大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和46年(ネ)1622号 判決 1973年8月30日

控訴人(原審昭和四二年(ワ)第九九二号事件被告、同年(ワ)第一、五〇二号事件原告) 東京商工物産株式会社

右訴訟代理人弁護士 八木忠則

被控訴人(原審昭和四二年(ワ)第九九二号事件原告、同年(ワ)第一、五〇二号事件被告) 藤本産業株式会社

右訴訟代理人弁護士 旦良弘

右訴訟復代理人弁護士 伊藤正義

主文

一、原審昭和四二年(ワ)第九九二号事件につき、原判決主文第一項を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し金六七万九〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年二月一二日から右完済まで年六分の割合による金員を支払え。

被控訴人その余の請求を棄却する。

二、原審昭和四二年(ワ)第一五〇二号事件につき、控訴を棄却する。

三、訴訟費用は、右両事件の第一・二審を通じて、すべて控訴人の負担とする。

事実

(当事者双方の申立)

一、控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。原審昭和四二年(ワ)第九九二号事件につき、被控訴人の請求を棄却する。原審昭和四二年(ワ)第一、五〇二号事件につき、被控訴人は控訴人に対して金一七八万九、四二三円およびこれに対する昭和四二年三月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求めた。

二、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

(当事者双方の主張)

当事者双方の事実上・法律上の主張は、次に附加訂正するほかは原判決事実摘示(原判決四枚目表一・二行に訴状送達の日の翌日である「昭和四二年二月一一日」とあるは、「昭和四二年二月一二日」の誤記と認めて、そのように訂正する。)のとおりであるから、これをここに引用する。

一、控訴代理人の陳述

一、(一)控訴会社が被控訴会社に納入を求めた真鍮キヤビネット・ラッチ(引掛金具)は、控訴会社によって輸出用に向けられるものであり、控訴会社の受注先である米国ウオーカー社指定の者による納品検査に合格しなければ、信用状による控訴会社への入金が得られないものであった。このことについては、控訴会社が被控訴会社との間の契約を締結するための交渉の過程で話合いと了解がなされていた。したがって、被控訴会社と控訴会社の間のラッチ納入契約においては、目的物が前述の納品検査に合格することが、被控訴会社に対する代金支払の条件をなす、という内容のものである。ところが、被控訴会社の納入したラッチ一万五、〇〇〇セットはすべて後述のように、ウオーカー社指定の日本駐在シヤノンまたは杉田某による検査に合格しなかったのであるから、控訴会社が被控訴会社にその代金を支払う義務はない。

(二)本件ラッチ納入契約は、控訴会社が被控訴会社に見本を示してその製造を注文したのであるから、それは民法上の請負に属する一種の製作物供給契約であり、商人間の売買について規定した商法五二六条の規定の適用はない。そして、右請負についての民法六三七条の規定によれば、契約の解除および損害賠償の請求は目的物の引渡を受けた時から一年内にすることができるのであるから、控訴会社が本控訴事件の第一審である昭和四二年(ワ)第一、五〇二号事件の訴状をもってなした契約解除の意思表示および損害賠償の請求は適法である。

(三)仮に、本件ラッチ納入契約が商人間の売買として商法五二六条の規定の適用を受ける取引であるとしても、買主である控訴会社は、売主である被控訴会社に対し、直ちに目的物に瑕疵のあることを通知した。

