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東京高等裁判所 昭和44年(行コ)52号 判決 1976年3月25日

控訴人

東京都

右代表者知事

美濃部亮吉

右指定代理人

島田信次

外八名

被控訴人

星野安三郎

右訴訟代理人弁護士

田邨正義

外二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却を求めた。

第二  当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、それをここに引用する。

一、訂正

1  原判決六頁末行目、七頁一行目の「、原告藤永哲夫はその常任幹事」及び同行目「いずれも」を削り、同一六頁七行目の「行なおうとする」を「行おうとする」と訂正し、同一九頁八行目の「外はこれを」を「外は、これを」と訂正し、同二〇頁四行目の「いるのであるが、」を「いるのである。)が、」と、同二九頁三行目の「禁示」を「禁止」と訂正し、同三一頁八行目の「となり、原告藤永哲夫が指導者」を削り、同三二頁七行目の「、指導者」を削り、同頁一〇行目の「各自につき」を削り、同一〇八頁四行目の「三条但書六号」を「三条一項但書六号」と訂正する。

2  右のほか、「原告」若しくは「原告ら」とあるのを「被控訴人」と、「被告」とあるのを「控訴人」と、「当裁判所」とあるのを「東京地方裁判所」と各訂正する。

二、控訴人の主張

1  東京都公安委員会の過失について

東京都公安委員会は、被控訴人が、昭和四二年六月五日、都公安条例(昭和二五年七月三日東京都条例第四四号、集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)第一条に基づいてした許可申請(以下本件申請という。)に対し、同月八日午前一一時から臨時委員会を開催した。右委員会の審議に際しては、警視庁警備部警備課が提出した本件許可申請書、図面のほか、本件集団示威運動の主催団体である東京護憲連合(憲法擁護東京都民連合)の構成団体及び右運動に参加予定の団体、なかでも社会主義青年同盟(以下社青同という。)の参加の有無及びその過失における違法行為事例(この点は後に詳述する。)等について、主として警備部長の報告を素材として具体的に検討を行ない、その許否について約一時間余にわたり慎重に審議した。その結果、本件申請にかかる集会、集団示威運動自体には不許可要件は認められないが、ただ社青同が参加することになつているので、申請どおりの進路で実施させるときは、過去の事例に照らし、国会周辺において突発的に坐り込み、うず巻行進、だ行進等の事態が現出する蓋然性が高く、公共の秩序を保持することが困難であると判断したものであつて、こう判断することに過失はなかつたものというべきである。

2  社青同の行動について

(一) 社青同は、昭和三五年一〇月一五日、日本社会党青年部を中心として、社会党の周辺にある労働組合青年部員、学生及び左派無党派青年活動家等を糾合して結成した青年組織であり、その性格は、社会党の指導系列下にありながら、その指導に服することをいさぎよしとせず、自主性の名のもとに、自己の信ずるところを強硬に、ときには行動をもつて主張し、社会党それ自体の変革を目ざすという極めて積極的、行動的、かつ過激な性格を有する団体である。

(二) 社青同の結成当時は、社会党青年部の主流派であつた構造改革派が執行部を占めたが昭和三九年二月に開催された第四回全国大会において、協会派と解放派が手を結んで執行部を構造改革派から奪い取つた結果、社青同は「改憲阻止、反合理化」を基調とする運動方針に切り替えられ、その活動は次第に尖鋭化の傾向を深め、また、昭和三九年一一月に開かれた第五回大会において、協会派は解放派を執行部から強引に排除して執行部を独占した。

(三) 一方、社青同の東京地区本部においては、派閥の対立がとくに激しく昭和四一年三月に開催された社青同東京地区本部第七回定期大会においては、大会運営につき主導権を持つ解放派とこれに対抗する協会派との間で乱斗となり、百余名の重軽傷者を出し、同月一八日には、上部組織である社青同中央本部執行部(協会派)から、東京地区本部の解散を決議されるに至つたが、東京地区本部(解放派)は、右決議に従わず、依然として社青同東京地区本部として活動を続け、また、協会派も、同年一二月四日、新たに東京地区本部を設けるに至つた。

(四) 社青同東京地区本部は右次第で分裂したが、東京地区における社青同員は、その後も他団体の主催する集団行動の場には、両派がともに社青同の旗を掲げて参加し、とくに、護憲連合主催の集団行動の場合には、中央護憲(憲法擁護国民連合)が主催したときは社青同中央本部が組織参加し、東京護憲連合若しくは市区町村段階の地区護憲連合が主催したときは東京地区内の社青同員が社青同の旗を掲げて参加している。

