東京高等裁判所 昭和47年(う)1918号 判決
被告人 大武勝次
〔抄 録〕
ところで、道路交通法第七二条第一項後段の報告義務は、事故を惹起した車両等のそれぞれの運転者各自に課せられた義務であり、その結果発生について運転者に過失があると否とを問わず、また加害者たると被害者たるとを問わないのであって、一方の運転者等が報告したからといって、他方の運転者の報告義務が消滅するものではないと解すべく、同条第一項後段所定の各運転者においていずれも所定の事項を報告すべき義務があるものと解するのが相当である。そうだとすれば、たとえ一方の報告義務者である被害者において所定の事項を報告したからといって、これによって加害車両の運転者本来の報告義務は消滅するものではないといわなければならない。
これを本件についてみるに、右説示した趣旨にかんがみ、前記認定のような諸事情を合わせ考えると、所論のように被告人に報告義務を課した目的が達せられたとは到底認め難く、また本件事故につき被害者相原甚蔵は前記法条所定の報告をなしたものと認められるが、これによって被告人の報告義務は消滅するものではないというのほかはない。そうすると、被告人は右の報告義務を免れることはできず、結局本件について前記法条所定の報告をしなかったものというべきであるから、同法条違反の罪が成立するものといわなければならない。
(石田一 菅間 柳原)