すなわち、控訴会社は、最初の一、六〇〇セットのラッチが納入された昭和四一年一二月一六日にシヤノン検査員をして検査させたところ、ラッチの表面が汚れていて、傷がある、軸受の頭の傷がとれていないとの理由で不合格の告知を受け、一見してその不完全さがわかる品物の瑕疵を指摘されたので、直ちに、控訴会社の日野建をして電話で被控訴会社の総務部長下条良太郎に右不合格の事実とその理由を通知させた。また、残りの一万三、四〇〇セットについては、不合格になった右一、六〇〇セットの代りに輸出すべく、同年一二月二二日ころうち二、〇〇〇セットをパフがけして被控訴会社から受取り、控訴会社が指定した日本電着工業でラッカー塗装をして完成品としたうえ、同月二三日ころ前記シヤノン検査員の検査を受けたところ、その結果は最初の一、六〇〇セットに比べてパフの洗いがなされたことは認められたものの、そのほかの点では前と同様の瑕疵があるとの理由でこれも不合格となったので、控訴会社は、即日右日野建をして前回同様電話で、被控訴会社の前記下条にその旨を通知させた。その後同月二四日から二九日にかけて、控訴会社不知の間に、控訴会社が被控訴会社に紹介してパフがけを受持たせていた深沢製作所に被控訴会社が一万一、四〇〇セットを持ち込んだのを、翌昭和四二年一月五日に同製作所からの通知で知ったので、同月六日ころ前記日野建をして、従前の瑕疵がなおらない限り検査の合格はありえないから代金の支払はしない旨電話で通知させた。

したがって、控訴会社の契約解除、損害賠償の請求は右瑕疵の通知を前提とするものであって、適法である。

(四)、仮にまた、前項の瑕疵の通知がなかったとしても、被控訴会社が納入した本件ラッチの瑕疵は、いずれも素人目で一見してわかるほどはっきりしたものであって、被控訴会社はあらかじめその瑕疵を了知していたのであるから商法五二六条二項の規定にいう悪意の場合に該当する。したがって、右契約解除、損害賠償の請求を妨げない。」

二、被控訴代理人の陳述

「(一)、原判決事実摘示(昭和四二年(ワ)第九九二号事件の請求原因)の一項七行目に「金三六円六〇銭」とあるのを「金三七円六〇銭」と訂正する。

(二)、控訴人の当審主張(一)の事実は否認する。

(三)控訴人の同(二)の主張は争う。本件ラッチ納入契約は商人間の売買であるから、当然商法五二六条の規定の適用があり、それが民法上の請負契約であるとして同条の適用を免れようとする右控訴人の主張は失当である。

(四)、控訴人の主張同(三)および同(四)の事実はいずれも否認する。

そもそも、本件ラッチ納入契約については、当初は被控訴会社がパフがけをしないで一セット当り三八円八〇銭の単価で控訴会社に納入する約束であったところ、その後控訴会社からパフがけをせよとの注文があって、そのパフがけを控訴会社の紹介した前記深沢製作所に依頼することとなり、パフがけをして納入したが、今度は、パフがけではあがりが悪いのでそれをしないでそのまま納入してほしいと話が変ったので、結局一セット当りの納入単価が三七円六〇銭となり、こうして、パフがけをした最初の一、六〇〇セットに次いで、二、〇〇〇セットを納入したが、残りの一万一、四〇〇セットはパフがけをしないで納品することになったものであり、その間控訴会社からはその主張のような瑕疵の通知はもちろん、何らのクレームもなかったのである。もとより、被控訴会社は控訴会社の指示に従ってラッチの製作、納入を行なって来たもので、控訴人の悪意の主張も失当である。」

(証拠関係)<省略>

理由

一、昭和四一年一〇月一二日ごろ、被控訴会社と控訴会社の間で、被控訴会社が控訴会社に対して代金支払は納品後一〇日以内の約束のもとに真鍮キャビネット・ラッチを製作のうえ売渡す旨の契約が成立した事実は当事者間に争いがなく、また、その納入数量と単価については、控訴会社が少なくとも一万五、〇〇〇セットの納入を依頼し、一セット当り三八円八〇銭(のちに減額して三七円六〇銭)を下らない限度で約定したことは当事者間に争いのないところである。そして、被控訴会社が、そのうち一、六〇〇セットのラッチを遅くとも同年一二月一六日に、また、一万三、四〇〇セットのラッチを遅くとも同月二七日までに控訴会社に納入した事実は控訴会社において認めて争わないところである。

