東京高等裁判所 昭和45年(う)821号 判決
被告人 斉木和夫
〔抄 録〕
所論は、原判決はその認定した第一の事実について兇器準備集合罪の処罰法条を、第二の事実について威力業務妨害罪の処罰法条を、第三の事実について公務執行妨害罪の処罰法条をおのおの適用したうえ、右各罪が刑法第四五条前段で規定する併合罪の関係にあるものとして処断しているけれども、原判決の認定した事実に徴し明らかなように、原判示第一の兇器準備集合と第二の威力業務妨害とはいわゆる一所為数法の関係にあり、また兇器準備集合罪は公務執行妨害罪の予備の段階を処罰するものであるから、原判示第三のとおり兇器準備集合の犯行が進展して公務執行妨害罪が成立するに至った以上、兇器準備集合罪はその公務執行妨害罪に吸収され、別罪として残存しないこととなるのであるから、原判決は右二点において法令適用の誤りをおかしており、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるというものである。
しかしながら、原判決の認定した事実によると、兇器準備集合罪は、原判示第一のとおり、被告人を含む多数の学生らが共同加害の目的をもって、多数の角材等を準備し、昭和四四年一一月一六日の午後三時五〇分頃東京駅の第三ホーム上に集結して集団を組んだ時点において成立し、その後同日の午後四時一〇分頃まで、すなわち被告人を含むその集団が同駅第一ホームを経て、神田駅の中央線ホーム南端から東京駅寄り約五〇メートル付近の地点に移動するまでの間継続していたことになっているのに対し、威力業務妨害罪は、同判示第二のとおり、右集団が東京駅第一ホームに移動した同日の午後四時六分頃から神田駅の中央線ホーム南端から東京駅寄り約五〇メートル付近の地点に赴いた時刻である午後四時一〇分頃までの間、被告人を含む多数の学生らが集団を組み、多数の角材を携帯して行進し、勢威をふるうことによって、国鉄の旅客運送業務を妨害したということになっていて、犯罪の成立した時期が右両罪間においてちがっているばかりでなく、電車が正常運転に復するまでには若干の時間を必要としたであろうことを考えるときは、犯行の終了した時期もまた両罪間においてずれがあったといわねばならないので、たまたま午後四時六分頃から午後四時一〇分頃までの間における被告人の行動において、両罪間重なり合う点があったとしても、兇器準備集合の犯行と威力業務妨害の犯行とが、所論のように、いわゆる一所為数法の関係にあるものとはとうてい考えられないのであり、また兇器準備集合罪は所論のように、公務執行妨害罪の犯人となるべき者をその妨害に使用する兇器を準備した段階において処罰することのみを目的とするものではないから、たとえ兇器準備集合罪の犯人がその加害目的とする機動隊員に対する攻撃を開始し、その機動隊員の公務の執行を妨害する罪が成立する段階にたち至ったとしても、兇器準備集合罪がその後に成立した公務執行妨害罪に吸収され、公務執行妨害罪の一罪だけが成立することとなるべきいわれはないので、原判決が兇器準備集合罪と威力業務妨害罪とを刑法第四五条前段で規定する併合罪の関係にあり、また兇器準備集合罪と公務執行妨害罪も同じく併合罪の関係にあるものと判断したのは正当であり、原判決にはごうも法令の適用を誤った違法は存しないのであるから、所論は容認できない。論旨は、理由がない。
(荒川 谷口 中久喜)