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東京高等裁判所 昭和45年(行コ)5号 中間判決 1971年5月31日

控訴人(原告) 金川錬作 外二一名

控訴人(補助参加人) 小夏幸子 外四九名

被控訴人(被告) 東京都中野区長 職務代理者東京都中野区助役

主文

本件訴訟は、当審に係属している。

事実

一  被控訴代理人は、本件中間の争につき「本件訴訟は、昭和四五年五月一九日、控訴人(第一審原告)等の控訴の取下により終了した。」との判決を求め、次のとおり陳述した。

(一)  本件控訴事件において、第一審原告として控訴したのは、控訴人金川錬作等二二人であるが、そのうち、控訴人山田乙治は昭和四五年二月四日、その他控訴人二一人は同年五月一九日、それぞれ控訴の取下をしたので、これにより、本件訴訟は、終了したものである。

(二)  第一審補助参加人たる控訴人(以下、単に「参加人」という。)等は、第一審原告たる控訴人(以下、単に「第一審原告」という。)等が控訴の取下をしても、参加人等が控訴の取下をしない以上、控訴の取下は、その効力を生じない、と主張する。

しかし、参加人等の参加は、共同訴訟参加でも、共同訴訟的補助参加でもなく、単なる補助参加にすぎないから、第一審原告等が控訴を取下げた以上、参加人等は、独立して控訴を維持することができず、訴訟は、右により終了したものというべきである。

けだし、

1  参加人等の参加は、共同訴訟参加ではない。そのことは、(1) 参加人等が昭和四四年五月一五日付で原審に提出した申出の書面の表題に「補助参加の申立」とあり、参加の趣旨中に「原告等を補助するため右訴訟に参加したく申立する。」と記載され、補助参加の申出に貼用すべき額の印紙が貼用されていること、(2) 参加人等の中には、後述のとおり、本件訴訟の前提となるべき監査委員に対する監査の請求をしておらず従つて本訴の当事者適格を有しない者や、すでに東京都中野区から転出して同区の住民でなくなつた結果本訴の当事者適格を失うにいたつた者がふくまれていること(当事者適格を有しない者が共同訴訟参加をなしえないことは、いうまでもない。)によつても、明らかである。

元来、この種の、いわゆる住民訴訟の目的は、当該地方公共団体の利益を確保しようとするにあり、住民各人は、抽象的ないし反射的ともいうべき利害関係に立つにすぎず、その具体的な権利を保護するという作用は、存しないのであるから、当事者の一方と合一にのみ確定すべき場合、というに該当するような法律上の利益を一般住民たる参加人等に認めることはできない。そして、行政事件訴訟法(以下、「行訴法」という。)第四三条第三項、第四一条第一項の規定により、本件訴訟のごとき種類の民衆訴訟に同法上の参加の規定(第二二条)の準用が排除されている点からいつても、また、地方自治法第二四二条の二第四項の規定により、住民訴訟においては、すでに、係属する訴訟の請求と同一の請求に関する別訴の提起が禁ぜられている点からいつても、本件訴訟のごとき種類の住民訴訟においては、共同訴訟参加は許されないものというべきである。

2  参加人等の参加は、共同訴訟的補助参加でもない。参加人等の中には、本件訴訟につき当事者適格を有しない者がふくまれており、まず、これらの者の参加は、共同訴訟人に準じた地位を認められる共同訴訟的補助参加の性質を有しないものというべきであるが、その他の参加人の参加についても、結論は、同様である。

判例中には、補助参加に共同訴訟的補助参加としての効力を認めたものがあるが、それは、いずれも判決がその効力を補助参加人に及ぼす場合であつて、このような場合には、補助参加人に対し、特に共同訴訟人に準ずる地位を与えようというのが、共同訴訟的補助参加なるものを認めた趣旨にほかならない。しかるに、本件において、第一審原告等の請求は、被控訴人たる区長の契約行為を差止めるということであるから、その勝訴判決で確定されるものは、訴外京成電鉄株式会社に対する本件土地の売却という被控訴人の行為の差止めにすぎない。第一審原告等はもとより、参加人等においても、その訴訟活動の趣旨は、区の住民という立場において、区の財務処理の公正を図ろうというにあり、訴訟の結果につき具体的な権利関係を有するわけではないから、第一審原告等と参加人等とのあいだに合一にのみ確定すべき権利関係というものは、ありえず、本件判決が参加人等にその効力を及ぼすことも、ありえない。

