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東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)3号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 当裁判所は、以下述べる理由により、本件審決は本願考案と引用例との構造および作用効果上の差異を看過し、両者は同一のものであると誤認した違法があり、取り消されるべきものと判断する。

1 本願実用新案の公報によると、本願考案は、二連猟銃の発射装置において、第一発目のハンマーの動きで自動的に第二発目の発射準備を完了させることを目的とした二連銃の自動切換装置に関する考案で、その考案の要旨は、その明細書の「実用新案登録請求の範囲」の欄に記載のとおり、「ハンマー2及びこのハンマー2に係合している逆鉤3と、ハンマー12及びこのハンマー12に係合している逆鉤10と、前記の逆鉤3又は10に係合する振子5と、この振子5を逆鉤3又は10に切換え係合せしめるための安全子6を備え、ハンマー2又は12はその動作により上記振子5を他方のハンマー12又は2に係合している逆鉤10又は3に切換え係合せしめるものであることを特徴とする第一発目の発射動作による第二発目の発射準備を自動的に完了せしめる二連銃引金自動切換装置」にあるものと認められ、明細書の「考案の詳細な説明」の欄の記載によると、右の構造により、第一発目のハンマー2の作動で自動的に第二発目の発射準備を完了させることができるほか、第一発目が弾薬不良等で不発になることがあつても、一旦、引金を緩めて再び引くことによつて即座に第二発目を発射することができ、また、第一発目のハンマー2が動かないような機能不良のときは安全子6の移動操作により第二発目を発射しうるという作用効果を奏しうるものであることを認めることができる。

2 一方、引用例は、昭和三七年三月二七日出願公告にかかる「二連銃の連続撃発装置」に関する考案で、その構造は、引金2に枢着14し、発条15で前方に弾発せる頂上にU動板9を設けた鍵軸6の凹鍵11および鍵軸突起aを押上片5、5と係合自在かつ上下左右動するごとく架設し、押上片5、5'と一体なる押上段片13、13'の端部が撃金4、4'の撃金段片、12、12'に撃ばね8、8'を圧縮して係合可能とし、押上片5には鍵軸6と係合する先端と下部先端bを設けてなる二連銃の連絡撃発装置であり、この構造により、引金を引くと鍵軸が枢着部から上方へ押し上げられ、まず、鍵軸突起に係合する押上片の尖端もそのまま上方へ突き上げられ、これが一定限度まで突き上げられるとこれと係合していた撃金は撃発し、押上片の下部先端が鍵軸の脚を圧して鍵軸を外方へ突き、このため鍵軸突起と押上片の尖端ははずされて押上片は下方に逃げる。一発を撃発した引金を一時緩めると鍵軸がやや下降し、次の押上片の尖端が凹鍵の側面の長溝に係合し、二発目の撃発用意となり、連続発射が可能となり、また、一発目が不発に終わつても、引金を戻し、直ちに二発目の撃発を行なうことができる作用効果を挙げることが認められる。

3 右認定の本願考案と引用例の構造およびその構造に基づく作用効果を対比すると、本願考案におけるハンマー、逆鉤、振子および安全子が、引用例における撃金、押上片、鍵軸およびU動板にそれぞれ相対応するものであることは明らかであるが、本願考案においては、前認定のとおり、引金を引くことにより、まず、振子が押し上げられ、これにより逆鉤とハンマーとの係合がはずれるから、ハンマーは前方に倒れて撃針を撃つが、それと同時にハンマーの後方突出部は振子を後方にけりとばして、逆鉤と振子への係合がはずれ、二発目の発射準備を用意するのであるが、引用例においては、引金を引くことにより、鍵軸が押し上げられ、これにより押上片と撃金との係合がはずれ、撃金は撃発するが、鍵軸と押上片の係合をはずすのは、撃金(本願考案のハンマーに相当)自体ではなく、引金を引くことによる鍵軸の押上げに伴う押上片の下部先端の鍵軸に対する押圧力によることは、前認定の構造に照らし明らかである。したがつて、本願考案においては、引金を引く操作により、ハンマーが撃発を行ない、同時にハンマーが逆鉤と振子との係合を離脱せしめる関係にあるから、一発目の発射と二発目の発射準備は撃発に十分な引金を引く一操作だけで足るけれども、引用例の場合においては、押上片と鍵軸との係合離脱(二発目の発射準備)の関係は、押上片と撃金との係合を離脱(撃発)させるための引金を引く操作に引き続く引金操作によるから、撃発のための引金を引く操作だけでは二発目の発射準備とならない点で、本願考案と引用例とは、明らかに構造および作用効果を異にするものというべきである。なお、引用例において、押上片と撃金との係合の離脱(撃発)と押上片と鍵軸との係合の離脱(二発目の発射準備)を一致させること、つまり、撃発のためだけの引金を引く操作で第二発目の切換えを可能にするためには、そのような特別な設計を必要とするが、かような設計は技術的にみて極めて困難であるばかりでなく、引金操作の安全確実性を考慮した場合には実施困難なものといわざるをえない。

右のとおりである以上は、本願考案と引用例とをもつて同一の考案と認めることは、とうていできない。

被告は、両者の前示構造および作用効果の差異は、単に動作が伝わる部材の差異に過ぎず、時間経過における両者の作動は同一である旨主張するけれども、前説示のとおり両者はその構造および作用効果に顕著な差異があり、その差異は構造上の微差をもつて論じうべき性質のものということはできないから、被告の右主張は、採用するに由ない。

してみれば、本件審決が本願考案をもつて引用例のものと同一であるとしたのは、その判断を誤つた違法があるというべきである。

(むすび)

三 以上説示のとおりであるからその主張の点に違法があるとして本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、その理由があるものということができる。よつて、これを認容する。

(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)

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