東京高等裁判所 昭和45年(ラ)509号 決定
抗告人が、真正に成立した文書として原審裁判所に提出した甲第一号証の昭和三六年三月九日付借用証書には、抗告人が原審において主張した内容の消費貸借契約事項が記載されるとともに、その第一一項に「第一審裁判所は和歌山地方裁判所新宮支部又は新宮簡易裁判所とすることを合意する」との文言が記載(印刷)されていて、末尾に、相手方ら三名の記名、押印があり、その住所として新宮市(相手方斉藤増平及び長井きみよ)又は和歌山県東牟婁郡古座町(相手方浜野義弘)が表示され、名宛人は抗告人ほか一名となつている。
ところで、本件のような消費貸借に基づく債務は、特約がなければ持参債務であるので、その履行を求める事件の裁判管轄については当事者の普通裁判籍と義務履行地の特別裁判籍とが競合するところ、かような場合に関係当事者が特に債務者らの普通裁判籍所在地の裁判所を管轄裁判所とする旨の合意をしたときは、他に特段の事情がない限り義務履行地の裁判籍を排除して、専属的に債務者らの普通裁判籍所在地の裁判所を管轄裁判所とする旨の合意をしたものと解するのが相当である。しかして本件においては、右特段の事情も認められないので、和歌山地方裁判所又は和歌山簡易裁判所の専属とする趣旨の合意がなされたものといわなければならない。
(平賀 石田実 麻上)