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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)2139号・昭45年(ネ)1852号 判決

主文

一、第一審被告株式会社東京ユニオン、第一審被告宮山正泰の本件控訴はいずれもこれを棄却する。

二、原判決主文第二項ならびに同第三項および第四項中第一審被告株式会社東京ユニオン、第一審被告宮山正泰、第一審被告大東京火災海上保険株式会社に関する部分を取り消す。

1、第一審被告株式会社東京ユニオン、第一審被告宮山正泰は各自第一審原告に対し金四〇万円およびこれに対する昭和四三年九月二九日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2、第一審被告大東京火災海上保険株式会社は第一審被告株式会社東京ユニオンに対する原判決および本判決が確定したときは、第一審原告に対し金一二〇万五〇〇〇円およびこれに対する右確定の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3、第一審原告の第一審被告株式会社東京ユニオン、第一審被告宮山正泰、第一審被告大東京火災海上保険株式会社に対するその余の請求はいずれもこれを棄却する。

三、訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その八を第一審原告の、その余を第一審被告らの各負担とする。

事実

第一審原告は、「一、原判決中第一審原告勝訴部分を除きこれを取り消す。二、第一審被告株式会社東京ユニオン、同宮山正泰は各自第一審原告に対し金六四二万七五八五円およびこれに対する昭和四三年九月二九日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。三、第一審被告大東京火災海上保険株式会社は第一審原告に対し金四一九万五〇〇〇円およびこれに対する昭和四五年六月三〇日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。四、訴訟費用は、第一、二審とも第一審被告らの負担とする。」旨の判決を求め、第一審被告らの控訴について、いずれも控訴棄却の判決を求めた。

第一審被告らは、「原判決中第一審被告ら勝訴部分を除きこれを取り消す。第一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」旨の判決を求め、第一審原告の控訴について、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張ならびに証拠の関係は、左のとおり訂正、削除、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、それを引用する。

1、原判決三枚目表八行目「四二番地」とあるを「四一番地」と訂正する。

2、原判決一四枚目表四行目、五行目を全部削除する。

(証拠)<省略>

理由

第一、(第一審原告の第一審被告東ユ、第一審被告宮山に対する請求について。)

一、左のとおり削除、訂正、付加するほか、原判決理由第一、一、二、三、四(原判決一五枚目表二行目以下同二二枚目表八行目まで)のとおりであるから、それをここに引用する。

二、1、原判決一五枚目表二行目「被告関根」を削る。

2、原判決一五枚目裏一〇行目「(二)被告関根」以下同一六枚目表七行目「失当である。」までを削る。

3、原判決一六枚目表八行目「(三)被告宮山」以下、同一七枚目表一一行目「相当と認める。」まで(原判決理由第一、二、(三))を左のとおり訂正する。

「(二) 第一審被告宮山および第一審原告の過失について判断する。

成立に争のない甲六号証の三、四、九号証の一ないし四、乙一号証、二号証の一、二、三号証の一ないし四、および原審ならびに当審における第一審原告本人尋問の各結果(一部)、同第一審被告宮山本人尋問の各結果(一部)、当審の検証の結果によれば、本件事故現場(東京都新宿区戸山町四一番地先交差点)は、原判決添付別紙図面(以下別紙図面という。)に示すとおり、馬場下町から諏訪町に通ずる道路(甲道路という。)と戸山ハイツ方面に通ずる道路(乙道路という。)および戸塚方面に通ずる道路とが交わる交通整理の行われていない交差点附近であつて、甲、乙道路(いずれもアスフアルト舗装)とも交差点附近で東方から西方にむかつてゆるやかなのぼり勾配をなし、甲道路は車道幅員一三米、その両側に歩道幅員三・五〇米があり、乙道路は車道歩道の区別がなく、その幅員七・一〇米であること(その他の状況別紙図面のとおり。)、本件事故当時は小雨で路面は濡れていたが、たまたま車の往来はとぼしく第一審原告、第一審被告宮山にとつて見透しの困難な状況はなかつたこと、昭和四二年一一月二〇日午後四時三〇分頃、第一審被告宮山は加害車を運転して甲道路を諏訪町方面から馬場下町方向(東方)へ進行し本件交差点に入つたが、ここで乙道路に右折し戸山ハイツ方面へ向うべく、右折の方向指示ランプを点滅させながら甲道路上(別紙図面<1>附近)で一旦停止し、甲道路を西方へ直進する自動車一台をやりすごしたところ、東方約六〇米先甲道路上(別紙図面<ア>附近)を西方へ進行接近してくる被害車を発見したが、被害車の前を右折できると判断して発進し時速五粁ないし六粁で乙道路に向つて約八・二〇米(別紙図面<2>附近まで)右折進行し、さらに、戸山ハイツ方面から乙道路上を来る車にのみ注意をうばわれ被害車には全く注意することなく約三・八米(別紙図面<3>附近まで)進行し、はじめて被害車の近接に気がついたが制動をかけるひまもなかつたこと、これよりさき、第一審原告は甲道路を馬場下町方面から諏訪町方向(西方)に向い進行中加害車が甲道路上(別紙図面<1>附近)で右折の方向指示ランプを点滅させながら右折の態勢にあつたことを現認しながら、自車よりはやく、すでに右折をはじめている加害車に注意をはらうことなく、戸山ハイツ方面から乙道路上を来る車にのみ注意をうばわれ、時速約三〇粁ないし三五粁で前進してすこしく左折しながら乙道路に進入したこと、そこで、たちまち、乙道路上の別紙図面×点(別紙図面<3>点と×点の間約一・六五米)において、被害車の右側中央部と加害車の前部とが相衝突するに至り、被害車は右衝突のためさらに別紙図面の電柱(戸山一三〇)に激突したことが認められる。前顕第一審原告、同第一審被告宮山の各本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、前記採用証拠に比照して俄に信用することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

