東京高等裁判所 昭和45年(ネ)151号 判決
本件土地のうち控訴人井上が占有する部分は、本件仮差押がなされた当時すでに田中伝一がこれを賃借し同地上建物につき所有権保存登記を経ていたのであるから、右田中の借地権は仮差押債権者に対抗しえたものであるところ、その後に至り控訴人井上が田中から右建物およびその敷地の賃借権の譲渡を受け、その譲渡につき地主倉田為二の承諾を受けたものであることは前記認定のとおりである。被控訴人らは、倉田の右借地権譲渡の承認は、仮差押によって生じた処分禁止の効力により、仮差押債権者に対抗できないものであると主張する。しかし、仮差押は金銭債権の将来の執行を保全するため債務者の責任財産の交換価値を把握維持することを目的とするものであり、そのため仮差押の目的物の交換価値を減少、消滅させるような処分行為を制限しようとするものである。しかるに、借地権の譲渡の承諾は、普通建物の所有を目的とする借地権を堅固な建物の所有を目的とする借地権に変更することを承認する等特段の事情のないかぎり、単に借地人の交替を承認するにすぎず、何らその土地に新たな負担や制限を生ぜしめるものではなく、その交換価値に減少消滅を来すものとはいえない。従って、かかる借地権譲渡の承認は、仮差押によって制限される処分行為には含まれないものと解するのが相当である。またかりに借地人の変更がたとえ法律上その土地に新たな負担や制限を生ぜしめるものではないとしても、具体的に借地人が何人であるかということによって借地人の変更が事実上土地の交換価値に影響を及ぼすことがあり得るとしても、借地権は借地人にとってもまた一個の財産でありその財産の処分権が借地人と何等関係のない地主とその債権者間の仮差押の効力によって制限を受けるものとすることは相当でない。
(菅野 渡辺 中平)