大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ラ)1045号 決定

右昭和四四年(ヌ)第四一号事件の記録によれば、原審裁判所は右事件につき最低競売価額金九二五万一、〇〇〇円をもつては競売申立権者である愛静産業の債権に先だつ本件不動産上の負担および費用を弁済して残余を生ずる見込がないとして、右債権者に対し民事訴訟法第六五六条第一項の通知をし、右通知は昭和四五年九月一二日右債権者に送達されたところ、右債権者は同年九月一七日原審裁判所に対し本件不動産を最低競売価額および費用を弁済して残余がある価額で買取つてくれる者があり、目下金策中であるから、同条第二項所定の七日の期限を一五日間猶予を求める旨の上申書を提出したのみで、右通知到達後七日内に同条第二項所定の申立をせずかつ保証もたてなかつたこと、次いで同月二八日右債権者は代表取締役望月銀作の名前で原審裁判所に右事件の取下書を提出したことが認められる。記録中の戸籍謄本によれば右望月銀作は同年九月二日死亡していたことが明らかであるから、右取下書の提出された当時同人は愛静産業の代表取締役ではなかつたことになる。かように法人の代表者が死亡し、後任の代表者が選任されない間に(後任の代表者が選任されたことは記録上うかがわれない)、旧代表者名義でした法人の行為が当然無効であるかどうかは、一の問題であるが、仮りに抗告人ら所論のように右取下書の提出によつては取下の効果は発生せず、従つて右事件は未だ終了していないから、本件競売申立にもとづいて競売手続を進めたことは違法であり、従つて本件競落許可決定も違法であるとしてこれを取消したとしても、原審裁判所としては右債権者が前記通知の到達後七日内に同条第二項所定の申立をせずかつ保証もたてなかつたものとして前記競売手続を取消すことは明らかであり、そうすると原審裁判所はまた抵当権実行による本件競売申立にもとづいて競売手続を続行せざるをえないことになることが考えられる。そうだとすると右取下が無効であるとの理由により原決定を取消しても結局無用の手続をくりかえす結果になるだけで抗告人らにはなんら利益にはならない反面、無用の手続をくりかえすことによつて競売裁判所をわずらわして時間と費用を無駄にするとともに、利害関係人に与える不利益は多大なものがあるといわなければならないから、所論のごとく愛静産業による前記強制競売事件の取下の無効を理由として本件競落許可決定の取消を求めるのは、抗告人らに取消の利益を欠き許されないというべきである。

(浅沼 岡本 田畑)

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