東京高等裁判所 昭和46年(う)1420号 判決 1971年12月03日
本籍
山口県山口市黄金町一一六番地
住居
東京都大田区田園調布三丁目三五番七号
会社役員
河村三郎
大正一三年九月一六日生
右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和四六年四月二四日東京地方裁判所が言い渡した有罪判決に対し、検察官から適法な控訴の申立があつたので、当裁判所は、検事古谷菊次出席のうえ審議をし、つぎのとおり判決する。
主文
原判決中被告人に関する部分を被棄する。
被告人を懲役一年に処する。
但し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
本件控訴の趣意は、東京地方検察庁検察官検事高瀬 二作成名義の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人竹原精太郎および同伊沢安夫共同作成名義の答弁書記載のとおりであるから、これをそれぞれ引用し、控訴職意対して、当裁判所は、つぎのとおり判断する。
所論に徴し、本件訴訟記録および原審において取調べた証拠に現われている事実を精査し、且つ当審における事実調の結果に基いて考察するに、本件犯行は、納税の手段方法として売上の一部を除外して簿外預金を設定し、あるいは仕入の水増を行なつて架空の未払金を計上するなどの工作をなし、またそのほ脱税額は一億四、一六五万四、九〇〇円の多額に達している。しかも被告人は、三共開発株式会社の代表取締役として本件脱税の事実を単に認容していただけではなく、積極的に脱税を行うよう指示していたのである。その責任は、重いといわなければならない。
本件犯行の動機が創業間もない右会社の運転賃金を捻出するためであり、また被告人に前科がなく、本件発覚後直ちに修正申告をなし、ほ脱金額について重加算税などを含めてこれを完納し、改悛の情を示し、今後適正な納税をなすことを約しているなど被告人に利益となるべきすべての事情を斟酌しても、なお、原判決の量刑は、軽きに過ぎると解せられる。論旨は、理由がある。
よつて、本件控訴は、理由があるから、刑事訴訟法第三九七条第一、二項第三八一条により原判決中被告人に関する部分を被棄し、同法第四〇〇条但書により更に本件について判決をすることとする。
原判決の適法に確定した事実に法令を適用すると、被告人の原判決所為は、法人税法第一五九条第一項に該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、なお犯罪の情状刑の執行を猶予するのを相当と認め、刑法第二五条第一項によりこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長判事 三井明 判事 石崎四郎 判事 四ツ谷厳)
別紙第一 修正損益計算書
三共開発株式会社
自 昭和42年6月1日
至 昭和43年5月31日
<省略>
<省略>
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別紙第二 税額計算書
<省略>