大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2999号 判決

被控訴人は、さらに、商法二三条の類推適用または禁反言の法理により本件手形につき控訴人が責任を負う旨の予備的主張をするのでこの点について判断することとし、まず、本件手形が振出された当時の事情について検討する。

原審控訴人・被控訴人各本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。即ち、

控訴人の夫である訴外上島圭三は昭和四五年二月頃当時被控訴人に対し負担していた債務弁済のために金額を一七八七万円とする約束手形を振出し交付した。被控訴人はその頃右圭三は金融機関に当座預金の口座を開設していないことを知っていたが、債権の回収をはかるにはあった方がよいという考えでこれを受領し、その翌日頃控訴人が品川信用組合世田谷支店に当座預金の口座を開設していることを確かめた上右圭三に対し控訴人の手形と切替えてほしいといって本件手形の交付を受けた。一方、控訴人は品川信用組合世田谷支店に当座預金の口座を開設し手形用紙の交付を受けていたのであるが、その手形用紙および控訴人が右金融機関に印鑑届をしてある印章を右圭三が使用し、再再控訴人名義で手形を振出していることを知っておったが格別の防止策を講じなかった。そして、被控訴人から本件手形を落してくれるよう念を押された際にも控訴人は主人(上島圭三)に任せてあるからといっていた。

右認定の事実によれば、控訴人は訴外上島圭三が、控訴人の氏名を用いて手形行為をすることを黙認していたものであり、被控訴人は本件手形が控訴人により振出されたものと信じてこれを受領したものと認めるのが相当である。前掲控訴人本人尋問の結果中右判断と趣旨を異にする部分があるが、右は措信しがたく他に右判断を左右できる証拠はない。

そうすると、禁反言の法理にその基礎をおくものと解せられる商法二三条が本件について類推適用せられ、控訴人は本件手形についてその支払の責に任ずべきところ、本件手形を被控訴人において満期に支払場所に呈示したが支払拒絶せられたことは当事者間に争いないから、被控訴人が控訴人に対し、本件手形金の内金一一八九万二〇〇〇円およびこれに対する本件手形の満期日である昭和四五年二月二五日から右完済まで手形法所定の年六分の割合による利息の支払を求める本訴請求は理由がある。

(谷口茂 綿引 宍戸)

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