(五) 東京地区の社青同員が参加し、しかも不法行為が敢行された集団行動には次のものがある。

(1) 昭和四一年一〇月一六日、東京護憲連合事務局長喜田康二主催の「護憲反戦平和東京集会」において、約三、七五〇名の参加者中約七〇名の社青同員が参加し、集会後のデモ行進でフランスデモを行ない、規制に当つた警察官に投石して一名に傷害を与え、一名が検挙された。

(2) 同月一七日、反戦青年委員会代表楢橋弥之助主催の「ベトナム侵略反対、一〇・二一ストライキ突入青年学生総決起集会」において、参加者総数約四、三〇〇名のうち約二〇〇名は社青同員であつたが、社青同員は集会後のデモ行進でうず巻行進、だ行進等を繰り返し、一般交通を著しく阻害した。

(3) 同年一二月一三日、反戦青年委員会代表楢橋弥之助主催の「ベトナム戦争反対、佐藤内閣打倒一二・一三青年学生決起集会」において、参加者総数約七七〇名のうち約一三〇名は社青同員であつたが、社青同員は集会後のデモ行進でだ行進や先行てい団との併立行進を図り、これを規制した警察部隊に旗ざを用いて殴打し、一名が検挙された。

(4) 昭和四二年二月二六日、二・二六実行委員会委員長杉森進一主催の「砂川基地拡張阻止青年学生集会」において、参加者総数約一、五〇〇名のうち約二五〇名は社青同員であつたが、社青同員は集会後のデモ行進でだ行進等を繰り返し、また、立川基地内への侵入を図り、警備中の警察部隊に激しい投石をして警察官二三名に傷害を与え、社青同員一名を含む一一名が検挙された。

(5) 同年四月二八日、四・二八沖繩返還要求中央大会実行委員会代表堀井利勝主催の「四・二八沖繩返還要求中央集会」において、参加者総数約二、一〇〇名のうち約一二〇名は社青同及び反戦青年委員会の構成員であつたが、社青同員らの集会後のデモ行進でだ行進等を繰り返し、規制に当つた警察官に暴行を加えて二名に傷害を与え、一名が検挙された。

(6) 同年五月二八日、全日本学生自治会総連合委員長秋山勝行主催の「砂川基地拡張阻止現地総決起集会」において、参加者総数約三、六四〇名のうち約五〇〇名は社青同及び反戦青年委員会の構成員であつたが、社青同員らは集会後のデモ行進でだ行進、停滞等を繰り返し、また、立川基地内に侵入を企て、警備中の警察部隊に激しい投石をして警察官一四五名に傷害を与え、社青同員四名を含む五二名が検挙された。

以上のほか、本件申請後に開催された次の集団行動においても、それぞれ東京地区の社青同員が参加し、右各事例とほぼ同様の不法行為が敢行されている。

(7) 同年七月九日、七・九大集会実行委員会代表高橋渡主催の「七・九砂川基地拡張阻止大集会」(警察官一三九名負傷、四七名検挙)

(8) 同年一〇月八日、反戦青年委員会代表伊藤英治主催の「佐藤南ベトナム訪問中止を要求する抗議集会」(警察官一、一六八名負傷、社青同員一名を含む五八名検挙)

(9) 同年一〇月二一日、日本労働組合総評議会議長堀井利勝主催の「アメリカのベトナム侵略反対、佐藤内閣の戦争協力抗議、沖繩・小笠原の即時全面返還、エンタープライズ寄港阻止一〇・二一統一中央集会」(社青同員三名を含む一一名検挙)

(10) 昭和四三年三月八日、東京護憲連合事務局長標仁主催の「北区野戦病院開設反対都民集会」(警察官三一六名負傷、一五八名検挙)

(11) 同年四月一五日、東京護憲連合事務局長標仁主催の「四・一五野戦病院反対都民総決起大会」(警察官一三四名負傷、四六名検挙)

3  社青同と本件許可との関係について

東京都公安委員会は、本件集団示威行進に社青同が参加するであろうと判断したが、その判断は次の事実によるものである。

(1) 東京護憲連合が本件集団行動の前に主催した集団行動は、前記2(五)(1)記載のとおり昭和四一年一〇月一六日であるが、その折には、前記2(三)記載のとおり社青同東京地区本部はすでに分裂していたにもかかわらず、右集団行動に社青同員が社青同の旗とともに参加していた。

(2) 昭和四二年五月二六日、本件集団行動の事前折衝の場で、警視庁に来庁した東京護憲連合事務局員の松本義治は、警備課石井係員らに対し、本件集団行動を含めた東京護憲連合主催の四つのコースの求心デモ及びその後日比谷公園で開催される総括集会の参加団体として社青同があると述べた。

