大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)1356号 判決

被告人 田中一夫

〔抄 録〕

論旨は要するに被告人が製造所持した物件は爆発物取締罰則にいう爆発物に該当しないから、これを肯定した原判決には事実誤認ないし法令適用の誤りがあるというのである。

しかし記録を調査すると、原判示第一の(一)ないし(三)の事実は、挙示の関係証拠により後記誤認と認められる部分を除き肯認することができ、本件につき同罰則第三条を適用処断した原審の判断は正当であり、所論に鑑み当審における事実取調の結果を参酌しても、右判断を左右するに足りない。すなわち同罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合した物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全をみだし、または人の身体、財産を害するに足りる破壊力を有するものを指称し、右物体がたまたま起爆に必要な資料をその中に保有していなくても、その他の点において爆発を惹起するに必要な装置を備え、かつその資料が容易に入手可能であり、これを添加することによって爆発現象を惹起できるように調整されている場合には、右爆発物というに妨げないと解するのが相当である(昭和三一年六月二七日大法廷判決・刑集一〇巻六号九二一頁、昭和三四年六月四日第一小法廷判決・刑集一三巻六号八八四頁、昭和三四年一二月二二日第三小法廷判決・刑集一三巻一三号三三一二頁参照)ところ、本件において被告人が製造所持した物件が右爆発物に該当するか否かにつき考察すると、原判決挙示の証拠とくに警視庁科学検査所長の昭和四六年六月一二日付、同月五日付各回答書(いずれも鑑定書添付)、証人小林芳邦の供述、同人の司法警察員調書によれば、被告人が昭和四六年四月二〇日頃東京都世田谷区等々力五丁目二〇番一一号宮崎久子方の宮本重之の居室において製造し(原判示第一(一))、同月二三日頃同都杉並区上高井戸一丁目五番一三号日興荘アパート内鈴木寿郎方居室に隠匿所持していた(同第一(二))手製爆弾二個は、塩素酸カリウム、庶糖およびシンナーの混合物約二八二グラムまたは約二七〇グラムを、いずれもコカコーラの空缶に充填し、その上に切り取ったファンタグレープ缶の底部をのせて蓋とし、コカコーラ缶の上部を折り曲げて押えた上、塩素酸カリウムと庶糖の混合物を幅約一七ミリメートルの白色和紙中に巻き込み、その上に幅約一二ミリメートルの絆創膏のような白色テープを巻いた手製の導火線(長さ約二五センチメートルまたは約二三センチメートル)を付した工業雷管(日本工業規格六号)を上部中央に装着し、周囲にガムテープを巻き付けて固定したものであり、導火線に点火すれば爆発する構造を有し、爆発した場合には桐級ダイナマイト約二〇〇グラムまたは約一七〇グラム相当の爆力を有すること、また被告人が昭和四六年四月二七日午後一一時四五分頃同都世田谷区等々力四丁目一番一一号むつみ荘前路上において、工業雷管(前同規格)二八個とともに所持していた(同第一(三))手製爆弾二個および新桐ダイナマイト二本中手製爆弾一個は、塩素酸カリウムと庶糖の混合物約五五九グラムを、ファンタグレープ缶をその継目付近から切断し底を取り除いて一枚の板としたものに巻き込み、これにファンタオレンジ缶を横に切断したものを上下からかぶせ、その合わせ目にガムテープを巻いて固定し、その上部中央に前同規格の工業雷管を装着したもので、その口部には幅約一・八センチメートルの白色和紙に塩素酸カリウムと庶糖の混合物を巻き込み、この上に幅約二・二センチメートルの褐色ガムテープを巻いた長さ約二・三センチメートルの手製導火線が挿入してあり、その先端は燃焼して焦げており、途中で燃焼中断したものと考えられるが、かりに導火線が燃焼を続けたとすれば、爆発可能であり、桐級ダイナマイト約四〇〇グラム相当の爆力を有すること、他の手製爆弾一個は、紅茶の空缶(縦七・六センチメートル、横七・六センチメートル、高さ約九・一センチメートル)内に塩素酸カリウム、庶糖および黄血塩の混合物約五六一グラムを充填したもので、工業雷管および導火線は装着されていないが(原判決が雷管の装着を肯定しているのは誤認であるが、右誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるとは認められない。)、これに工業雷管および導火線を装着して爆発させると、桐級ダイナマイト約三一〇グラム相当の爆力を有すること、更に新桐ダイナマイト二本は、いずれも重さ約一九グラムでかなり老化したダイナマイトではあるが、正常なものの約五二パーセントに相当する爆力を有し、雷管と導火線をつけることにより容易に爆発させることができること、以上の被告人が製造所持した各手製爆弾およびダイナマイトは、いずれもその爆発作用そのものにより人の身体、財産を害するに足りる破壊力を有することをそれぞれ肯認することができる。

右のような事実関係のもとにおいては、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物の意義に関する前記説示にてらし、原判示第一の(一)、(二)の手製爆弾(雷管、導火線つき)が右爆発物に該当することは明らかであり、また同第一(三)の手製爆弾およびダイナマイトは、導火線が不完全であるか、または導火線、雷管を欠いているが、被告人の知識、技術をもってすれば、これらのものに導火線、雷管を装着して爆発させることは容易に可能であるから(この点は原判決挙示の証拠により肯定できる。)、右爆発物というを妨げないというべきである。したがって結局これと同趣旨の原判決には所論の非違は存せず、論旨は理由がない。

(石田一 菅間 柳原)

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