東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)67号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき理由の有無)
二 本件審決は、引例方法の内容を誤認し、引例方法と本願発明との対比において判断を誤つた違法があり、取り消されるべきものである。すなわち、……引例方法の構成とを対比すると、引例方法においては、使用材料として、本願発明における油性染料、ポリエチレン溶剤およびワニスに一応対応すべきものとして、顔料、ポリエチレン樹脂を軟化する溶剤およびポリエチレン樹脂を軟化する溶剤とエラストマーを混合したものがあるほかに、印刷の対象であるポリエチレンプラスチックより分子量の低いポリエチレンがあげられているところ、本願発明においては、右の低分子ポリエチレンに対応すべきものがないことが明らかである。してみれば、本願発明と引例方法とは、かりに前記の一応対応するとみられる油性染剤と顔料との間等の関係では顕著な差異がないとしても、右の低分子ポリエチレンの有無の点において、構成上の差異があるものといわなければならない。
この点に関し、本件審決は、右低分子ポリエチレンは、引例方法の技術内容からみて、必ずしも必要なものではないと認められるとし、被告も、有機溶剤によりポリエチレン成型品を軟化すればインクの浸透が行なわれるのであるから、ポリエチレン表面の軟化作用のない低分子ポリエチレンは必ずしも必要でない旨主張するが、……本件にあらわれたすべての資料によつても、引例方法が、前記低分子ポリエチレンを除いてもなお同様の作用効果をあげうることを認めることはできず、かえつて、……右低分子ポリエチレンの適用は、引例方法の目的を達成するための必須の技術的要件となつているものと認められ、これを左右すべき資料はないから、本件審決の前記認定の誤りは明らかであり、また、被告の右主張についても、前記低分子ポリエチレンにポリエチレン表面の軟化作用のないことは所論のとおりであろうけれども、……かりに引例方法において低分子ポリエチレンを除いたインクを使用したとすれば、ポリエリレンに対するインクの浸透(顔料のみの浸透ではない。)はありえても、引例方法の目的とする良好な印刷の結果を得ることができるとは、到底認めることができないから、被告の右主張は採用できない。
以上説示したとおり、本願発明と引例方法との間には、その他の点はしばらくおいても、前記低分子ポリエチレンの使用の有無の点について、構成上の差異があるところ、本件において、引例方法から低分子ポリエチレンの使用を除いて本願発明の構成を想到することが当業者にとつて容易であつたと認めるに足りる資料は、まつたく存在しないから、本願発明が引例方法から容易に発明できたものとした本件審決は、その点において判断を誤つたものといわなければならない。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、その他の点について判断するまでもなく、その理由があるものというべきである。
(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)