(3) 右総括集会の申請書に、参加団体として社青同の記載がある。

(4) 本件集団行動当時、社青同は、他の団体主催の集団行動に参加している。

したがつて、本件集団行動に社青同がその旗を掲げて参加しなかつたとしても、本件処分時における東京都公安委員会の認識には過失がなかつたというべきである。

なお、事前折衝の段階で、社青同の参加が格別問題とならなかつたのは、東京護憲連合の内部の意思不統一により、本件集団示威行進が国会議事堂周辺を通るか、あるいは外堀通りを通るかについて、六月五日の申請時まではつきりしていなかつたためであり、また、執行停止申立事件について提出した意見書に社青同の参加のことを触れなかつたのは、意見書の提出が急がれたために(六月九日の午前一〇時半頃に裁判所から連絡があり、同日午後三時三〇分すぎには提出した。)、その内容について十分検討する時間的余裕がなかつたことと、執行停止申立事件が初めてのことであり、意見書の作成に不慣れであつたため、問題とすべき社青同を含む構成団体について触れることができなかつたことによるものである。

4  損害賠償請求権の帰属主体について

(一) 都公安条例第二条は、集団行動等の許可申請をすべき者として、「主催者である個人又は団体の代表者(以下主催者という。)」と規定しているが、これは、「主催者である団体」の代表者を「主催者」といいかえたものであつて、本来の主催者が団体自体であることは文理上明らかである。都公安条例が、「主催者である団体」の代表者を「主催者」といいかえたのは、条例立案上の簡略化のためであると同時に、許可申請の手続上における公安委員会との連絡、交渉、許可書の交付等について事務処理上の便宜をはかり、また、責任の所在(とくに同条例五条の罰則の適用)を明確にする趣旨にほかならない。そうだとすれば、許可申請にあたり、当事者として許可申請書に記載された主催者から申請され、これに対して許可書の交付等がされたとしても、それは実質的には「主催者である団体」の代表者としての行為である。そして、都公安条例第二条の「主催者である団体」の代表者を「主催者」と読み替える規定は、損害賠償請求という民事上の権利義務の帰属主体まで変更するものではないから、公安委員会の処分によつて生じた損害賠償請求権の帰属主体は、「主催者である団体」であるというべきである。

(二) 本件の場合には、本件集団示威運動の「主催者である団体」は東京護憲連合であるから、かりに本件条件を付した許可処分が違法であり、損害賠償請求が認められるとしても、それは東京護憲連合に対してであつて、その代表委員七人のうちの一人にすぎない被控訴人個人に対してではない。

(三) かりに、被控訴人個人が本件許可処分に基づく損害賠償請求権を取得することができるとしても、被控訴人は、本件集団示威運動に際し、当初から参加する意思もなく、また、参加しなかつたのであるから、損害を被らなかつたものというべきである。

5  都公安条例第三条第一項の解釈について

(一) 都公安条例第一項は、「……集団示威運動の実施が公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを許可しなければならない。但し、次の各号に関し必要な条件をつけることができる。」と規定している。右規定の趣旨は、集団示威運動等の許可申請があつたときは、公安委員会は、それが「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」であるかどうかを具体的ケースに応じて判断し、右場合に該当しない限り許可しなければならないことを規定したものであつて、右場合に該当しない限り、同項但書による条件をつけることができないことを規定したものではないと解すべきである。つまり、右条項にいう「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」とは、許可、不許可を決定する基準であつて、条件を付しうるかどうかの基準となるものではないというべきである。そして、同項但書による条件は公安委員会が「必要」と認めた場合に付しうるものであるが、ただ、同項六号に定める進路、場所又は日時の変更に関する条件は、とくにその影響が大きいことからみて、「公共の秩序……を保持するためやむを得ない場合」に限り付しうるものとした趣旨と解すべきものである。

(二) もし、原判決の解釈のように、「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」でなければ、同項但書により条件を付しえないとすれば、たとえば、同項二号にいう「じゆう器、きよう器その他の危険物」を携帯する者の参加する集団示威運動が原則として是認されることになるし、また、同項六号の条件を付する場合には、「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」であるのに、さらに「公共の秩序……を保持するためやむを得ない場合」と限定することになり、明らかに矛盾する。なぜならば、前者の要件の方が後者に比して、より急迫した状態を示しているからである。

(三) 本件の場合には、東京都公安委員会は、社青同の参加する本件集団示威運動が都公安条例第三条第一項本文にいう「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」には該当しないで、不許可とすべきではないが、同項六号にいう「公共の秩序を保持するためやむを得ない場合」に該当すると判断し、本件条件を付した許可処分をしたものである。

