東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)151号 判決
原告 稗田秀雄
被告 日本弁護士連合会
〔抄 録〕
原告は、原告が要求し、取得した金五万円は原告の保釈請求手続・身柄引受に対する報酬であって、かかる行為は国選弁護人としての当然の職務範囲外のものであって、これに対する報酬等は国から支給されないのであるから、右報酬の受領は非難されるべきものではない旨主張する。
しかしながら、国選弁護人は被告人その他のものから選任された弁護人がない場合に選任され、被告人のために、弁護活動をすべきことを委ねられるのであるから、被告人の弁護人としてなし得る一切の行為はすべて国選弁護人としてのその職務の範囲に属するものと解すべきである。国選弁護人と私選弁護人との間においてその職務の範囲に広狭の差はない。これと異なる原告の見解は採用できない。
なるほど国選弁護人に対し支給される報酬等の額は最高裁判所が一応の基準を定め、この基準に従って具体的事件について支給額が定められておるところ、右基準には特に弁護人が被告人のために保釈請求手続をし身柄引受行為をした場合の支給額についてよるべき基準を定めていない(当裁判所に顕著である。)けれども、右の基準はあくまでも一応の基準であって個々の受任事件の特殊性・弁護人の訴訟活動の程度等一切の具体的事情を斟酌して相当の額を支給することができるものとされ、実際にもそのような運用がなされている(この点も当裁判所に顕著である。)のであって、現実には本件のごとき保釈請求手続をし身柄引受行為をしたことは支給額の決定に参酌されない実情にあるとしても、その当否はともかく、それだからといって、右の各行為が国選弁護人の職務の範囲外のものと評価されなければならないものとはいえない。
(谷口茂 綿引 宍戸)