大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和45年(ネ)2739号 判決

本件記録によると、控訴人は当初その訴状記載の住所たる東京都千代田区九段南二丁目三番二五号高山マンシヨン内五の三においてではなく、同区九段南四丁目五番八号なる麹町郵便局窓口において自ら原審の昭和四二年六月一二日午前一〇時の口頭弁論期日呼出状、訴状及び答弁書催告書の送達を受けたが、その後前記訴状記載の住所にあててした送達が不送達となり、爾後裁判所は原告たる被控訴人からの上申により港区芝浦二丁目三番地小倉善之助方(本件控訴人肩書地)、千代田区九段北一丁目一四番一号(控訴人が代表取締役たる東海建設株式会社の所在地であるとともに少くとも昭和四二年二月ごろには自ら住所と称していたところ)等に送達を試みたが、いずれも不送達となつたので同四四年四月一一日にいたり、原告たる被控訴人訴訟代理人から公示送達の申請がなされたので、原審裁判所は職権により所轄警察署を通じて控訴人の所在を調査したが、控訴人は千代田区北一丁目一四番一号海老原方に住民登録をしたまま結局その所在が判明しなかつたので同月三〇日右公示送達の申請を許可し、控訴人に対する第一回の公示送達は同年五月一日東京地方裁判所の掲示場に掲示されてなされたことが認められる。

右の経過によつて考えれば控訴人は、すでに訴状の受領により本件訴訟の提起を知つていたのであり、右訴状記載の住所と自己の真の住所とが異なるものであれば、自ら裁判所ないし相手方にそれを知らしめるのでなければ、やがてすべての訴訟書類は不送達となり、ついには公示送達がなされ、判決が言渡されるであろうことは当然察知し、右訴訟の進行状態について関心を抱くべきであるものというべきである。しかるにこれを怠り本件判決の言渡を知らなかつたとしても、それはもつぱら控訴人の自ら招いたところであつて、ひつきようその過失によるものと解するのが相当である。

すると、原審のした本件公示送達は適法であつて、本件控訴期間の懈怠は控訴人の過失によるものであるから、控訴人は右懈怠した控訴提起を追完しえないものというべきである。

しからば、本件控訴は期間経過後に提起された不適法な控訴であり、しかもその欠缺は補正することができないので、民事訴訟法第三八三条によつてこれを却下する。

(浅沼 岡本 田畑)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!