6  国会周辺の規制と公安条例との関係

(一) 公安条例は、地方自治法第二条第三項一号の「地方公共の秩序の維持」のために制定されたものであるが、右にいう「地方公共の秩序」は、条例を制定する個々の地方公共団体によつて内容を異にするというべきである。そして、東京は、日本における政治、経済、文化、外交の中心であるとともに、首都である。したがつて、東京における「地方公共の秩序の維持」には、これらの機能を損うことなく、十分に維持することも含まれる。とすれば、国会における立法機能を維持することも都公安条例の内容となることは当然である。この意味では、他の機能、たとえば各官庁の行政機能や裁判所の司法機能などと比べて、とくに国会の立法機能だけを特別扱いにするものではない。しかし、ある集団行動の申請を許可するかどうかという点から考えた場合、各官庁や裁判所の周辺に比べて、国会のもつ特別な性格から、国会周辺において不法行為の発生する可能性はきわめて高く、また、過去の経験に則して考えてみても、このことは容易に理解しうるところである。したがつて、公安委員会の許可の際に、その具体的なケースに応じた検討の結果として、国会周辺の進路変更を条件とすることがあることも、また是認されるというべきである。

(二) 本件の場合には、東京都公安委員会は、社青同の参加する本件集団示威運動が国会周辺を通過するにあたり、不法な行為の発生する可能性がきわめて強く、それが国会の機能に障害を与えると同時に、地方公共の秩序を侵害するものと判断し、進路変更を内容とする本件条件を付して許可をしたものであつて、なんら違法なところはない。

(三) なお、本件集団示威運動の当日は、国会における審議の予定がなく、したがつて、本件進路変更を内容とする条件は審議権の行使を保持する面で意味がないとの主張がある。しかし、会期中の国会における審議は必らずしも予定されたものに限らず、緊急の事態に対処するため開かれることもありうるし、また、集団行動の参加者としては、会期中であれば具体的な審議が行なわれているかどうかにはかかわりなく、国会という場所的要因のみによつて、不法な行動にかりたてられることが多いのである。したがつて、本件集団示威運動の当日に国会審議がない予定であつたとしても、進路変更を条件とする本件許可処分には正当な理由があるというべきである。

三、被控訴人の主張及び反論

1  東京都公安委員会の国会前デモ拒否の理由

本件当時まで、東京都公安委員会及び政府は、国会開会中は国会周辺道路における集団示威運動について一律禁止の方針をとつており、本件集団示威運動について進路変更の条件を付した真の理由も、社青同の参加による具体的混乱・危険というのではなく、東京都公安委員会の従前からの方針に従つたにすぎない。したがつて、控訴人が本件訴訟になつてから社青同の参加をうんぬんするのは、全く事後に考えられた理由としかいえないものである。

2  社青同の参加予定の有無

本件集団示威運動に社青同が参加することは予定されていなかつた。社青同東京地区本部が、昭和四一年九月事実上分裂し、上部組織である社青同中央本部執行部から解散を決議されるに至つたことは、控訴人が自ら主張するところであるが、東京護憲連合としては、右の紛争を契機として、その主催にかかる集会等について、社青同東京地区本部に対しては一切参加要請を出していないし、また、本件集団行進そのものについても、参加を予定した団体のうちに社青同は一切含まれていないのである。すなわち、本件集団行進に、社青同、とくに控訴人の問題としている東京地区本部が参加することをまつたく予定していなかつたことは明らかである。

3  社青同と本件許可との関係についての反論

(一) 控訴人は、東京都公安委員会はいくつかの理由により本件集団行動に社青同が参加するであろうと判断した旨主張するが、これについては次のとおり反論する。

(二) 昭和四一年一〇月一六日、東京護憲連合事務局長喜田康二主催の「一〇・一六護憲反戦平和東京集会」の四、〇〇〇名近い参加者のうち、かりに控訴人主張のようにその二パーセントにも満たないごく少数の社青同員が含まれていたとしても、そのことは、同じく東京護憲連合ではあつても具体的な主催者個人を異にし、また、集団行動によつて訴えようとするテーマ(本件デモの主要なテーマは憲法施行二〇周年記念である。)も異なる本件集団行動に社青同が参加する高度の蓋然性を示す資料には到底なりえない。

(三) 集団示威行進後の総括集会の参加団体のうちに含まれていた社青同は、控訴人が問題としている社青同東京地区本部ではなく、社青同中央本部(控訴人の主張によれば、右社青同東京地区本部とは対立し、その解敢を命じた団体である。)を意味しているのである。

(四) 控訴人は、本件集団示威行進が国会周辺を通るか外堀通りを通るかについて、六月五日の申請時まではつきりしていなかつた旨主張するが、おそくとも昭和四二年六月三日には、東京護憲連合の依頼を受けた角南俊輔、石川博光両弁護士と社会党東京都本部の柴田満が警視庁を訪れ、当時の集会係長笠野孝及び公安委員会秘書の小坂警部に会い、六月一〇日の東京護憲連合の集団示威行進は国会周辺を通る予定であること並びに右の件につき東京都公安委員会と率直かつ十分に話をしたい旨申し入れているのである。

