東京高等裁判所 昭和45年(ラ)142号 決定
抗告人は昭和四五年四月一日付で退職の発令をうけ、現在いわゆる失業状態にあり、恩給、退職金等について具体的にその額、支給時期も定まらず、再就職の機会も本件の家庭不和が原因で取り逃がし、目下の生活は必しも安定した収入とはいえない貸室収入月額約八万円余位にたよつているが、実母死亡に至るまでの入院医療費に相当額の出費を余儀なくされ、一日も早く本件の家庭不和を解消して再就職の機会を得たいと願つていることが認められる。
以上の事実からすると、抗告人の国家公務員としての月々の俸給収入を基礎に細かく夫婦同居の態様を規制した原審判は既にその前提事実がなくなり、事態に適合しなくなつたので、これを取消すほかはない。しかも現在の不安定且つ流動的な状態のもとでは右規制に代るべき安定策もないうえ、本件同居申立を拒む法律上特段の事由も認められないし、本来愛情を基礎とする夫婦、親子の生活に、他から細かい規制や干渉をすること自体の当否にも疑問なきを得ないので、子女の学業関係や相手方の準備の都合などを考慮し、当審においては、ただ、すみやかに同居すべきことを命ずるだけにとどめる。
(平賀 石田実 麻上)