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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)120号 判決

原告主張の請求原因事実は全部当事者間に争いがない。この事実によれば、審決は、原告主張の違法があることが明らかであるから、取消を免れない。

よつて、原告の請求は正当であるから認容する。

〔編註〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。

第一 当事者の求めた裁判

原告は主文同旨の判決を求め、被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二 請求原因

一 特許庁における手続の経緯

原告(旧商号早川電機工業株式会社)は特許第三一五〇七二号「カラーテレビジヨン表示装置」(昭和三四年五月二八日出願、昭和三八年九月一二日公告、昭和三九年六月一九日登録)(以下「本件特許」という。)の特許権者である。被告は昭和四三年一月二六日、原告を被請求人として、本件特許につき無効審判を請求した(同年審判第二九三号)。特許庁はこれに対し、昭和四五年八月三一日「本件特許を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年一〇月二二日原告に送達された。

二 本件特許発明の要旨

NTSC方式のカラーテレビジヨン受像機において、受像電波中のバースト信号が検出され、該バースト信号によつて制御されるバースト位相検波回路、カラーキラー回路等に発生するバースト信号の有無に応じて発生する差の信号を表示装置に供給し、バースト信号の有無により受像電波を表示させることを特徴とするカラーテレビジヨン表示装置

三 審決理由の要点

本件特許発明の要旨は、前項掲記のとおりである。

昭和二六年実用新案出願公告第一三三〇六号公報(以下「第一引用例」という。)には、信号の入来の有無をネオン管の光輝の変化によつて表示する装置が記載されている。また、米国特許第二七五二四一七号明細書(以下「第二引用例」という。)には、NTSC方式のカラーテレビジヨン受像機において、バースト分離ゲートによりバースト信号を検出し、このバースト信号によりカラー参照発振器、カラーチヤンネル不動作回路(カラーキラー回路)を制御し、バースト信号の有無に応じてネオン管を点滅させ、これによつて復調器のバイアスを制御するようにした。信号で動作するテレビジヨンの自動制御装置が記載されている。

そこで、本件特許発明を第一、第二引用例に記載された装置と比較検討する。本件特許発明の構成要件の主要部である「NTSC方式のカラーテレビジヨン受像機において、受像電波中のバースト信号が検出され、該バースト信号によつて制御されるカラーキラー回路に発生するバースト信号の有無に応じて発生する差の信号を利用するカラーテレビジヨン装置」は、第二引用例に記載されたものと一致する。

本件特許発明の構成要件の一部である「バースト信号の有無に応じて発生する差の信号を表示装置に供給し、バースト信号の有無により受像電波を表示させる」点は第二引用例には明記されていない。しかし、第二引用例記載の装置においても、バースト信号の有無に応じて発生する差の信号をネオン管に供給し、受像電波がカラー信号であるか白黒信号であるかに応じてネオン管が点滅するのであり、このネオン管によつてカラーキラー回路の動作を自動的に行なつている。また、信号の入来の有無をネオン管の光輝の変化あるいは点滅によつて表示することは、第一引用例により本件特許発明の出願前に公知に属する。

したがつて、第二引用例に記載されたカラーテレビジヨン受像機のカラーキラー回路に使用されているネオン管を、本件特許発明のように受像電波がカラー信号か白黒信号かの表示に利用することは、当業者の容易に推考実施できるところである。そうだとすると、本件特許発明は、その出願前国内に頒布された刊行物である第一および第二引用例に容易に実施することができる程度に記載されたものであるから、旧特許法(大正一〇年法律第九六号。以下同じ。)第四条第二号により同法第一条の新規の発明と認めることができない。

よつて、本件特許発明は、特許法施行法第二五条により本件につき効力を有する旧特許法第五七条第一項第一号により無効とすべきものである。

四 審決を取消すべき事由

第一、第二引用例が本件特許発明の出願前国内に頒布された刊行物であること、第二引用例に審決認定の記載があること、同引用例記載の装置においても、バースト信号の有無に応じて発生する差の信号を、カラーキラー回路に使用されているネオン管に供給し、受像電波がカラー信号であるか白黒信号であるかに応じてネオン管が点滅することは認める。

しかしながら、第二引用例記載の装置のネオン管は、復調器のバイアスの制御を目的とするだけであるから、このネオン管はテレビ受像機のカラーキラー回路のあるシヤーシーの奥深くに設けられている。このため このネオン管は外部から見ることができず、受像電波がカラー信号か白黒信号であるかを表示する作用を営まない。

そして、第一引用例記載の装置は、ネオン管の光輝の変化により信号の入来の強弱を表示するだけであつて、信号がカラー信号か白黒信号かを表示するものではない。もともと本件出願前、受像電波の中に含まれる特殊な信号を抽出して表示することにより、受像電波がカラー信号であるかそれとも白黒信号であるかを表示する技術思想は全くなかつた。

したがつて、バースト信号の有無に応じて発生する差の信号を表示装置に供給し、同装置のネオン管の点滅によつて受像電波がカラー信号か白黒信号かを表示させることは、当業者が第一、第二引用例に基づき容易に推考することができないものである。

よつて、本件特許発明を当業者が第一、第二引用例に基づき容易に推考実施できるものであるとした審決は、違法として取消を免れない。

第三 被告の答弁

原告主張の事実は全部認める。

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