(五) さらに、本件許可申請を提出した後である六月七日にも、東京護憲連合の事務局長であつた水口宏之及び前記柴田らが警視庁を訪れ、国会デモに関して東京都公安委員会と懇談したい旨重ねて申し入れている。したがつて、東京都公安委員会が社青同参加予定の有無について主催者側から事情を聴取しようと思えば、その機会は十分にあつたにもかかわらず、右折衝の全経過を通じ、笠野集会係長らは、国会開会中に国会の周辺をデモで通るというのは御遠慮願うというのが公安委員会の方針である旨繰り返すにとどまり、社青同の参加をことさら問題としていなかつたことは明白である。

(六) 控訴人は、執行停止申立事件において提出した意見書に社青同参加のことを触れなかつた理由を述べているが、単なる弁解にすぎない。東京都公安委員会が、本件申請に対し、とくに社青同の行動を問題として採り上げ、審理をつくして本件条件を付したのであれば、いかに提出が急がれたとはいえ、意見書中に社青同の問題を全く触れないということは考えられない。

4  損害賠償請求権の帰属主体についての反論

都公安条例においては、団体が集団行動を施行する場合でも、届出義務者(許可申請者―第二条)、許可書受領権者(第三条第二項)など法律行為の主体は、すべて団体ではなく、代表者である個人とされているが、これは、公安委員会の処分によつて直接利益・不利益をうける実質的な権利義務の主体を定めたものと評価すべきものである。このことは、同条例第五条により、条件違反等の行動があつたときは、個人である当該主催者が刑事罰をうけるという重大な不利益を課せられることからも明らかである。このように、主催者として届出ないし許可申請をした者は、当然これに対する応答たる許可処分をうけるべき法律上の地位を有するのであるから、違法にその地位(法的利益)を侵害された場合には、当該損害の賠償請求をすることができるのは当然である。

5  都公安条例第三条第一項の解釈についての反論

都公安条例第三条第一項本文は、集団示威運動等の許可申請があつたときは、公安委員会は、「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」、すなわち「公共の安寧を保持する上に明白かつ現在の危険が認められる場合」のほかは、無条件で許可が与えられなければならないことを示したものであり、また、同項但書は、右の明白かつ現在の危険が認められる場合においても、特定事項に関して必要な条件を付することによりかかる危険を防止しうると認められるときは、あながち申請を不許可にすることなく、条件付で許可できることを示したものであり、明白かつ現在の危険が認められない場合まで、公安委員会が必要と認める条件を付することを許すものではないと解すべきものである。また、同項但書六号において、「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」と規定したのは、進路等の変更に関する条件は、同項一号ないし五号の事項に関する条件と異なり、実質的には申請にかかる進路等の一部不許可を伴う変更処分ともいうべき重要な条件であるので、とくに厳重な要件を付したのであり、右にいう「公共の秩序又は公衆の衛生の保持」とは、同項本文の「公共の安寧の保持」の内容を具体化したものであり、同項六号の「やむを得ない場合」とは、同項本文の「直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」つまり「明白かつ現在の危険の存する場合」と実質的意義を同じくするものと解すべきものである。

したがつて、控訴人のこの点に関する所論は失当というべきである。

6  国会周辺の規制と公安条例との関係についての反論

控訴人のいう、国会周辺において不法行為の発生する可能性がきわめて高いという「過去の経験」は、いずれも、国民一般あるいは少なくとも予想されるデモ参加者が強い関心を抱いている重要案件審議の際のものであることは周知のことであつて、本会議はもとより、委員会審議の予定もない日の、憲法擁護の趣旨を訴えることを主目的とした本件デモとは、およそ状況を異にしているものである。

四、当審における新たな証拠<略>

理由

一当裁判所も、当審であらたに取調べた証拠を加えて本件全資料を検討した結果、被控訴人の本訴請求は、原審認容の限度において理由があると認定判断するものであつて、その理由の詳細は、次のとおり訂正、付加、削除するほか、原判決理由(ただし、原裁判所の昭和四四年一二月二六日付更正決定により更正したもの)のとおりであるから、それをここに引用する。なお、以下に訂正するもののほか、「原告」若しくは「原告ら」とあるのは「被控訴人」と、「被告」とあるのは「控訴人」と、「当裁判所」とあるのは「東京地方裁判所」と各読替えるものとする。