二、<証拠>を総合すると、本件取引の経過に関し次のような事実を認めることができる。

(一)被控訴会社はハトス・ホック・カシメ・カバン類の附属金具一式を扱ういわゆる問屋であり、控訴会社はプラスチック、紙関係、金属加工製品等の販売、輸出を業とする会社であること。

(二)被控訴会社は控訴会社から昭和四一年九月の中頃より何回かにわたって見本(検甲第一・二・四号証、検乙第二号証)を示され、キャビネット・ラッチの製作・販売方の引合いを受け、その見積り金額を提示したこと。

(三)そして、同年一〇月一二日に右ラッチ一万五、〇〇〇セットをパフがけしてラッカー塗装仕上げすること、代金は一セットにつき四〇円、納期は同年一一月一五日、型代金一一万五、〇〇〇円は、控訴会社が引き続き一〇万セットを注文しない場合に控訴会社において負担する旨の契約が控訴、被控訴会社間に成立したこと。

(四)被控訴会社は、少なくともそのころまでに、右ラッチが海外に輸出される商品であって、控訴会社あて外国商社の支払いのためにするL/C(商業信用状)が組まれているものであることを知っていたこと。

(五)被控訴会社は、同年一一月中旬ごろ、予定より遅れて控訴会社に製品見本を提示し、その後同年一二月一日ころ、控訴会社との間で、その納期を一、六〇〇セットにつき同年一二月一五日、一万三、四〇〇セットにつき同年一二月二五日まで延期する旨の諒解を得たこと。

(六)被控訴会社はそれでも予定どおり下請人によるラッチの製造が進捗せず、パフがけも控訴会社の手配した深沢製作所に依頼することになって、その単価の代金も結局前記のように一セット当り三七円六〇銭に減額する結果になり、こうして、昭和四一年一二月一六日に至って、パフがけをしてラッカー塗装をした最初の二、六〇〇セットを控訴会社に納入し、残り一万三、四〇〇セットについては、うち二、〇〇〇セットは右同様パフがけ、ラッカー塗装をして納入する結果になったものの、その余は、パフがけをしないでよいという控訴会社の指示で、同月二七日ころまでに深沢製作所に納め、控訴会社に対する引渡を終えたこと。

(七)右ラッチ納入の結果は、さきの一二月一六日納入分の一、六〇〇セットについては、同日ころ米国ウオーカ社指定のシヤノン検査員の検査で、ラッチの表面に汚れがあり、軸の頭の部分に傷が残り、かしめがないなどの点から不合格となり、また、そのあとの二、〇〇〇セットについては同月二三日ころの検査で、表面の汚れはなくなったもののそのほかの点では同様の欠点があって不合格となり、結局控訴会社はラッチ一万五、〇〇〇セット全部の輸出を断念せざるを得なくなり、ラッカー塗装のしてない残余の分も後日日本電着工業に依頼し、控訴会社が保管していたこと。

(八)控訴会社は昭和四二年一月一六日付被控訴会社あての内容証明郵便をもって控訴会社が米国ウオーカー社から債務不履行を理由に損害賠償請求の通告を受けているなどの事情を附記したうえ、本件ラッチの検査不合格のためこれを納品できなかったこと等を理由に損害賠償を請求する旨催告を発し、他方、右ウオーカー社からは翌同月一七日付の書状で注文および信用状が取消になった旨正式に通告して来たこと。

以上の認定に反する部分の前掲下条良太郎、日野健の原審および当審の各証言、原審における控訴会社代表者本人尋問の結果は信用することができず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。

