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東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)133号 判決

一 本件の争点は、B発明とC発明とが同一発明であるかどうかである。まず、B発明は半サイズ映画フイルム映写機の発明であるから「物」の発明であり、C発明は映画フイルムの半量節約撮影および映写方法の発明であるから、「方法」の発明であつて、そのカテゴリーは相違する。しかしながら、発明によつては同一技術思想を方法の発明または物の発明のどちらで表現してもよい場合があるから、単にカテゴリーが相違するというだけで、両発明を同一でないと断定することはできない。結局両発明が同一かどうかを判断するためには、両者の構成ないし目的、作用効果を比較する必要がある。

二 構成要件の比較

B発明の構成要件が前記第二、二、(二)、のとおりであることは、当事者間に争いがない。

また、C発明の構成要件は、前記第二 三の当事者間に争いのないC発明の要旨から次のように分説することができる。

(イ)´ 生フイルムを、被写体の左右方向に対し、上下(歪像レンズによる横方向圧縮を含む)方向に<省略>に圧縮された歪像(正像を含む)を得るように歪像光学系を使用して露光し、

(ロ)´ このフイルムを現像してフイルム上に上下方向に圧縮された歪像(正像を含む)を一駒に形成したフイルムとし

(ハ)´ この画像を、その像の圧縮された歪像(正像を含む)に逆比率をもつて伸長復元するよう映写機の歪像光学系(広角度球面映写レンズを含む)を使用してスクリーン上に正像を映写するようにする。

(二)´ 映画フイルムの半量節約撮影および映画方法

なお、前記C発明の要旨によれば、C発明における歪像工程と正像工程とは択一的なものであることが明らかであるから、正像工程に関する構成要件のみをとり出して、B発明の構成要件と対比してさしつかえない。

そこで両者を対比すると、B発明は、C発明の正像工程に関する構成要件中の(イ)´(ロ)´のような撮影、現像の工程に必要な装置を構成要件として全く欠いていることが明らかである。したがつて、B発明の映写機を使用した場合には、C発明の正像工程の方法のうち、映写段階の方法のみを使用することになり、その正像工程のすべての方法を使用したことにはならない。一方C発明の正像工程の方法を使用する場合には、B発明の装置のみでは、C発明の正像工程の方法の全工程を実施することができない。それ故、両発明の各構成要件の間には、一対一の対応関係が存在しないといわなければならない。審決はこれを見逃がし、C発明の正像工程の構成要件の一部である映写段階の方法のみを取り出し、B発明と対比している点で既に誤りを犯している。

さらに、両発明の共通部分である正像工程の映写段階に関する構成要件を対比しても、C発明は(ハ)´のように抽象的な技術であるのに対し、B発明はこの(ハ)´の正像工程の映写方法を実現するために(ハ)、(ニ)のごとく、特殊な具体的構成をその要件としているから、この共通部分においてさえ両者の構成に明白な相違が存在する。審決はこの点に関して前記第二 五の当事者間に争いのない周知技術の存在を前提として、C発明のごとく像を上下方向に<省略>に圧縮して映画フイルムを半量に節約するためには、B発明の(ハ)、(ニ)のように構成する必要が生じ、したがつて、B発明はC発明の映写段階の括弧部分を装置として単に取り出したにすぎず、格別の作用効果も認めることができない旨述べている。しかしながら、C発明においては、映写機の構造をB発明におけるように具体的に特定していないことは、さきに認定したとおりである。したがつて、C発明にはB発明の映写機の具体的構成が含まれていないから、前記周知技術を前提として考えても、B発明はC発明の中から映写段階に必要な部分を装置として単に取り出したに過ぎないということはできない。せいぜい考えられることは、前記周知技術を前提とすれば、C発明の映写段階において用いる映写機はB発明の映写機のような具体的構成にすることが必要であろうとの推測が可能であるというにとゞまる。

三 目的の比較

B発明の目的が前記第二、二、(三)のとおりであることは、当事者間に争いがない。一方成立に争いのない甲第二号証(C発明の特許公報)によれば、C発明の目的は、B発明のような映写機の提供にあるのではなく、映画における撮影、映写を通じ莫大な量のフイルムおよび関連機構、労力等の節約にあることが認められる。したがつて、両者の目的の間には明確な相違があるといわなければならない。