1  原判決一一三頁三行目冒頭から一一四頁四行目「日付をもつて、」までを、「被控訴人が、東京護憲連合の代表委員として、同連合の憲法擁護運動を推進してきたものであること、被控訴人は、同連合の所属員を中心に、昭和四二年六月一〇日に、憲法施行二〇周年を記念し、憲法擁護の趣旨を広く国民各層に訴えるため、参加予定人員一、〇〇〇名、行進区間は杉並区役所から国会裏通りを経由して日比谷公園まで(原判決添付略図の申請コースのとおり)の集団示威運動を行なうべく、昭和四二年六月五日、都公安条例第一条に基づき、東京都公安委員会に対し、右集団示威運動の許可を申請したところ、同委員会は、右申請に対し、同月八日付をもつて、右条例三条一項但書の規定に基づき、」と訂正する。

2  同一一六頁末行目から一一七頁一行目の「かような集団行動による思想等の表現は、」を削り、同頁一行目二行目の「現代社会におけるように」を「現代社会においては」と訂正し、同頁六行目の「すぎない実情」を「すぎず、かかる実情」と訂正し、同頁七行目の「大衆にとつては、」を「大衆にとつて、集団行動によつて思想等を表現しようとすることは、」と訂正し、同一一八頁八行目「とるも、」を「とることも、」と訂正し、同一二二頁八行目「「明白かつ現在の危険の原則」の適用は」を「都公安条例第三条第一項本文にいう「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」であるかどうかの判断は、」と訂正し、一二四頁一行目「解釈」から同頁二行目「みなし」までを削り、同頁三行目を「行動をしても違法ではないと解するのが相当である」と改める。同頁五行目「いえないが、」を「いえない。」と改め、同行目「原告が」以下同頁七行目までを全部削除する。

3  同一二五頁八行目「集団行動」から一二七頁八行目「相当とする。」までを、「都公安条例第三条第一項は、公安委員会は、集団行動の実施についての許可申請があつたときは、当該集団行動の実施が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを許可しなければならい。但し、次の各号に関し必要な条件をつけることができる。」と規定し、その六号に、「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路、場所又は日時の変更に関する事項」を掲げている。この規定の趣旨は、明白かつ現在の危険が積極的に認められる場合には不許可となるが、それ以外の場合には、申請を許可しなければならないこと、この場合には、同項但書各号に定める事項につき、公安委員会が必要と認める条件を付することができること、しかし、右各号のうちでも、進路、場所又は日時の変更に関する事項については、その事項に関する条件が、その前の一号ないし五号の事項に関する条件とは異なり、当該集団行動の基本に関するものであつて、実質的には申請にかかる進路等の一部不許可を伴う変更処分ともいうべき重要なものであるので、その点を明確にするため、「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」でなければならないとしたものと解するのが相当である。なお、公安委員会が付することのできる右条件は、憲法の保障する表現の自由を規制するものであるから、公安委員会の主観により、無制限に付することができるものではなく、公共の福祉を保持するため必要かつ最少の限度において付しうるものと解すべきで、また、右六号の「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」の意義については、右進路変更等の条件が実質的には一部不許可を意味するものであることにかんがみ、同項本文の「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」とほとんど同意義に解釈適用するのが相当である(もつとも、同一日時、同一経路についての性格の異なつた二つの集団行動とか、ラッシュアワーの極端に混雑した街路における集団行動の、日時、場所、進路の変更も、右但書六号により行なわれるべきものであるから、右後者(都公安条例第三条第一項本文の規定)よりも右前者(同項但書六号)の方が多少広い概念であるというべきである。ちなみに、最高裁判所昭和四四年一二月二四日大法廷判決により合憲とされた京都市のいわゆる公安条例第六条第一項本文には、右後者に相当するものとして、「公衆の生命、身体、自由又は財産に対して直接の危険を及ぼすと明らかに認められる場合」と規定し、同項但書六号には、右前者に相当するものとして、「公衆の生命、身体、自由又は財産に対して直接の危険を防止するためやむを得ない場合」と規定し、ほぼ似たような表現をしている。)。」と訂正する。

4  同一二八頁一行目「同条項」を「同項本文」と訂正し、同頁二行目「または、」の下に「同項但書六号の」を加え、同頁六行目「証人松本義治」から同七行目「両名」までを「原審証人松本義治、同金原忍、原審及び当審証人角南俊輔、当審証人石井勇、同笠野孝の各証言(ただし、右金原及び笠野の各証言については後記信用しない部分を除く。)並びに原審における原審原告藤永哲夫及び被控訴人の各」と訂正し、同頁八行目「証人金原忍の証言」を「原審証人金原忍及び当審証人笠野孝の各証言」と訂正し、同一二九頁二行目「昭和三一年」を「昭和四一年」と訂正し、同頁五行目の「二三」及び六行目の「四六の」を各削り、同頁七行目[方議員」を「方議会議員」と訂正し、同頁九行目「の六人」を「らであり」と訂正し、同頁一〇行目「原告」を「原審原告」と訂正し、同一三〇頁末行目「にわたり」の後に「、リレー方式によつて」を加え、同一三二頁三行目「参加予定者」から同五行目「数で」までを「、東京地評だけで参加予定者は三、〇三五名となることが計画されたものの、これは、あくまで計画した人数で」と訂正し、同頁八行目「国会周辺」を「赤坂見附から特許庁前」と訂正し、同一三三頁九行目「事務局長」を「事務局員」と訂正し、同頁一〇行目「角南俊輔の」後に「ら」を加え、同行目「公安」を「都公安条例関係の」と訂正し、同一三四頁一行目「東京都公安委員会」を「右警備課職員」と訂正し、同頁二行目三行目「はいつていることを確認」を「はいるであろうと判断」と訂正し、同頁一〇行目「臨時委員会を開催して、右申請を」「午前一一時から約一時間余にわたり臨時委員会を開催して、右申請及びその他の案件を審議したが、本件申請については、」と訂正する。