右の事実によれば第一審被告宮山には、右折進行中、右側の乙道路上をくる車にのみ気をうばわれて被害車の進行に全く注意をはらわず、左方の安全を確認しなかつた過失が認められ、これに対し第一審原告には、前方注視義務を怠り、乙道路に進入するに際し、本件交差点においてすでに右折をはじめている加害車に全く気づかずその進路の直前に進入した過失が認められる。そして、本件現場の地形、衝突の状況その他前記事実関係を検討すると、両者の過失割合は、第一審原告六、第一審被告宮山四と認めるのが相当である。

右認定を覆すに足る事実の主張立証はない。」

4、原判決一七枚目裏一〇行目「そして、」以下同一八枚目表二行目「六万〇五〇〇円となる。」までを次のとおり訂正する。

「そして、証人田中美代志の証言、弁論の全趣旨によれば、右付添労務の価値は一日当り一一〇〇円と評価するのが相当であり、したがつて原告主張の五五日間分の付添費は六万〇五〇〇円となる。右認定を覆し、右を越える額の付添費の主張を認めるに足る証拠はない。」

5、原判決一九枚目表八行目「れる。」の次に「その余の費用の主張については、これを是認するに足る証拠がない。」を加える。

6、原判決二〇枚目表六行目「三七二万六一二九円」とあるを「三六七万八三四五円」と訂正する。

7、原判決二〇枚目表八行目から九行目「逸失利益算定の起算日である昭和四三年八月当時は満一九歳である。」とあるを「原告は昭和四三年一〇月二九日をもつて満一九歳となる。」と訂正する。

8、原判決二〇枚目裏七行目から八行目「原告は、満六〇歳までの四一年間に亘り、」とあるを「原告は、満一九歳から満六〇歳までの原告主張の四二年間に亘り、」と同二〇枚目裏九行目「年間少くとも三ケ月分相当の給与が支給」とあるを「なお、年間少くとも三ケ月分相当の給与が別途に支給」と各訂正する。

9、原判決二一枚目表三行目から四行目「一万一〇〇〇円×一五×二一・九七〇四=三七二万六一二九円となる。」とあるを「一万一〇〇〇円×一五×二二・二九三〇=三六七万八三四五円となる。右認定を覆しまた右を越える額の原告主張逸失利益を認めるに足る証拠はない。」と訂正する。

10、原判決二一枚目表六行目「四〇六万七六七一円」とあるを「四〇一万九八八七円」と訂正する。

11、原判決二一枚目表八行目「一三〇万円」とあるを「一六〇万円」と訂正する。

12、原判決二一枚目表九行目、同裏一行目の「八〇万円」とあるを「九〇万円」と各訂正する。

13、原判決二二枚目表四行目から五行目「八〇万五〇〇〇円」とあるを「一二〇万五〇〇〇円」と訂正する。

14、原判決二二枚目表七行目から八行目「が、被告関根には賠償義務はない」を削る。

第二、(第一審原告の第一審被告大東京に対する請求について)

一、(保険契約)

第一審被告東ユと第一審被告大東京との間に第一審原告主張の保険契約(以下自動車責任任意保険契約という。)が締結されたことは当事者間に争がない。

二、(保険金請求権の代位行使について)

1、本件自動車責任任意保険契約の性質、内容(約款については乙四号証、五号証)を検討するに、保険契約が成立すると保険事故の発生を停止条件とする保険金請求権が発生し、保険事故発生のときに条件が成就して保険金請求権は抽象的に発生するが、なおその保険金請求権を行使するためには、その前提として被害者と加害者(使用者、運行供用者を含む被保険者)との間で損害賠償額の確定することが原則として必要であり(この点につき、原判決理由第二、一、(一)、(二)-原判決二二枚目裏一行目から同二四枚目表六行目まで-を引用する。)、通常の場合は、被害者と加害者との間の示談成立あるいは判決確定により、右損害賠償額が確定し、さらに約款所定の手続が完了したとき右保険金請求権の履行期が到来するものと解すべきである。

