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東京高等裁判所 昭和46年(行コ)4号 判決 1973年10月18日

東京都世田谷区太子堂四丁目二三番一二号

控訴人

羽鳥鉄義

右訴訟代理人弁護士

今川一雄

児玉安正

斎藤善夫

東京都世田谷区若林四丁目二二番一四号

被控訴人

世田谷税務署長

山岸義介

右訴訟代理人弁護士

玉重一之

右指定代理人東京国税局直税部国税訟務官室

国税訟務官

高野利正

大蔵事務官

白鳥庄一

右指定代理人東京法務局訟務部

法務事務官

小山三雄

右当事者間の課税処分取消請求控訴事件について、当裁判所は、昭和四八年六月二一日終結した口頭弁論に基づき、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四一年三月一二日付でした昭和三六年分所得税の更正のうち修正申告額をこえる部分および重加算税の賦課決定のうち審査決定により維持された部分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の提出、援用および認否は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし原判決二枚目-記録二〇丁-裏九・一〇行目の「その借地権六九・四二平方メートル(二一坪)」とあるのを「その敷地六九・四二平方メートル(二一坪)についての借地権」と、原判決三枚目-記録二一丁-表二・三行目の一その借地権五九二・二六平方メートル(一七九・一六坪)」とあるのを「その敷地五九二・二六平方メートル(一七九・一六坪)についての借地権」と、同表一〇行目の「借地権」とあるのを「敷地」と、同裏二行目の「鉄筋建て」とあるのを「鉄筋コンクリート造り」と、原判決四枚目-記録二二丁-表四行目の「法律」とあるのを「法律」と、原判決五枚目-記録二三丁-表末行の「二月」とあるのを「一二月」と、同裏三行目の「原告ら」とあるのを「原告」と、それぞれ改め、原判決六枚目-記録二四丁-裏一〇行目の「到底」の前に「右建物は」を加え、原判決七枚目-記録二五丁-表七行目の「法律」とあるのを「法律」と改める)。

証拠として、控訴代理人は、甲第七号証の一、二、第八ないし第一一号証を提出し、当審における証人細川武雄の証言および控訴人本人尋問の結果(第一、二回)を援用し、被控訴代理人は、「甲第七号証の一、二の成立は不知。同第八、第一〇および第一一号証の成立は認める。同第九号証の官署作成部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は不知。」と述べた。

理由

一、本件課税処分の経緯が控訴人主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二、本件について旧措置法(昭和三七年法律第四六号による改正前の租税特別措置法)三五条の適用があるかどうかについての当裁判所の事実認定およびこれに伴う判断は、次のとおり付加、補正するほか、原判決がその理由中に説示したところ(原判決八枚目-記録二六丁-表四行目から原判決一三枚目-記録三一丁-表五行目まで)と同一であるから、これを引用する。

(一)  原判決八枚目-記録二六丁-裏八、九行目の「その借地権六九・四二平方メートル(二一坪)」とあるのを「その敷地六九・四二平方メートル(二一坪)についての借地権」と、原判決九枚目-記録二七丁-表二行目の「その借地権五九二・二六平方メートル(一七九・一六坪)」とあるのを「その敷地五九二・二六平方メートル(一七九・一六坪)」についての借地権と、同表六行目の「第五ないし第六号証」とあるのを「第五および第六号証」と、それぞれ改め、同行の「各一ないし三」の次に「(いずれも原告の居宅の写真であることについて争いがない)」、同行の「第八号証」の次に「原審における」をそれぞれ加え、同表九行目の「部分を除く。)」の次に「および当審証人細川武雄の証言」を加え、同裏八行目の「これ」とあるのを削除し、原判決一一枚目-記録二九丁-表六行目の「移転したこと」とあるのを「移転し、さらに昭和三八年一二月二〇日同区上馬町三丁目八九一番地に移転し」と改め、同裏末行の「予め」とあるのを削除し、原判決一二枚目-記録三〇丁-表初行の「出頭して」の次に「同署所部職員から申告手続の指導を受け、その際」を加え、同表三行目の「前記ビルの三階」とあるのを「前記金子から買い受けた建物」と改め、同表六行目の「当然原告の家族も原告と生活を一にしているものと考え」、同表七行目の「このことは」から同表九行目の「であつたこと」までおよび同行から同表一〇行目の「本件係争年分の所得税確定申告をなすに際し」を、それぞれ削除し、同裏三行目の「当事者間に争いがない。)」の次に「その後昭和三七年五月に世田谷税務署職員が控訴人が居住の用に供していると申告した前記金子から買い受けた建物に申告後の確認調査のため赴いたところ、同建物はすでに取り毀わされその跡地に前記ビルの建築工事が進行中であるのを発見したが、原告において同ビルの三階全部を住居として使用する旨の説明があつたので、建築完成の暁には原告およびその家族が同ビルの三階全部を住居とし生活を一にするものと考え、このように買受建物を取り毀わして新たに居住用建物を建築する場合はさきに原告のした申告とは若干異なる申請手続が本来必要とされるのではあるが、いずれにせよ旧措置法三五条の適用が認められることになるので、特に申告の変更ないし訂正を求めることもなく原告にはたんに同法条の適用はある旨を回答したこと」を加える。

