東京高等裁判所 昭和45年(ネ)1698号 判決
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〔判決理由〕被控訴人(原告)が本件実用新案権者であること、本件考案の登録請求の範囲の項の記載が被控訴人(原告)主張のとおりであることおよび控訴人(被告)が被控訴人(原告)主張のとおりの原判決添付物件目録記載の物件(以下「(イ)号物件」という。)を製造販売していたことは、当事者間に争いがない。もつとも、控訴人代理人は、控訴人(被告)の製品が被控訴人(原告)主張のとおりである旨の自白は、真実に反しかつ錯誤にもとづくことを理由として撤回する旨主張するが、右自白が真実に反しかつ錯誤にもとづくことは、本件証拠上これを認めることができないから、右自白の撤回は許されないというべきである。すなわち、当審および原審における証人の供述および弁論の全趣旨によると、イ号物件の判決添付図面は、もともと控訴会社(被告)側係員によつて作成された図面に基づくものであつて、右図面においては、スプリングがスプリングキヤツプとボンベとの両者に、接触しており、かつ、スプリングキヤツプとボンベの間を一定間隔に保つことがスプリングの目的の一つであることが認められ、したがつて、この目的を達するためには、スプリングがボンベに接触していることが必要であると推認せざるをえない。
また、控訴会社が日本消防検定協会に提出した型式番号消第四二―二〇号消火器の図面にあつては、その右半分の部分においてスプリングの下端がボンベに接触しているように図示されていないことは明らかであるが、かくされている左半分の部分においてスプリングの下端がボンベに接触していないとは断定できないのみならず、右スプリング10を「ボンベ振れ止メスプリング」と名付けていることに徴すれば、その実物においてはむしろ右スプリングの下端がボンベに接触している構造のものと推認するのが相当である。
したがつて、イ号物件にあつてはスプリングの下端がボンベに接触していないことを前提とする前記控訴人の自白の撤回は、許されないものである。<中略>
本件考案の実施料率について検討するに、この種の実用新案の実施料率が、通常、製品の工場渡し価額の三パーセントをもつて相当とすることは、控訴人(被告)の争わないところでみるから、本件考案の実施料率がこれと趣を異にするものであることについて特段の事情が認められないかぎり(本件において、かかる特段の事情が存することは、証拠上認めることができない)、実施料率は右工場渡し価格の三パセントであると推認するのを相当とする。
二 してみれば、その認定の限度で被控訴人の損害賠償請求を認容した原判決は、相当であり、本件控訴は理由がない。
よつて、本件控訴を棄却する。
(石沢健 瀧川叡一 宇野栄一郎)