大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)47号 判決

原告 荒野勇 ほか二名

被告 茨城県選挙管理委員会

〔抄 録〕

(11) 甲第三三号証は、第一行に「ミヤモト」、第二行に「イ」と記載され、甲第三四号証は、一行に「ミヤモト十イ」と記載されていることが認められる。原告らは、「イ」または「十イ」は「ナイ」であって、いずれも宮本候補に対する否定の意思を含んだ他事記載の無効票であると主張する。しかし、「イ」又は「十イ」は、「ジュウイ」すなわち獣医の表音で一部当て字を含むものとも解する余地があり、候補者宮本公望が獣医の資格を有すること、甲第三三、第三四号証がいずれも神栖町に存在した投票であることは当事者間に争いがなく、神栖村選挙管理委員会の検印部分は成立に争がなく、その余の部分は証人宮本公望の供述によって成立を認める≪証拠≫によれば、候補者宮本公望は、昭和二三年三月獣医師の資格を取得し、同年一一月から昭和四五年一二月の本件選挙当時まで神栖町(村)一円で獣医師として診療を続け、この間昭和四二年八月一五日の神栖村長選挙に村長候補者として立候補し、顔写真の下に「じゅうい」と記載したポスターを使用して選挙運動を行ったこともあり、本件選挙当時神栖町で普通には氏名を呼ばれないで獣医と呼ばれていたことが認められるから、前記「イ」又は「十イ」は、「ナイ」の意味で記載されたものではなく、宮本公望の氏にその職業である「獣医」を併記したものであって、その記載の態様などから全体的にみて、殊更に秘密投票制度の趣意を破る意図のもとに記載したものとは認められないから、いずれも同条五号但書に該当し、結局宮本公望に対する有効投票であると認められる。<中略>

(20) 甲第五八号証及び甲第五九号証がいずれも神栖町に存在したものであることは当事者間に争いがなく、甲第五八号証には「じうい」と記載され、甲第五九号証は、投票用紙の裏面に「ヂウイ」と逆さに記載されていることが認められる。ところで、一(一)(11)に前叙したとおり、候補者宮本公望は、本件選挙当時、普通氏名を呼ばないで獣医と呼ばれていたのであるから、右「じうい」、「ヂウイ」は、単に職業を記載したものではなく、神栖町における宮本公望の通称を記載したものと認めるべく、甲第五九号証が前示のとおり裏面に逆に記載されているものであることはそれ自体投票を無効ならしめるものではない。原告らは、宮本公望の父宮本貢も本沢彦の弟山口松雄も獣医であるから、甲第五八号証、甲第五九号証は、同条七号により無効であると主張するが、右獣医をあらわす各記載が単なる職業の記載ではなく、神栖町における宮本公望の通称を記載したものであることは前叙のとおりであるから、原告らの右の主張は採用し難く、甲第五八号証、甲第五九号証は、いずれも、候補者宮本公望に対する有効投票であると認める。

(吉岡 園部秀 兼子)

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