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東京高等裁判所 昭和45年(秩ほ)2号 決定 1970年5月25日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、被告人は本案被告事件につき昭和四五年五月一二日に開かれた第一一回公判において、傍聴券を所持しない私服警察官が在廷することに対し抗議していたところ、裁判官は途中で被告人の発言を遮り、傍聴券の枚数の調査をしないので被告人は更にそれに対して抗議し公平な裁判を受ける権利を主張したものであり、その際、暗黒裁判を暴露する旨を述べてはいないのであるから、これを理由として監置の決定をしたのは違反であるというのである。

よつて一件記録、本案記録、並びに原審第一一回公判期日における審理状況の録音テープ、を調査すると、原裁判所は昭和四五年五月一二日の公判期日において弁護人の、傍聴券をもたない私服刑事が傍聴人として入廷しているかを調査されたいとの被告人、弁護人の要求に対しては、法廷警備員に傍聴券の発行枚数、在廷の傍聴人数を問いただすなどして、全傍聴人が傍聴券を所持していることを確認した上、傍聴券を所持する以上はその者の職業、思想のいかんを問わず在廷を認める旨説明したところ、なお傍聴券の呈示を要求し、裁判長の制止に従わず、更に別件被疑事件につき裁判所内において被告人を逮捕したことは暗黒裁判を暴露したことになる旨の発言をしたことが明らかであつて、このような発言は不穏当な言動で裁判の威信を著しく害したものというべきであるから、法廷等の秩序維持に関する法律第二条により監置すべきものとした原決定には法令に違反する点はない。本件抗告は理由がない。〔なお抗告代理人安武幹雄の提出した抗告理由書(追加一)と題する書面は抗告申立期間経過後の差出にかかるものであるから、これに対しては判断を与えない。〕

よつて法廷等の秩序維持に関する規則第一八条第一項により、本件抗告を棄却することとして主文のとおり決定する。

(遠藤吉彦 青柳文雄 菅間英男)

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