大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(う)1227号 判決

被告人 錦織常夫

〔抄 録〕

所論は、昭和四四年七月二六日付起訴状第一の二の事実につき、海宝成之丞作成名義の登記申請委任状中「海宝」名下に「海老沢」名義の有合印を押捺しても、海宝成之丞の印影とはいえないから、有印私文書偽造罪にいう有印にはあたらないというのであるが、一件記録を検討すると、右「海宝」名下に押捺された「海老沢」という印影、使用した印顆は、被告人が昭和四三年四月二二日、海宝成之丞の代理人を僣称して、千葉市役所に、従来の届出印鑑の紛失を理由に、改印届を提出した印顆印影と同一のものであつて、即日下付された印鑑証明書を利用して司法書士岡田四郎方で本件の委任状等の私文書偽造同行使を犯したものであるが、右の改印届や印鑑証明書交付の際何回か照合に当つた市役所の係員や情を知らないで本件偽造委任状等の作成に関与した司法書士すら、右印顆印影の文字が海宝でなく海老沢とあることに気付かず、海宝成之丞の印影と誤認したことが明らかであつて、関係当局者および一般人をして右のように誤認させるおそれが十分あるので、かかる印を用いて私文書を偽造した場合には有印私文書偽造罪が成立するものと解すべきである。論旨は理由がない。

(江里口 上野敏 粕谷)

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