東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)71号 判決
一、本願発明の構成(三)の目的・作用効果
成立に争いのない甲第一号証(本願発明の特許公報)によれば、「本装置は、特に濾筒内に入る濾液と空気の排出を別にせずに一緒の混相揚送とし」たものであること、「回転濾筒6内に入る濾液と脱液のために入る空気とは、常に揚送管3開口下端30と液面f´との間の間隔Sの一定を保ちながら気液混相状態で一緒に排出される」ことが、本願発明の詳細な説明に記載されていることが認められる。そして、本願発明の図面とこれについての説明をてらしあわせると、濾筒6内の気液混相揚送管3から濾筒の軸芯を兼ねた水平固定管1を経て真空ポンプ2が連結されているが、水平固定管1から濾筒6内への開口は揚送管3の下端開口のほかには存在しないことも認められる。そうすると本願発明の構成要件(三)の構成と、その目的は明確に記載されているものといわねばならない。
さらにその作用効果について、同号証を検討してみると、本願発明は自由表面からの気液混相による液体連続揚送方法を応用した連続濾過装置であり、その方法は、濾筒内における液体の自由表面上の気圧と管内気圧とに差をもたせて、管下端と液面との間の空隙を通過して管内に流入する気流をおこし、その気流により濾過された濾筒内の貯溜液体をその自由表面から気液混相の状態で揚送させるようにしている。この作用により、本願発明はケーキの剥離性のよい濾過装置としては、澱粉等の原液濾過の機能において、従来この種装置を代表するものとしてのオリバー濾過機と何ら遜色がなく、またこれに比べてはるかに簡単・堅牢な構造となり、製作費が大幅に低下すること、またバードヤング型やツエーレン・ローゼス型のような従来機に比べて濾液用と空気用の二種のポンプを必要とせず、有効濾過圧において優れており、すなわち最少限の動力によつて経済的に処理できる。以上の事柄が本願発明の明細書に記載されていることが認められる。
そうすると本願発明は、その構成要件(三)により、原告の主張するような目的・作用効果があり、本願明細書に明かに記載されていることになるから、明細書中にその記載がないとして、その目的・作用効果を無視した審決の判断は、誤つているといわなければならない。
二、引用例の構成
引用例の技術内容として本願発明における構成要件(一)、(二)、(四)、が存在すること、また(三)の構成要件に関連しては、別の廃気排出口が記載されていることは、いずれも争いがない。ところで成立に争いのない甲第二号証(引用例)によれば、引用例の濾過装置には、濾液ポンプと真空ポンプとが別個に設けられており、濾液ポンプからの配管が濾筒内の水平固定管の区画に連結されていること、水平固定管の一区画に濾筒内への開口が設けられていること、また水平固定管の一区画から垂下して設けられた揚送管の下端開口が濾液の自由表面下に没した状態になつていることが、それぞれ明確に示されている。従つてこれは、濾液は濾液ポンプで、濾筒内の廃気は真空ポンプにより、それぞれ別々に排出される構造のものと認められる。そして別の廃気排出口が存在する条件のもとに気液混相揚送ができるためには、廃気排出口の断面積が揚送管(垂直管)の断面積よりかなり小さいことが必要であり、その限度をこえると、気液混相揚送は不可能となることは争いがない。しかもそのことから、このような条件のもとで気液混相揚送を行うためには、本願発明のそれに比してかなり余分な吸引力、すなわち動力が必要となることは、おのずから明かなところである。
そうすると、引用例の装置は、濾筒内に濾液排出の導管のほかに廃気排出口があり、これに廃気排出用ポンプが伴つた構成をもつものであり、本願発明のそなえる前項認定の作用効果は期待できないものといわねばならないし、廃気排出口を別に設けるか、設けないかは連続濾過装置の構成・作用効果において設計事項をこえた、本質的な差異をもたらすものといえよう。
従つて引用例の技術内容そして本願発明との差異を的確に把握することなく、廃気排出口を別に設けるか、設けないかの本願発明の進歩性にかかわる重要な事項を、単純な設計事項としてみすごした審決の判断は誤つているといわねばならない。
三 結論
以上のとおり、審決は本願発明の構成によつて生ずる目的・作用効果および引用例の内容を誤認ないし看過して、容易推考としたもので、その判断に誤りがあり、違法であるから、取消されねばならない。
よつて原告の請求は正当であるから、認容する。