大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)122号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 そこで、本件審決を取り消すべき事由の有無について検討する。

「有明」なる普通名詞が、「陰暦一六日以後で、空に月が残つたまま夜が明けること」、「そのころの夜明け」またはいわゆる「ありあけあんどん」を意味するものであることは当裁判所に顕著なところであり、また、「有明」の文字を含む固有名称として、本件審決のいう「有明海」のほか、「有明山」、「有明湾」、「有明浜」等の存することは被告の認めて争わないところである。

しかしながら、<書証>を総合すると、九州西部で長崎、佐賀、福岡、熊本の四県に囲まれている有明海の沿岸地方が本願の指定商品に含まれることの明らかな貝柱、海葺等の粕漬を産出することで一般に著名であることもあつて、「有明」と「漬」とを結合した「有明漬」なる文字は、取引者および需要者をして有明海沿岸地方で生産される叙上のごとき漬物を直感させ、商標法第三条第一項第三号にいう「その商品の産地を…表示する標章」であると認めるのが相当であり、この認定を左右するに足りる証拠はない。この点に関し、「有明漬」なる文字が、原告の主張するように、「夜通し食べつづけ気がついたらすでに夜が明けていたというほどにおいしいであろう漬物」または「夜通しの仕事または遊びに際し食するに適した漬物」という観念を普通に生ずると認めるべき証拠も合理的理由もない。また、「有明」の文字を含む固有名称として審決のいう「有明海」のほかに、原告の指摘する「有明浜」、「有明湾」、「有明山」等のあることは被告の争わないところであるが、これらの地域が本願の指定商品の産地ないし販売地というに足りることを確認すべき証拠はない。

さすれば、有明海沿岸地方が本願指定商品の原材料の生産地であることを理由として本願商標がその指定商品の産地または販売地の表示であると認定したかのように解されないでもない本件審決は、その説明の過程の表現において適切を欠くとの批判はまぬがれないとしても、結論として本願商標がその指定商品の産地または販売地を表示するものと認定しているのであるから、結局において正当であり、これを違法として取り消すべき事由はないものといわなければならない。したがつて、この点に関する原告の主張は、その余の部分につき判断するまでもなく、採用することができない。

(二) 原告の三の(二)の主張について

本願商標の構成が別紙のとおりであることは被告の認めるところで、これによると、本願商標は、筆記調のやや肉太の楷書体で「有明漬」の漢字を縦書きしてなるものであることが認められる。そして、叙上本願商標はその外廓に波打つた形をしている所が二、三存するといえないことはない。しかし、前顕乙第八号証ないし乙第一四号証の記載およびこの種漢字書きの標章についての吾人の日常の経験を参酌して審案すると、本願商標をもつて独得の工作創作の加えられた格別特異な構成を有するものとはなしがたく、いわんや、原告の作成意図はともかく、本願商標が「時間をかけてよく漬け込んだ食べ頃のおいしい漬物自体」または「原材料に酒粕がべつたり付着しているような漬物」を連想させるとは、到底認めえないところである。したがつて、本願商標をもつて(指定商品の産地または販売地を)普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとした本件審決の認定を違法ということはできず、この点に関する原告の主張も理由がないものというほかはない。

三、以上のとおりであるから、本件審決にその主張のような違法事由があることを理由として取消を求める原告の本訴請求は、理由がない。

(服部高顕 石沢健 奈良次郎)

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