5  同一三五頁五行目冒頭から同一四二頁九行目まで全部を、次のとおり訂正する。

「(二) 控訴人は、東京都の場合には、国会における立法機能を維持することも、「地方公共の秩序の維持」に含まれ、都公安条例によつて保護する対象となるが、本件集団示威行進が国会周辺を通過すれば、国政審議権の行使を阻害する危険があると明らかに認められた旨主張する。

たしかに、東京都は日本における政治、経済、文化、外交の中心であり、首都でもあるから、その中で発揮される諸々の機能に対する妨害を排除し、その機能を維持することは、地方自治法第二条第三項一号に規定する「地方公共の秩序を維持」することの中に含まれ、したがつて、国会による立法機能を維持することも、公安条例によつて保護すべき対象に含まれるというべきである。しかし、前示証人金原忍の証言によれば、本件集団示威行進の実施日である昭和四二年六月一〇日には、第五五回特別国会の開会中ではあつたが、当日は土曜日であつたので、国会は、恒例により、本会議及び委員会を開く予定がなかつたこと、東京都委員会においても、同月八日本件申請を審議した際には、すでに右事実を了知していたこと、本件集団行動のスローガンは、前記のとおり、憲法二〇周年記念のほか、ベトナム反戦、自衛隊違憲等七項目であるが、これらのスローガンは総花的なものであつて、現に国会で審議している案件と直接関係のあるものはなかつたことがそれぞれ認められ、他に右認定に反する証拠はない。

右認定の事実に次の事実、すなわち国会周辺において不法行為の発生した事例がいずれも国民一般あるいは少なくとも予想される集団行動参加者が強い関心を抱いている重要案件審議の際のものであつた事実(この事実は公知の事実である)を加えて考察すれば、本件集団示威行進がかりに国会周辺を通過するとしても、国会周辺であるが故に国会の審議権の行使に対する妨害等の不法行為が発生するという蓋然性はそれほど高くなかつたものと認めるのが相当である。

なお、控訴人は、本件集団示威行進の当日には国会における審議の予定がないとしても、緊急の事態に対処するため委員会等が開かれることもありうる旨主張するが、この場合には、都公安条例第三条第三項の規定により、「緊急の必要があると明らかに認められるに至つたときは、その許可を取り消し又は条件を変更することができる。」のであるから、この規定の活用を考慮すべきであつて、緊急の事態が発生していないのに、その発生に備え、あらかじめ集団行動を規制することは許されないものというべきである。

(三) 次に、控訴人は、本件集団示威行進には社青同が参加するものと判断したが、右社青同は過去の幾多の集団行動においてしばしば不法行為を繰り返したので、本件集団示威行進においても、国会周辺を通過させるときは同様に不法行為をするおそれがあり、したがつて、その進路を変更することは公共の秩序保持のためやむを得ない場合にあたる旨主張するので、この点について判断する。