三、以下、控訴人の主張について順次判断する。

まず、控訴人は、本件ラッチはL/Cを組んだ輸出契約用のもので、当事者間における右ラッチ納入契約の内容としても、米国ウオーカー社の指定の者による納品検査に合格することがその代金支払の条件になっていた旨主張する。ところで、被控訴会社と控訴会社との間で昭和四一年一〇月一二日一万五、〇〇〇セットのラッチ納入契約が成立した時点において、そのラッチが輸出用のものでL/Cが組まれていたことを被控訴会社が了知していたことは前項(三)、(四)で認定したとおりである。しかし、右契約において、被控訴会社が控訴会社に引渡す商品について、控訴会社の仕向先である外国会社指定の検査員であるシヤノンまたは杉田某による納品検査に合格することが控訴会社による代金支払の条件である旨の明示もしくは黙示の合意があったことを認めるに足りる証拠はない。

四、次に、控訴人は、本件ラッチ納入契約が民法上の請負であって、商法五二六条の規定の適用を受ける商事売買ではないという。前認定したところによると、係争の契約は、付属品である各種金具一式の大口取引を業とする被控訴会社が雑貨の販売を業とする控訴会社の注文に応じて、外国向けにあてるものであることを知って、キヤビネット・ラッチの見本を示され、材料の全部をととのえ、これによって見本に適合する品物を少なくとも差当り一五、〇〇〇個製作したうえ、一個当りの約定単価を乗じた金額を代金としてこれを譲り渡すという内容であったというのである。思うに、このような契約は、一般に製作物供給契約と称されるものであるが、前掲検甲及び乙号各証ならびに弁論の全趣旨をあわせ考えれば、被控訴会社自らが目的物を製作するわけではなく、被控訴会社とかねて取引のある町工場で製作して供給するものであることが認められ、控訴会社は被控訴会社に目的物の見本を示したものの、その規格・形態等の点において特殊の用途にだけ用いられる性質のものであるという別段の事情の存したことの主張立証がないことにかんがみて、ラッチ一般の性状のものの代替的かつ大量の取引であることが窺われるから、係争の契約は、不特定物の売買に関する民商法の規定の適用を免れないものと解することが相当である。この点に関する控訴人の主張は理由がない。

五、そこで、更に、控訴人の契約解除、損害賠償請求の前提となる検査、瑕疵通知義務履行の主張について考察する。

被控訴会社が昭和四一年一二月一六日に納入したラッチ一、六〇〇セットが同日の検査で、また、その後納入したラッチのうち二、〇〇〇セットが同月二三日ころの検査で、いずれも不合格になったことは前認定のとおりである。右検査に立会ったという控訴会社の証人日野建は、当審における証言において、「右各検査の当日、いずれも被控訴会社の総務部長である下条良太郎に対して、その都度電話で不合格の旨を通知した。また、同月二八、九日ころも納入を受けたラッチを返品する旨の話を電話でしたと思う。」旨控訴人の主張に沿った供述をするのであるけれども、右供述部分はにわかに信用することができない。すなわち、右日野証人は、当審において初めてそのような証言をしたものであって、原審においては何らその片言を思わせる供述をしていないのである。もっとも、商法五二六条の規定による瑕疵通知義務履行の問題は、原判決が控訴会社の契約解除の主張、および損害賠償の請求を排斥する論拠として指摘し、当審において控訴人が初めて主張して攻撃防禦の的となった問題点であるけれども、原審においてはその瑕疵の存在、すなわち検査不合格の事実とその理由がもっぱら問題になっていたのであり、同証人は注文と異なる瑕疵があったと供述しているのであるから、取引上重要な被控訴会社に対する右通知の事実があったものならば、その旨の供述が何らかの形で関連してなされるのが自然である。そればかりでなく、これと対比すべき被控訴会社の下条良太郎は、原審証言において、控訴会社の注文が色々と変わり、その指示どおりに納品しているのに、何故紛争になったのかわからないと供述しているほか、当審証言においては、日野証人が証言するような検査不合格の通知は全く聞いていない旨供述しているのであり、現に右下条証人が被控訴会社の責任者として被控訴会社の取引関係一切をメモしたとみられる前掲甲第二号証(日誌)には、本件ラッチ納入の取引に関する注文、連絡事項等他の記載はあっても、納品について故障、異議の申出でがあった旨の記載は全く発見することができないのであり、右下条がこれを不利な事項としてことさら秘匿した事情も格別窺われないのであるから、これらの証拠資料に照らしても、前記日野証人の証言は採用しがたいものである。