(二)  原判決一二枚目-記録三〇丁-裏四行目の「以上の事実によれば」から原判決一三枚目-記録三一丁-表三、四行目の「証拠はない。」までを次のとおり改める。

「以上の事実によれば、原告は居住の用に供する財産として取得した旨申告した金子からの買受建物に居住したことは全くなく、また、原告が建築した前記ビルは原告が仕事の都合上、例えば終業が深夜に及んだとき等に時折宿泊に利用していたにすぎないから、右ビルの取得をもつて旧措置法三五条所定の居住の用に供する財産の取得ということはできず、原告は家族とともに主として昭和三五年一月一〇日以降は世田谷区野沢一丁目九二番地所在の建物に、また、昭和三八年一二月二〇日以降は同区上馬町三丁目八九一番地所在の建物に居住していたと認めるのが相当であり、以上の認定に反する趣旨の原審証人鶴巻稔の証言ならびに原審および当審における原告本人尋問の結果(当審の分は第一、二回)は、前掲各証拠と対比してこれを措信しがたく、ほかに右認定を左右するに足りる証拠はない。」

三、次に、控訴人は、本件申告につき仮装、隠ぺいの事実がないから、本件重加算税の賦課決定および更正は許されないと主張するので、この点について判断する。

前認定のように、控訴人は金子から買い受けた建物を全く居住の用に供していなかつたのであり、原審および当審における証人細川武雄の証言によれば、世田谷税務署職員が前記のように控訴人に対して本件不動産の買受および売却につき旧措置法三五条の適用がある旨回答したのは、その当時控訴人が家族とともに前記野沢町一丁目九二番地に居住していた事実を秘して、恰も前記買受建物に居住しているかのような言辞を用いその旨世田谷税務署職員を誤信させたがためであり、また本件申告が右税務署職員の確認調査を経たにもかかわらず受理されたのは、右職員が当時建築中の本件ビルに赴いた際控訴人が右職員に対して右ビルの三階全部を住居として使用する旨申し述べて(なお控訴人は本件訴状においても三階全部を自己の居住用として使用している旨記載していることは記録上明らかである。)右職員をして三階全部の構造、間取り、広さ等から考えて、全部を住居として使用するのであれば、当然家族全員の居住の用に供するものである旨誤信させたからであることが認められ、右認定事実によれば、控訴人の本件申告はその所得税額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいまたは仮装してなされたものであると認めるのが相当である。前掲甲第五号証、成立に争いのない同第六号証の各記載、前掲鶴巻証人の証言、原審および当審(第一、二回)における控訴人本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用しがたく、ほかに右認定に反する証拠はない。してみれば、被控訴人は控訴人に対し、旧所得税法五七条一項の規定により重加算税を賦課決定することができ、また前記認定したところによれば、本件申告は偽りその他不正の方法により国税を免れようとしたものにあたるから、これに対する更正は、国税通則法七〇条二項四号の規定により本件係争年分の所得税の法定申告期限である昭和三七年三月一五日から五年間なしうるものというべきである。それゆえ、控訴人の前記主張もまた採用しがたい。

四、よつて被控訴人の本件処分には控訴人主張のような違法はなく、同処分は適法になされたものというべきであり、控訴人の本訴請求は、理由がないから、これを棄却すべく、これと同趣旨に出た原判決は相当であつて、本件控訴は、理由がないから、民訴法三八四条一項に従い、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき、行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 園部秀信 裁判官 森綱郎)

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