四 作用効果の比較

B発明の作用効果が、前記第二 二、(四)のとおりであることは、当事者間に争いがない。一方前記甲第二号証によれば、C発明の作用効果は、フイルム画面の寸法が縦方向に<省略>に短縮されることにより、一本の映写に必要なフイルムが従来の半分の量で足り、現像、焼付の工程およびその使用材料もそれに伴つて減少し、映写機の切換回数も従来の半分以下となり、フイルムの損傷、フイルム輸送費、労働量を減ずることができ、映画の製作費が節約できることにあると認められる。

そこで、両者を対比すると、B発明の作用、効果は映写機として特有の作用効果であるのに対し、C発明の作用効果は、縦方向に<省略>に圧縮された特殊映画フイルムを用いる映画方法特有の作用効果であるから、両者が相違していることは明らかである。

五 以上検討したところによれば、B発明とC発明とはその構成はもちろん、目的効果においてさえ相違し、わずかに、縦方向に<省略>に圧縮された映画フイルムを用いるという技術思想の一部が共通しているにすぎないから、両者を同一発明ということはできない。

六 してみると、両者が同一発明であることを理由として、B発明の分割出願を不適法なものとし、その出願日の遡及を認めず、ひいてはA考案についても出願日の遡及を認めず、結局A考案はC発明の後願となるという理由で実用新案登録を受けることができないとした審決の判断は誤りであり、違法であるといわなければならない。

よつて、その取消を求める原告の本訴請求は正当であるから認容する。

〔編註その一〕 本件におけるB発明の要旨、構成要件、目的、作用効果は左のとおりである。

(一) 要旨

画面が標準サイズより縦方向に半減されたフイルム面に構成されている正像をなす映画フイルムを映写するよう、フレームに球面映写レンズ系を装備したレンズ筒およびアパチユア区帯を設置し、前記映画フイルムを供給するマガジン、ローラ、駆動モーター等を含む手段を備え、前記アパチユア区帯にフイルムゲートに望み、これを通過する前記映画フイルムを輸動する標準映写機に対し、その駒送り回転数は等しくしかもフイルムの輸動量を半減するよう歯数を半数とした間けつスプロケツトを具備させ、また前記アパチユアにおいて標準のそれに対し、縦方向に半サイズに形成した窓孔を持つ窓板を具備して構成した半サイズ映画フイルム映写機の構造

(二) 構成要件

画面が上下方向に半減されたフイルム面に構成されている正像映画フイルムを映写するよう

(イ) 通常の(広角度球面)映写レンズ系

(ロ) この映画フイルムを供給するマガジン、ローラー、駆動モーターを含む手段

(ハ) アパチユア区帯に設けられ駒送り回転数は標準の駒送りと同じで、フイルムの輸動量を半減するよう歯数を半数とし、直径を小さくした間けつスプロケツト

(ニ) このアパチユアにおいて、上下方向に半サイズとしたアパチユア窓孔

を具備して成る半サイズ映画フイルム映写機

(三) 目的

縦方向に半分に短縮されたフイルム面に構成された画像を持つ映画フイルムを懸装して映写できるとともに構成簡単、堅牢、取扱軽快、騒音のない映写機を提供すること

(四) 作用効果

(イ) 前記半サイズ映画フイルムを所定区帯における所要駒送りを維持した状態で、少い量を輸動させてそのレンズ系により映画を映写することができる。

(ロ) スプロケツトも窓孔も窓孔板も半分となり、機構が簡単化され、かつ輸動部の作動も半分となるので機構、部材の損傷、損耗が著減され、耐久性が増加する。

(ハ) 運転が軽快となるのでその音も静かとなり、従来のように映写機に近い所にいる観客がややもするとフイルム輸動の音で画面から受ける情緒を壊わされるという欠点が少くなる。

(ニ) 既存の映写機を改造することによつても簡単に実施できる。

〔編註その二〕 本件におけるC発明の要旨は左のとおりである。

生フイルムを被写体の左右方向に対し上下(歪像レンズによる横方向圧縮の像を含む)方向に<省略>に圧縮された歪像(正像を含む)を得るように歪像光学系を使用して露光し、このフイルムを現像してフイルム上に上下方向に圧縮された歪像(正像を含む)を一駒に形成したフイルムとし、この画像をその像の圧縮された歪像(正像を含む)に逆比率をもつて伸長復元するよう映写機の歪像光学系(広角度球面映写レンズを含む)を使用してスクリーン上に正像を映写するようにすることよりなる映画フイルムの半量節約撮影および映写方法

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