まず、都公安条例第三条第一項但書六号にいう「公共の秩序……を保持するためやむを得ない場合」とは前記のとおり、「公共の秩序を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」とほとんど同意議に解釈運用すべきものである。控訴人は、東京都公安委員会が本件集団示威行進に社青同が参加するであろうと判断した根拠として次の理由、すなわち、(1)東京護憲連合主催の昭和四一年一〇月一六日の集団行動に社青同も参加していること、(2)本件申請の事前折衝の場で、同連合事務局員松本義治が、本件集団示威行進を含めた四つの求心デモ及びその後の総括集会の参加団体として社青同があると述べたこと、(3)右総括集会の申請書に、参加団体として、社青同の記載があること、(4)本件申請当時、社青同は他の団体主催の集団行動に参加していることを掲げているが、以上の各事実がかりに全部認められているとしても、社青同の意思すなわち本件集団示威行進に参加する意思を明確に推測しうる事実が認められない本件においては、前記各事実の存在だけでは、社青同が本件集団示威行進に参加することは明らかには認められなかつたものというべきである。のみならず、前示証人金原忍、同石井勇、同笠野孝の各証言によれば、社青同東京地区本部が昭和四一年九月の内部斗争により分裂したことを警視庁も了知していたこと、本件申請書提出前に、昭和四二年五月八日、同月二六日、同月三一日及び同年六月三日の四回にわたり、本件集団行動の主催者側が警視庁警備部警備課に出向いて事前折衝をして、また、右申請書提出後の同月七日にも主催者側が出向いて折衝しているが、折衝の過程で本件集団示威行進の参加団体の中に社青同がはいることを問題としなかつたこと、社青同が参加した集団行動において、社青同員は毎回不法行為をしているわけではなかつたことが認められ、原審及び当審証人角南俊輔の証言によれば、社青同には協会と解放派とがあり、総括集会の申請書に記載されている社青同は協会派のことであつて、この協会派は、行動面では解放派に較べて穏健であること、この社青同がとくに過激な傾向を帯びるようになつたのは昭和四二年一〇月の羽田事件以後であつて、本件申請時にはそれほど過激な行動はとつていなかつたことが認められるのであるから、社青同が本件集団示威行進に参加するとしても、同行進が国会周辺の道路を通過すれば控訴人主張の危険が発生すると、少なくとも明らかには、認められなかつたものといわざるをえない。」

6  同一四二頁一〇行目「(三)」を「(四)」と訂正し、同一四三頁五、六行目「前示のとおりである。」を「改めていうまでもないことである。」と改め、同頁六行目「したがつて、」から同頁九行目までを削除する。

7  同一四五頁三行目「(一)(二)」を(一)ないし(三)」と訂正し、同頁六行目「また」を「及び」と訂正し、同頁八行目の「単に従来の方針」から同頁一〇行目「理由で」までを削り、同一四六頁二行目と三行目との間に次の文章を加える。

「なお、控訴人は、東京都公安委員会は、警視庁警備部提出の資料や警備部長の報告等を素材として、約一時間余にわたり慎重に審議した旨主張するが、慎重に審議したかどうかは審議の内容によることであつて、先に認定したとおり、本件集団行動のスローガンは現に国会において審議している案件とは直接関係がなく、集団行動の当日は本会議も委員会も開かれる予定がなく、したがつて、この面で不法行為の発生する蓋然性は高くなかつたのに、この点を看過したこと、また、本件集団行動に社青同が参加し、同行動により国会周辺で不法行為が惹起されることが明らかに認められる場合でないのに、右不法行為が惹起されるものと軽々しく判断した点に、東京都公安委員会に少なくとも過失があつたものというべきである。」

8  同一四六頁六行目「に」を削り、「検討する」の次に「。国家賠償法第一条の規定によれば、当該違法な公権力の行使によつて損害を被つた「他人」がその損害の賠償を請求することができるのであるが、ここでいう「他人」とは公権力の行使によつて直接不利益を被つた者を指すものと解するのが相当である。ところで、」を加え、同一四七頁一〇行目「の」を削る。同一四八頁三行目「が、原告藤永」から同五行目「請求できない」までを削り、同頁六行目「べきである」の後に、「(なお、この点につき、控訴人は、都公安条例第二条にいう「主催者である個人又は団体の代表者(以下主催者という。)」との規定は、「主催者である団体」の代表者を「主催者」といいかえたものであつて、本来の主催者は団体自体であり、民事上の権利義務もその団体に帰属するのであつて、東京護憲連合の代表委員七人のうちの一人にすぎず、また、実際に参加もしなかつた被控訴人個人は損害賠償請求権を取得しえない旨主張するが、同条例全体を通じて見て、団体が主催者であることを予定した文言は全くなく(とくに、第二条一号、二号、五号参照)、また、主催者は、条件違反等があれば、同条例第五条により刑罰が科せられることもあるとの点にかんがみれば、控訴人の右見解には到底賛同できない。」を加える。

9  同一四八頁九行目「当事者」の後に「間」を加え、同一四九頁五行目「原告ら」を「原審原告藤永哲夫及び被控訴人の」と訂正し、同頁一〇行目「同原告」を「被控訴人」と訂正し、同一五〇頁一〇行目「なつたこと」の後に「と」を加え、同一五二頁一行目及び五行目の各「同原告」を各「被控訴人」と訂正する。

10  同一五二頁九行目「三六条」の後に「、三八条」を加え、同一五三頁三行目冒頭から九行目まで全部を削除する。

二叙上の次第であるから、控訴人は被控訴人に対して金一〇万円の支払義務があるところ、右認定の限度で被控訴人の本訴請求を正当として認容し、その余を失当として棄却した原判決は結局相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(枡田文郎 日野原昌 古館清吾)

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