大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和46年(う)444号 判決 1971年11月16日

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は、全部被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人斉藤一好、同徳満春彦、同丸山武が連名で差し出した控訴趣意書に記載してあるとおりであるから、これを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断をする。

控訴趣意第三点(住民基本台帳法の違憲性、法令適用の誤)について。

所論は、住民基本台帳法による住民票は、刑法一五七条一項(控訴趣意には刑法一五六条一項とあるが、同法一五七条一項の誤りと認める。)にいう権利義務に関する公正証書に当らないというのであるが、右住民票は、公務員が職務上作成する文書であつて、権利義務(公法上の権利義務をも含む)に関するある事実を公的に証明する効力を有するから、右条項にいう「権利義務に関する公正証書」に当ると解するのが相当である(最判昭和三六年六月二〇日刑集一五巻六号九八四頁参照)。所論は、住民基本台帳法は憲法一一条、一三条、二二条一項の規定に違反すると主張するが、右主張は独自の見解に立つもので、採用のかぎりでない。また、住民基本台帳法による住民票が刑法一五七条一項の権利義務に関する公正証書にあたるとして原判決が原判示第一の事実に右条項を適用したのは正当であり、憲法三一条の規定に違反しないことはいうまでもない。結局、原判決には所論のごとき法令適用の誤りはない。

よつて、刑訴法三九六条、一八一条一項本文により、主文のとおり、判決する。

(その他の理由は省略する。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例