2、しかし、本件のごとく、被害者が、同一訴訟手続で、加害者に対する損害賠償請求と保険会社に対する保険金請求権の代位行使による請求(以下保険金請求という。)とを併せて訴求し併合審判のなされる場合においては、裁判所は被害者の損害賠償請求を認容するとともに、認容する損害賠償額に基づき被害者の保険金請求を、後記のごとき将来(履行期未到来)の給付の請求として認容することができるものと解すべきである。けだし、かく解することは、本件自動車責任任意保険契約の性質、内容に実質的に適合しこそすれ、何ら背反するものではないし、かかる場合にまで、損害賠償額の確定がないものとして保険金請求を排斥すべき実質的理由は見い出しがたいからである。

もとより、通常の場合、保険金請求権の履行期は、損害賠償額が確定し、さらに約款所定の手続が完了したとき到来するものと解すべきことは、前記説示のとおりであるが、右約款所定の手続は、保険会社が前記損害賠償額確定の手続に関与しない通常の場合につき、保険会社に対し、確定した損害賠償額の内容を検討し保険金支払の準備期間を与えるために設けられたものと解すべきであるから、保険会社と加害者が共に訴訟当事者として関与する本件併合訴訟のごとき例外の場合には、右約款所定の手続にかかわらず、被害者の加害者に対する損害賠償請求を認容する判決が確定すると同時に保険金請求権の履行期が到来し、その翌日から保険会社は履行遅滞の責に任ずるものと解すべきである。

そして、本件のごとき併合訴訟においても、判決の言渡の後に属する右履行期の到来を条件として右保険金ならびに期日後の遅延損害金の支払を請求することは、民事訴訟法二二六条所定の将来の給付の訴にあたるというべきであるが、右保険金請求権は、前記のごとく併合訴訟の判決の確定と共に直ちに履行期が到来するものである点、加害者、保険会社が損害賠償義務、保険金給付義務を争い、被害者は損害のすみやかな賠償を得べき必要にせまられている点にかんがみるときは、同法所定の「予め其の請求をなす必要ある場合」にあたるとするに十分であるということができる。

3、第一審被告大東京は、右保険金請求が民法四二三条の要件を欠くと主張するが、被害者の加害者に対する損害賠償請求権と加害者の保険会社に対する保険金請求権とは、前記のごとく密接不可分の牽連関係にあり、かつ、保険者の支払う保険金は、被害者に対する損害の賠償を確実ならしめ、あるいは右賠償にあてられるという特別の関係にあるもので、被害者は、自己の特定の損害賠償債権を保全するため、その担保ともいうべき加害者の特定の保険金請求権を代位行使するものであるから、かかる場合には、加害者である被保険者の無資力を要件とするものではないと解すべきであり、また本件のごとき例外の場合を除き、被害者と加害者との間の責任関係が未確定(損害賠償額未確定)の間は保険金請求権を行使しえないことは前記説示のとおりであるから、債権者代位権の客体たる保険金請求権が既に適法に行使されているため代位行使しえなくなるという事態も起りえないところである。そして、右事態の発生を窺わせる証拠はない。第一審被告大東京の右主張を採用することはできない。

三、(責任関係)

前記認定のとおり、加害者第一審被告東ユは被害者第一審原告に対し一二〇万五〇〇〇円の損害賠償責任がある。

四、(保険金請求権)

第一審原告の第一審被告大東京に対する保険金請求は、即時の支払を求める請求としては認容し難いこと前記の説示により自から明らかというべきであるが予備的に前記説示の将来の給付の請求をふくむ趣旨であることは、弁論の全趣旨から明らかであるところ、以上の事実関係によれば、第一審被告大東京は、第一審被告東ユに対する原判決、本判決が確定したときは、第一審原告に対し保険金の限度内である金一二〇万五〇〇〇円およびこれに対する右確定の日の翌日から支払済に至るまで第一審原告の求める民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるというべきであるから、第一審原告の本件保険金請求は、右の限度で理由があり、その余は理由がないものとして棄却すべきものである。

第三、以上の次第で、第一審原告の第一審被告東ユ、第一審被告宮山に対する請求については、金一二〇万五〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年九月二九日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり、その余は棄却すべきものであるから、右第一審被告両名に対し金八〇万五〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年九月二九日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員の支払を命じ(原判決主文第一項)、仮執行の宣言を付した(原判決主文第四項)原判決は正当であり、右第一審被告両名の本件控訴はいずれも棄却すべく、第一審原告のその余の請求を棄却した原判決(原判決主文第三項)は、金四〇万円およびこれに対する昭和四三年九月二九日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員の請求を排斥する限度で不当であるからこれを取り消し、第一審原告の請求を右限度で認容し(本判決主文第二項1)、その余の請求を棄却し(本判決主文第二項3)、また、第一審原告の第一審被告大東京に対する請求については、第一審被告大東京の前記認定の支払義務の限度で理由があるから、右限度を越える請求を認容した原判決主文第二項、第一審原告のその余の請求を棄却した原判決主文第三項は不当であるから取り消し、第一審原告の請求は、右支払義務の限度で認容し(本判決主文第二項2)、その余を棄却し(本判決主文第二項3)、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条、九三条、九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 江尻美雄一 後藤静思 平田孝)

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