この種住民訴訟においては、前述のとおり、別訴の提起が禁止されているが、それは、濫訴の弊を防止する趣旨であつて、判決の効力を合一にのみ確定すべき積極的な理由があるわけではないから、本訴終了後、第一審原告等以外の住民がさらに同旨の訴を提起することまで禁じられておらず、その点からいつても、参加人等に共同訴訟人に準じた、地位を認める必要はない。

共同訴訟的補助参加人の地位は、行訴法第二二条の規定による参加人の地位とほぼ同様であるから、本件訴訟の参加人に共同訴訟的補助参加人の地位を付与することとすれば、同法第四三条第三項、第四一条第一項の規定で、この種の民衆訴訟に同法第二二条の規定の準用を排除している趣旨を没却することにもなりかねず、その点からも、参加人等の主張は、承認しがたい。

3  被控訴人としては、以上のような考え方から、参加人等が、本件訴訟につき、補助参加の要件、すなわち、「訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル第三者」たる適格そのものを具備していないのではないか、との疑念をもつたのであるが、参加人等の申出の趣旨が単なる補助参加とされていたので、第一審における訴訟の遅延をおそれて、その参加につきあえて異議を述べなかつたものである。しかるに、第一審原告等の控訴の取下の後になつて、右申出にかかる参加が、単なる補助参加でなく、共同訴訟的補助参加であつて、訴訟は終了していない、と主張するごときは、いたずらに訴訟の終了の引延ばしを図ろうとする行為といわざるをえない。

(三)  参加人等の中には、次のとおり、当事者適格を有しない者がある。

1  参加人等のうち、参加人小夏幸子等四二人、同田副ミツ等四人が、それぞれその主張の日に監査の請求をし、その主張のとおり監査の結果の通知を受けたことは、認めるが、参加人松原京子、同臼井信、同森富子及び黒田秀俊の四人は、監査の請求をしていないので、当事者適格を有しない。

2  参加人等のうち、参加人赤塚堯は昭和四五年四月二五日、同山田几平は同年五月八日、同中島政良は昭和四六年一月一三日、同副島重之は昭和四五年七月二〇日、同山田倭久子は同年五月八日、同実藤恵秀は同年六月二一日、それぞれ肩書住居に転出し、中野区の住民ではなくなつたから、これにより、本訴の当事者適格を失つたものである。

二  参加人等の訴訟代理人は、本件中間の争につき、主文同旨の判決を求め、次のとおり陳述した。

(一)  参加人等が原審に提出した参加の申出の書面には、「補助参加の申立」という表題を付し、参加の趣旨中には、「原告等を補助するため右訴訟に参加したく申立する。」という記載があるが、民事訴訟法(以下、「民訴法」という。)第六四条の補助参加と、同法七五条の共同訴訟参加とは、参加申出の方式が同一であるので、(民訴法第六五条、第七五条)右のような表現を用いたまでであつて、この参加の性質は、補助参加ではなく、共同訴訟参加である。

1  けだし、本件訴訟は、東京都中野区の住民たる第一審原告等が、その住民たる資格に基いて提起したいわゆる住民訴訟であり、参加人等もその住民たる資格に基いて参加しているのであつて、正に、訴訟の目的が、当該地方公共団体の住民たる第一審原告等、参加人等を通じて合一にのみ確定すべき場合にあたるものというべく、参加人等のうち、訴提起の適格をそなえた者が、共同訴訟人として参加しうることは、明らかだからである。

