東京高等裁判所 昭和44年(行コ)48号 判決 1970年7月16日
東京都保谷市泉町五丁目一三番一九号
控訴人
岩崎忠右衛門
右訴訟代理人弁護士
山本嘉盛
同
桶渡洋三
同都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番一号
被控訴人
武蔵野税務署長
砂沢日出男
右指定代理人
小川英長
伊藤勇
藤田誠一郎
稲永封吉
右当事者間の昭和四四年(行コ)第四八号所得税更正決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和四一年七月二九日付で控訴人に対してした控訴人の昭和三九年分所得税の更正処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は次に附加するものを除くほかは、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。
控訴代理人は次のとおり述べた。
控訴人は昭和四二年二月一七日東京国税局長にあてて「誤謬訂正請求書」なる書面を提出したところ、右書面は同月一七日受理され同局税務相談所に一応回付された。その調査を担当した協議官川入渡は国税局長のした審査裁決に対しては重ねて審査の請求ができないことを職務上当然知つている筈であり、かつ出訴期間は三箇月以内であることを知つている筈であるにもかかわらず、控訴人が本件審査棄却裁決の通知を受けた同年二月七日から三箇月以内に「本件は訴訟の方法以外に救済の途がない。」旨を回答せずに「事実に誤りがあれば職権で訂正する。」旨言明したので、控訴人はその言辞を信頼してその調査の結果を待つていたものであつて、その結果出訴期間を経過したが、右期間の不遵守については局事訴訟法第一五九条にいう当事者の責に帰すべからざる事由がある場合に該当する。しかして控訴人が前記言辞を信頼することができないことを最終的に知つたのは、昭和四二年九月二二日東京国税局長より再審査請求却下の通知を受けた時であり、それより一週間以内に本訴を提起したのであるから本訴は適法たるを失わない。なお控訴人は同局協議団本部の小林主任協議官や奈良本部長に対し事前に審査裁決の結果には不服である旨電話をかけたこともなく、また同人等より審査裁決を争うには訴を提起するよりほかない旨の回答を受けたこともない。
理由
当裁判所は控訴人の本件訴は不適法としてこれを却下すべきものと判断するものであつて、その理由は原判決理由中原判決六枚目裏九行目の「甲第第八号証」とあるのを「甲第八号証の一、二」と訂正し、同八枚目表四行目から五行目にかけて「原告の仮定的主張は、論旨必ずしも明確であるとはいえないが、そのいわんとするところは」とあるのを「控訴人は」に、同八枚目裏二行目から三行目にかけて「適法たるを失わないというにあるものと解される。」を「適法たるを失わないと主張する。」にそれぞれ改めるほかは、原判決理由において説示するところと同一であるからこれを引用する。
よつて本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第二八四条第一項の規定によりこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法第九五条及び第八九条の規定を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 浅賀栄 裁判官 岡本元夫 裁判官 田畑常彦)