大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(う)3157号 判決

被告人 出江進 外一名

〔抄 録〕

被告人両名の右暴行が強姦罪における実行の着手にあたるものであるかどうかについて検討を加えると、前記認定のように、被告人両名は、深夜一人で通行中の未知の婦女を認め、被告人出江の運転する自動車内に連れ込んで強いて姦淫しようとの意思を相通じたうえ、約一五〇メートルも執拗に尾行し、同女の進路を塞ぐようにして自動車を停止させ、同車内に連れ込もうとして右のように暴行を加えたが、同女も同車内に連れ込まれたならば強姦されることは免かれないと感じて必死に抵抗し、同女の助けを求める叫び声を聞きつけて近隣の者などが出て来たため同女を自動車内に連れ込むことができなかったものであって、被告人両名の強姦の意欲は激しかったことが認められる。もとより婦女に対し暴行を加えて自動車内に連れ込み他所に連行したうえ姦淫しようとする場合には、最初の暴行と姦淫との間には、時間的場所的に間隔がある。しかし、被告人両名が被害者を自動車内に連れ込もうとして暴行を加えた場所は、熱海市街内とはいえ、国道一三五号線の裏手の幅員の狭い市道であり、しかも、深夜であって閑静な住宅地にあり人通りはなく、その際自動車は近くに停止してあり、同自動車内には同僚の若者五名が乗車していて、被告人両名の暴行を制止することなく待機していたのであり、しかも、同自動車は九人乗りのものであって、被告人両名および右五名の同僚のほか被害者一人を乗車させ、同車内でも姦淫行為がなされる余地が十分にあると認められ、自動車のもつ機動性、密室性、同所近辺の地理的状況等を考慮すれば、そのとき被害者を自動車内に連れ込んでいたとすれば、間もなく同所から遠くなく人目につかない場所に同車を移動させたうえ、同車内等で強姦の結果が発生するに至るであろうことは、ほとんど確実であったといえるのである。このような被告人両名の強姦の意思の強固さ、被害者との関係、暴行の時刻・場所・態様・程度、連れ込もうとした自動車の停止場所、大きさ、構造等を総合して考察すれば、被告人両名が被害者を自動車内に連れ込もうとして暴行を加えた段階において、すでに強姦に至る客観的危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当である。

(堀 平野 林)

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