2  そして、訴提起の適格として、当該地方公共団体の住民たることのほか、みずから監査委員に対する監査の請求をしたことを要するとしても、参加人等のうち、参加人小夏幸子、同赤塚堯、同金高満すゑ、同山田几平、同松原順子、同近藤光子、同片桐新太郎、同佐々木正敏、同鈴木久二郎、同中島政良、同河野貞三郎、同副島重之、同池田正雄、同小巻文野、同阿藤貞雄、同大沼渉、同鈴木勤、同青柳寛、同今井忍、同落合文次、同樋口育郎、同山田倭久子、同大智嘉子、同森学、同松谷彊、同洞富雄、同大江賢次、同山本正明、同河野正通、同古在由重、同加藤芳郎、同櫻井栄章、同態沢高子、同平瀬巳之吉、同実藤恵秀、同島田信子、同山田史郎、同遅塚カズ、同前河千代子、同大下なるみ、同渡辺チヨ及び同加瀬貞子の四二人は昭和四四年三月六日、参加人田副ミツ、同志田藤千恵子、同大島せつ子及び同館寿男の四人は同月二七日、それぞれ監査の請求をし、同年四月三〇日当該監査の結果の通知が発せられた後、通常の書留郵便物の配達期間内に該結果の通知を受けたものであつて、すくなくとも、これらの者は、訴提起の適格があり、従つて、その参加は、共同訴訟参加と解されるべきである。なお、参加人等のうち、参加人松原京子等被控訴人主張の四人が監査の請求をしていないことは、争わない。

3  参加人等のうち、参加人赤塚堯、同山田几平、同中島政良、同副島重之、同山田倭久子及び同実藤恵秀の六人が被控訴人主張のとおりそれぞれ肩書住居に転出し、中野区の住民でなくなつたことは認めるが、参加申出当時中野区の住民であつた以上、本訴につき当事者適格を喪失するものではなく、これらの者も、共同訴訟人たる地位を失うものではない。

(二)  仮に、参加人等の参加が補助参加であるとしても、それは、共同訴訟的補助参加と解されるべきである。けだし、この種の訴訟において広く住民一般に出訴権が与えられている趣旨は、住民個人の利益を保護しようという点にあるのではなく、住民の手により地方公共団体の財政の公正な運営を図ろうとするにあるのであるから、住民各個の具体的な利害関係の有無、深浅にかかわりなく、住民たることじたいに基いて、訴えを提起することができる反面、一の訴訟が係属するときは、別訴の提起は禁止され、住民各個の利害は捨象されて、単一の訴訟による一挙の解決がはかられる(別訴の禁止は、かかる趣旨であつて、参加まで禁じた趣旨ではない。)が、その判決は、訴訟のかような性格上、当然、すべての住民に対し効力を及ぼすものと解されるべきであり、従つてまた、かような地位にある住民の補助参加は、正に、共同訴訟的補助参加の要件を充足するものというべきだからである。

(三)  以上のとおり、参加人等の参加は、共同訴訟参加というべく、もしそのように解しえないならば、共同訴訟的補助参加であつて、いずれにせよ、単なる補助参加ではない。従つて、参加人等が控訴を取下げることなく維持している以上、たとえ第一審原告全員が控訴を取下げても、訴訟が終了することはなく、本件訴訟は、なお適法に係属しているものというべきである。

三  (証拠省略)

理由

一  本件において、第一審原告として控訴した控訴人金川錬作等本判決当事者表示欄掲記の二二人が、それぞれ、被控訴人主張の日に、適式な控訴取下の書面を当裁判所に提出したことは、記録上明らかである。

現時点における本件の争点は、右取下行為後における本件訴訟の帰すうであり、そのことは、参加人等の参加の性質いかんに由来するものであるから、以下、この点につき判断する。

二  参加人等の参加が民訴法第七五条に定める共同訴訟参加でないことは、明らかである。

(一)  けだし、参加人が原審に提出した参加申出の書面の体裁が被控訴人主張のとおりであることは、記録上明らかであつて、すでにその点からこれを補助参加と解さざるをえないばかりでなく、原裁判所も、これを補助参加として取扱い、訴訟関係人のなに人からも、従来これに対し異論をとなえられた事情の存しないことは、記録の全記載及び弁論の全趣旨に徴して認められるから、今において、これを、補助参加と全く性質を異にする共同訴訟参加と解する余地はないものというほかない。

(二)  もつとも、本訴のような住民訴訟においては、共同訴訟参加は、およそ認めることができない、という被控訴人の見解には、到底与することができない(このことは、後に、共同訴訟的補助参加につき判示する場合に関連をもつので、これに関する当裁判所の見解をのべることとする。)。

