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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)96号 判決 1970年5月15日

東京都江東区大島五丁目五一番一一号

原告 鈴木太郎

右訴訟代理人弁護士 後藤信夫

遠藤光男

後藤徳司

同都千代田区有楽町二丁目一三番地

被告 東京都選挙管理委員会

右代表者委員長 喜田康二

右指定代理人東京都選挙管理委員会書記 富田禎哉

浦城浩之

泉本多慶男

右訴訟代理人弁護士 鎌田久仁夫

同都江東区深川高橋三丁目九番地

被告補助参加人 小倉康男

右訴訟代理人弁護士 牧野内武人

鈴木まゆ

渡辺千古

吉川孝三郎

鈴木紀男

高橋政雄

右当事者間の昭和四四年(行ケ)第九六号当選無効異議申立棄却決定に対する取消請求等事件につき当裁判所は次のとおり判決する。

主文

被告が昭和四四年八月二〇日付でなした同年七月一三日執行の東京都議会議員選挙(江東区選挙区)における当選の効力に関する原告の異議申出を棄却した決定中予備的申出を棄却した部分を取り消す。

前項の選挙における小倉康男の当選を無効とする。

本訴の訴訟費用は被告の負担とし、補助参加によって生じた訴訟費用は補助参加人の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一・二項と同旨の判決を求め、その請求原因として次のとおり述べた。

一  原告は昭和四四年七月一三日に執行された東京都議会議員選挙に際し江東区において選挙権を有した選挙人であるが、同年七月一七日被告に対し右選挙に基く当選の効力に関し異議の申出をしたところ、被告は同年八月二〇日附をもって異議申出を棄却する旨の決定をなし、同日その決定書を原告に交付した。

二  江東区において執行された前記選挙に際しては候補者深野いく子外八名が立候補したが、被告は選挙の結果に基づき、昭和四四年七月一四日当選人として神田学忠外三名の当選決定を告示した。

右告示の前提としてなされた同選挙区選挙長より被告に対する報告結果は次のとおりである。

(い)  投票総数  一四三、五八二票

有効投票数 一四二、五五八票

無効投票数   一、〇二四票

(ろ)  当選者次点者の氏名および各得票数

神田学忠(当選) 三二、三二一票

高木和夫(当選) 二〇、七六六票

村井大吉(当選) 一八、六九五票

小倉康男(当選) 一四、六一六票

深野いく子(次点)一四、六一二票

三  しかしながら、上記最下位当選人小倉康男候補の得票中には村井大吉候補の有効投票五〇〇票が混入されている(このことは本件検証の結果明らかにされた)。そうすると右両候補の得票数は次のとおり増減することになる。

村井大吉 一九、一九五票

小倉康男 一四、一一六票

右の結果小倉康男候補の得票数は第二次点者とされて落選が確定していた力丸寛候補の得票数一四、三九五票をさらに下廻ることになるので、公職選挙法第九五条第一項(但書第四号)の規定に基づき小倉候補の当選の効力が否定さるべきことは極めて明らかである。

四  よって、被告が前掲当選人決定の告示による当選の効力はすべて有効であることを前提としてなした異議棄却の決定(但し予備的申出に関する部分)を取り消し併せて小倉康男の当選を無効とする旨の判決を求める。

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、次のとおり答弁した。

原告主張の事実中第一項及び第二項は認める。同第三項中本件の検証の結果小倉候補の得票中に村井候補の有効投票五〇〇票が混入されていることが明らかとなった事実は争わない。

証拠≪省略≫

理由

原告主張事実のうち第一項および第二項については当事者間に争いがない。

右争いのない第二項の事実に成立に争いのない甲第一号証によると本件選挙の結果に基き江東区選挙区選挙長から被告に対し上記認定の各候補者の他左記、各候補者の得票数が報告されていることが認められる。

力丸寛  一四、三九五票

室橋昭男 一〇、四一七票

大村正義  八、三七三票

山崎孝明  八、三六三票

しかして、検証の結果(第一、二回)によると、現在江東区選挙管理委員会に保存されている本件選挙に関する投票中には、

(一)  神田学忠、高木和夫、村井大吉(以上当選者)および深野いく子(次点者)力丸寛、室橋明男、大村正義、山崎孝明各候補者のものとして前掲それぞれの候補者の有効得票とされた票数に相応する投票が存在すること、

(二)  小倉康男候補の有効得票とされた一四、六一六票の中に、村井大吉候補の有効投票五〇〇票(村井大吉候補の投票五〇票づつを一束とし、その上に有効投票50票候補者氏名村井大吉と記載し得票整理係、点検計算係の各認印のある整理票を乗せたもの一〇束の上に、有効投票500票候補者氏名、小倉康男と記載し選挙長、選挙立会人の各認印のある整理票を乗せて一括したもの)が混入しており、この五〇〇票を加えた票数が上記小倉候補の得票数となること。

(三)  無効投票一、〇二四票(この票数については当事者間に争いがない)が存在し、右無効投票および前示小倉候補以外の各候補者の投票中には小倉候補の有効投票と認められる投票は存在しないこと。

以上の各事実が認められ、他にこの認定を動かし得る証拠はない。

右認定の事実によると小倉康男候補の有効得票とされた一四、六一六票は村井大吉候補に対する有効投票五〇〇票を加算して得た票数であり、投票の点検計算に誤りがあるものというべきであるから右五〇〇票を増減すると村井大吉候補の有効得票は一九、一九五票となり、小倉康男候補の有効得票数は一四、一一六票となることが明らかである。

そうすると右小倉康男候補の有効得票数一四、一一六票は次点者とされた深野いく子の有効得票数一四、六一二票はもとより第二次点者力丸寛の有効得票数一四、三九五票を下廻ることが明らかであるから、被告が小倉康男を当選人と決定してなした告示は違法であるといわなければならない。

よって、被告のなした原告の異議申出(予備的申出)を棄却した決定は不当であるからこれを取り消し、小倉康男の当選を無効とすることとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九四条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 杉山孝 裁判官 唐松寛)

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