東京高等裁判所 昭和46年(ラ)270号 決定
案ずるに本件記録によると、抗告人は原決定添付別紙目録記載物件の所有者であつて、いわゆる利害関係人に該当するところ、同人に対する昭和四六年三月一九日午前一〇時の本件競売期日の通知は普通郵便によつてなされたこと、そして右通知は東京都北区赤羽台一丁目三番一五棟四〇三号渡辺和知方に送達されて同人により受領されたことが認められる。しかして記録三丁目貼付の付箋によると、右通知が右渡辺方において送達されるにいたつたのは、昭和四五年一〇月一九日右渡辺方を抗告人の送達場所とする旨の電話連絡があつたことに基づくものと推認されるが、この電話連絡が抗告人によつてなされたものであることの的確な証拠はなく、また渡辺方に送達された右通知が抗告人に連絡されて抗告人が右競売期日を知つたと思われる形跡もないので、右電話連絡によつてなされたと推認される競売期日の通知を有効とすることはできない。
そうすると抗告人に対しては本件競売期日を通知しなかつたことに帰着する。ところで競売法第二七条第二項は、競売期日はこれを利害関係人に通知しなければならない旨を定め、競売期日に直接の利害関係を有する利害関係人の保護を図つている。これはとくに民事訴訟法による強制執行とは異なり、債務者以外の者が他人の債務のために自己の所有権を喪失する場合のあること等競売法の特質に根ざすものであつて、競売の期日の公告のほかとくに競売期日を利害関係人に直接通知することによつて、これら利害関係人の手続参加の機会を保障したものである。従つて前記物件の所有者である抗告人に対し右競売期日を通知しなかつた本件競売手続は違法であつて、右手続による競落はこれを許すべきものではない。もつとも競売法第三二条第二項において準用する民事訴訟法第六八一条第二項、第六七二条各号中には直接競売期日の通知を缺くこともあつて競落不許の理由とする規定はないけれども、前記のような競売法の特質にかんがみるときは、右の違法はひろく同法第六七二条第一号の競売を許すべからざる場合の一と解すべきである。よつて本件競落許可決定はこれを取消し、競落不許の宣言をなすべきである。
(浅沼 岡本 田畑)