およそ、この種の住民訴訟においては、当該地方公共団体の住民は、監査委員に対する監査の請求を経た以上、なに人といえども、訴を提起することができるのであるから、同一の訴訟の目的につき当事者適格を有する者が多数存する場合に該当し、いわゆる類似必要的共同訴訟として、その判決は、現に訴訟を追行している当事者のほか、第三者たるすべての住民にも効力を及ぼし、従つて、訴訟の目的が当事者の一方及び第三者につき合一にのみ確定すべき場合に相当するものといわなければならない。そして、かような場合に、その第三者が共同訴訟人として訴訟に参加しうることは、民訴法第七五条に明定するところであるから、すくなくとも監査請求を経た住民は、原告側の共同訴訟人として、当該訴訟に参加することができるものというべきである。

被控訴人は、住民訴訟においては住民が個人として訴訟の結果につき具体的な権利関係を有しないことをあげて、共同訴訟参加を認めえないことの理由としようとするが、監査請求を経た住民がその資格において訴訟につき当事者適格を与えられている以上、具体的な利害関係の有無は、共同訴訟参加の許否に影響を及ぼすものではない。また、住民訴訟において、同一の請求に関する別訴が禁止されていること(地方自治法第二四二条の二第四項)も、もとより、係属中の訴訟に対する共同訴訟参加まで許さないものとする理由となるものではないし、行訴法の規定のいかんによつて、右の解釈が左右されるべきいわれもなく、被控訴人のこれらの点に関する主張は、すべて理由がない。

ただ、住民訴訟には、訴を提起しうる期間(以下、「出訴期間」という。)の定めがあるから(地方自治法第二四二条の二第二項)、その期間経過後に、共同訴訟参加をすることができないことは、当然である。

三  参加人等の参加が単なる補助参加であるか、いわゆる共同訴訟的補助参加と解すべきかについては、問題がないわけではないが、当裁判所は、次のとおり考える。

(一)  元来、共同訴訟的補助参加とは、補助参加のうち、当該訴訟における裁判の効力が相手方当事者と補助参加人とのあいだにも及ぶ場合を他と区別し、この場合における補助参加人を他の通常の場合における補助参加人に比し特に保護するため、これに対し共同訴訟人に準ずる地位を与えようとして考定された制度で、わが民訴法上にこれに関する規定が存しないにもかかわらず、判例、学説が解釈上これを認めようとするのは、それにより、他人間の訴訟における判決の効力をうけるべき第三者の地位を、できる限り保護しようとするにある、ということができる。ただ、わが民訴法には、別に、共同訴訟参加なる制度(民訴法第七五条)が存するのであつて、かような独自の参加制度を有するわが民訴法の解釈としては、共同訴訟的補助参加は、原則として、訴訟の第三者が、その訴訟に基く判決の効力をうけるにもかかわらず、当該訴訟につき法律上当事者適格を与えられていないために、共同訴訟人としては参加することができない、という場合にのみ、これを認めることとすれば、十分である(共同訴訟的補助参加の成立を認めた大審院及び最高裁判所の判例も、すべてこれに該当する事案に関するものである。)。

これに反し、補助参加の時点において参加者が当事者適格を有しない場合であつても、事件につき出訴期間の定めがある場合における右期間経過後の補助参加のごときは、これに共同訴訟的補助参加の効力を認めるべきでない。事件につき出訴期間の定めがある場合には、共同訴訟参加をすることができるのも、この期間内に限られるから、その訴訟につき本来当事者適格を有していた者であつても、該期間経過後は、もはや、補助参加をすることができるにすぎなくなる。しかし、そのことは、その者が適時に共同訴訟参加の申立をすることを怠つたことに基くものであつて、いわば、みずから招いたものというべく、その補助参加は、共同訴訟的補助参加として特に保護するにはあたいしないものといわなければならない。補助参加は、訴訟がいかなる段階にあるを問わずすることができるものであるのに、出訴期間を徒過した権利者の補助参加につき、ひろく共同訴訟的補助参加の効力を認めるとすれば、それは、当該訴訟の原告又は共同訴訟人として訴訟を追行する権能を一旦はみずから放棄しておきながら、たまたま他の権利者による訴訟の追行にいわば便乗して、原告に準ずる地位を回復しようとすることを認めるものというべく、その者を不当に保護する結果となるばかりでなく、出訴期間を設けた法の趣旨に反する結果となるものであつて、かくのごときことは、承認することができない。