ところで、控訴会社の納入したラッチの瑕疵が、パフがけをし、ラッカー塗装をしたその表面に黒い汚れや傷があって直ちに発見できるものであることは、控訴人の主張と前認定の事実(三の(七))に徴して明らかであり、本件ラッチ納入契約は合計一万五、〇〇〇セットにのぼる多数量の金具類を二回に分け、最初は一、六〇〇セットを、その一〇日後には残りの一万三、四〇〇セットを製作して引渡し、納品一〇日後には代金の支払を受けるという内容のものであったのであるから、その取引事情を勘案すると、右瑕疵の通知は遅くとも一週間以内になすべきものと解するのが相当であり、前示日野証人の証言が信用しえない以上、控訴会社が前認定の昭和四一年一二月一六日および二三日ころにした納品検査後直ちになすべき瑕疵の通知を怠ったとみるのはやむをえない。したがって、この点の控訴人の主張も採用するに由ない。

六、控訴人は、また、右瑕疵について被控訴会社に悪意があったと主張する。

しかしながら、前掲柳田守行、大工原恵一郎の原審各証言下条良太郎の原審および当審各証言によると、本件ラッチに関する控訴会社側の見本の呈示は再三にわたるもので、特にパフがけに関する注文は再度変転し、これを担当した控訴会社の日野建の指示も必ずしも明確なものでなかったと見られるばかりでなく、むしろ、その注文の内容は、製作者側の常識からすると特別注文に属するもので、その指示が徹底を欠いていたものであることを認めることができ、その他の関係証拠によっても、納入したラッチについて、被控訴会社が控訴会社の注文、指示と特に異なることを認識していたことを認めるに足りない。すなわち、控訴人の右悪意の主張も肯認することができない。

七、以上の次第であるから、控訴人の本件ラッチ納入契約解除の主張、これに基づく損害賠償の請求は理由がなく(ただし原判決が昭和四二年(ワ)第一、五〇二号事件について認容した控訴人の被控訴人に対する金一万三、一七〇円およびこれに対する損害金の請求については、被控訴人から控訴による不服申立がないから、これを維持するほかない。)、被控訴人は控訴人に対して、前記一項および三項の(三)で認定した本件ラッチ納入契約および附帯の型代金支払に関する合意に基づき、納入したラッチの代金合計五六万四、〇〇〇円および右合意による型代金一一万五、〇〇〇円、計六七万九、〇〇〇円とこれに対する、被控訴人の昭和四二年(ワ)第九九二号事件訴状が控訴人に送達されたのは、昭和四二年二月一一日であることは、記録上明らかであるから、その翌日である同年同月一二日以降右完済に至るまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める権利がある。

しかるところ、原判決は、右昭和四二年(ワ)第九九二号事件につき、被控訴人の申立である右請求の範囲を超えて、遅延損害金につき昭和四二年二月一一日以降の金員の請求を認容(もっとも原判決は、被控訴人が訴状の送達によって付遅滞の責に任ずべき旨、被控訴人の主張を指示しながら、理由中では、これと異なる理由づけをもって肯定している。)しているので、その起算日である二月一一日の一日分についての請求は、失当であり、この点で原判決は変更を免れない。

しかしながら、原判決が昭和四二年(ワ)第一、五〇二号事件につき控訴人のその余の請求(前掲本項冒頭の括弧内に判示したところを除く部分)を排斥したのは相当であるから、右事件に関する右請求部分については控訴人の控訴を棄却することとする。

よって、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九二条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中西彦二郎 裁判官 小木曽競 深田源次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例