大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2805号 判決

(一) 前記認定のごとく沢田の大滝、原口、佐藤三名に対する暴行傷害行為は酒席の上でのこととはいえ、自ら口論の端緒をつくり独り激昂興奮し、佐藤、大滝の制止をもきかず右両名に対し傷害を与えたものであり、原口に対しては偶発的とはいえ特段の理由もなく殴打したものであるのみならず、弁論の全趣旨によれば、沢田の本件傷害行為その他一連の行動は自己が組合長であるという思いあがりから、上司を軽んずるごう慢不遜の心情に由来するものと推認するに難くなく、右行動が十分非難に価するものであることは明らかである。

(二) しかし懲戒解雇は労働者を当該企業から終局的に追放排除するという最も過酷な制裁であるに止らず、これをうけた労働者にとっては他に職場を求めるについても、少なからざる不利益をうけ、再就職の門を狭まれるものであるから、雇傭者がこれを行使するに当っては、事の重大性にかんがみ、その処分が公正かつ妥当性を有するかについての社会的、客観的批判に堪えうるよう慎重に配慮しなければならない。本件の場合、従業員同志の、しかも酒席における暴行傷害事件であり、傷害といってもその程度は比較的軽微であり(≪証拠≫によれば、一番傷が重いと認められる佐藤は被控訴人の処罰を希望していないことが疎明される)、≪証拠≫によれば、被控訴人が本件以前に同様の事件を起したことはなかったことが疎明されるから、控訴人としては、被控訴人や佐藤からも十分事情を聴取した上、特別の事情のない限り、直ちに被控訴人を懲戒解雇することなく、厳重注意して将来を戒め、または、解雇以外の懲戒処分をすることにより被控訴人に対しもう一度反省の機会を与えることが相当と認められる。

しかるに控訴人は、解雇をいそぐあまり、大滝、原口の両名から事情を聴取したのみで、佐藤、沢田の両名に対しなんら事の真否をただす、とくに沢田の弁明を徴することなく、またアサノ連合労組との事前の協議も充分つくさず(当審証人阿部重勝の証言からも窺えるところである)、本件事件の翌日の夕刻には解雇通知の手続を了するという異例とも思える措置をとったのである。

そこには労働者を懲戒解雇するにあたり当然考慮されるべき前記のような事柄について全く配慮された痕跡は認められない。もちろん、事柄の性質上右のごとき配慮を必要としない場合があることも否定し難いが、前記のような事情に過去においてこれに類似した事件によっては懲戒解雇された事例が認められない事実(≪証拠≫)を考えあわせると、本件解雇は、労働者の利益を著しく侵害するものであり、その意味において解雇権の濫用にあたり無効であると判断せざるを得ない。

(田嶋 加藤 園部逸)

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