(二)  ところで、本訴のような住民訴訟は、住民の参政措置の一環として、地方自治運営の腐敗の防止矯正とその公正の確保を図ろうとするものであり、住民の個人的利益の保護を目的とするものではないが、その目的はそれとして、実定法上、住民としての各個人に独自の訴権が与えられており、しかも、その共同の又は累次的な行使等につき格別の法的規整が存しない以上、右の法理につき、基本的に、異別に解すべきいわれはない。

ただ、住民訴訟においては、出訴期間が、訴訟の目的につき一律に規定されておらず、同一の請求についても、各住民により異なる場合がありうる(地方自治法第二四二条第二項第四項、第二四二条の二第二項等参照。)から、右法理の適用は、その関係において、若干の修正を免れないものといわなければならない。すなわち、共同訴訟参加をなしうる要件としての出訴期間は、参加の対象となる係属中の訴訟を提起した住民の監査請求及びこれに対する監査結果の通知の時点を基準として計算すべきであるが、他の住民がその独自の立場でした監査の請求及びこれに対する監査結果の通知の時点を基準として計算した出訴期間内にその者が右係属中の訴訟に参加したときは、その住民は、自己の権利の行使を怠らなかつた者として、共同訴訟人に準ずる地位を与えられるべく、その参加は、共同訴訟的補助参加と解するのが相当である。換言すると、一の請求につき、監査の請求を経て当事者適格を有する住民から訴が提起された場合、同一の請求については、他の住民は、たとえ監査の請求を経て当事者適格を有する場合でも、固より別訴を提起することはできず(地方自治法第二四二条の二第四項)、右係属中の訴じたいにつき本来存した出訴期間内に限り、共同訴訟参加をすることができるが、その期間を経過したときは、もはや共同訴訟参加をすることもできず、補助参加をすることができるにすぎない。しかし、その者が、みずからの手続において定められた出訴期間内に補助参加をしたものであるときは、その補助参加は、共同訴訟的補助参加の性質を有するものと解される。けだし、かく解することによつて、訴訟につき出訴期間を設けた趣旨と、手続を怠りなく進行させた住民の立場の保護を、両立させうるからである。

(三)  これを本件について見るに、成立に争のない甲第三三号証によると、第一審原告等による監査の請求に対し監査結果の通知が発せられたのは、昭和四四年三月一五日であつて、該通知は通常の書留郵便物の配達期間内に第一審原告等に到達したものと認められるから、同年五月一五日にされた参加人等の補助参加の申出(このことは、記録上明らかである。)に第一審原告等の本訴につき定められた出訴期間の経過後にされたものと解するほかない。

ところで、他面、参加人松原京子、同臼井信、同森富子及び同黒田秀俊を除く参加人四六人が、その主張のとおり、同年三月六日又は同月二七日に本件事案につき監査委員に対する監査の請求をしたこと、該請求に対し同年四月三〇日監査委員から監査結果の通知が発せられ該通知が通常の書留郵便物の配達期間内にそれぞれ右参加人等に到達したことは、当事者間に争がないから、右参加人等じしんの訴提起に関する出訴期間は、地方自治法第二四二条の二第二項第一号の規定により、右通知を受けた日から三〇日以内ということになり、右参加人等の前記補助参加の申出が、その期間内にされたものであることは、計数上明らかである。従つて、前述の法理により、右参加人等の補助参加は、共同訴訟的補助参加の効力を有するものといわなければならない。

四  なお、前記参加人四六人の中に、東京都中野区から転出し、すでに同区の住民でなくなつた者のあることは、当事者間に争がないけれども、もとより右四六人の参加人全員が同区から転出したわけではなく、現在なお同区の住民たるもののあることは明らかであつて、すくなくとも、それらの者が、現在なお共同訴訟的補助参加人たる地位を有することは、いうまでもないから、本件中間の争に関する限り、前記転出者の訴訟上の地位につき判断するまでもなく、本件には共同訴訟的補助参加人が存するものとして、第一審原告等による控訴取下の行為にかかわらず、本件訴訟は、なお、当審に係属するものといわなければならない。

五  よつて、主文のとおり中間判決する。

(裁判官 桑原正憲 寺田治郎 濱秀和)

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