東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2021号・昭47年(ネ)2271号 判決
三、そこで、同倶楽部理事会の承認のない会員権の譲渡の効力について検討するに、≪証拠≫によれば、本件会員権譲渡の当時における戸塚カントリー倶楽部には本件ゴルフ場を所有し経営する神奈川開発観光株式会社(以下訴外会社という。)の委嘱にかかる理事・幹事等の役員が置かれており、理事長は同倶楽部を代表し、理事会は理事をもって構成され倶楽部運営に関する基本的事項を協議決定すること等が定められ、一応団体としての形式・外観を備えているが、他面において会員総会等の会員の意思表明機関を具備せず、また倶楽部の収入の一切はこれを右訴外会社に提供し、訴外会社はこれをもってゴルフ場施設の整備運営並びに倶楽部の通常経費に充当することと定められていて(会則第一九条)、その管理処分の権限のないのは勿論倶楽部固有の財産もなく、従ってその財産管理に関する事項も定められていないこと、倶楽部の運営は訴外会社の計算において行われ、会員は倶楽部を介して本件ゴルフ場施設を利用していることなどが認められ、これによってみれば、同倶楽部はそれ自体独立して権利義務の主体たるべき社団の実態を有しない、いわば任意団体とみるべきであって、会員の入退会、その他旧会則所定の事項は挙げて同倶楽部を代表し会務を総攬する理事長の権限に委ねられ、理事長は右訴外会社の代行機関としてこれらの事項を処理するものと解するほかはない。
しかして、本件会員権は、訴外会社の代行機関たる同倶楽部理事長に対し旧会則承認のうえなされる入会申込と、旧会則所定の手続によるこれが承認のもとに締結される契約上の地位であって、それは、入会とともに預託される入会保証金に関する法律関係(会員にとっては入会保証金返還請求権)並びに同倶楽部の会員資格に伴う旧会則所定のゴルフ場施設の優先的利用権等の権利および年会費納入等の義務を包括する、訴外会社と会員との間の債権的法律関係と解するのが相当である。<中略>
四、しかして、前記のごとく旧会則(会則)第七条には「会員は理事会の承認を得て入会保証金を譲渡することができる。」旨定められているが、ここにいう「入会保証金の譲渡」とは右に述べた契約上の地位すなわち会員権の譲渡を指すものと解せられ、右の契約上の地位の譲渡については必ずしも控訴人主張のごとき三面契約によることを要せず、譲渡禁止の特約の存しない以上これを自由に譲渡し得べき道理であり、会員権譲渡の当事者間では右譲渡により会員権移転の効力を生ずるものと解するのが相当である(最高裁昭和三〇年九月二九日第一小法廷判決、民集九巻一〇号一四七二頁参照)。もっとも訴外会社に対する関係においては、前記規定の定めるとおり会員権の譲渡につき同倶楽部理事会の承認を要し、これなき限りその譲渡の効力を生じないと解すべきである。
(久利 井口源 舘)