大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)2043号 判決

被告人 滝沢征宏 外二名

〔抄 録〕

所論も、不燃性の建造物の場合、とくに本件のような形態・構造の鉄筋コンクリート造りの建物の場合には、放火罪の既遂時期について、木造家屋の場合とは異なる見解をとるべきであると強調しているので、この点について一言する。不燃性の建物といっても鉄筋コンクリート造りのオフィスビル、ホテル、マンション、石造ないしブロック造りの住宅・アパートなどさまざまであるが、いやしくも刑法一〇八条の放火罪の対象となるものは、いずれも一部を木材などの可燃物で構成しており、その中には机、椅子、書棚、つい立て、衣類、書籍などの可燃性物件が多数存在するのが普通である。なおこれらの建造物の一部である可燃部分が独立に燃焼するころにはーこれらが木造家屋における可燃部分に比し概して硬質の素材で頑丈にできていて燃えにくい点等からみてー火勢がかなり強くなっていることが多く、木造家屋の場合と同様、それが他の可燃部分や可燃性の物件に燃え移る危険は大きいと思われる。したがって、不燃性の建造物においても、その可燃部分が独立して燃焼するに至れば公共の静ひつを害するという点では、木造家屋の場合ととくに区別して考える必要はないと解される。これを本件についてみると、列品館の構造は、原判決説示のとおり南北の長さ約三一・五メートル、東西の長さ約三二・五メートルの鉄筋コンクリート造り三階建で中央部分が吹き抜けになっており、一階には工学部長室、事務室、宿直室、二階には事務室、実験室、三階には教官室などがあり、各室には木製とびら、机、つい立て、書籍、実験器具など可燃物が少なくなかった。また階段の東側、西側、北側のガラス戸の窓わくおよび階段両側の手すりは木製であった。そして、焼きされた原判示窓わく九個は、いずれもコンクリート壁に固定されていて容易に取りはずしできない状況にあり、建造物と不可分なその一部と認めるほかないものであった。このような状況のもとで、火は木製の机、とびらなどで構築されていたバリケードなどの媒介物を経て建物の一部である右の木製の窓わくへ燃え移って独立に燃焼しはじめ、これを焼失あるいは炭化させ、さらに天井に近い部分のコンクリート壁を黒色に変色させるに至るとともに、階段両側の木製手すりを焼失あるいは炭化させたのである。火勢がいかに激しかったかは想像するにかたくなく、すでにこの段階では公共の静ひつを害したといってよく、建造物放火の既遂と認めるのに十分である。このように考えてくると、被告人らは、本件建造物に固定されその一部とみるほかない木製窓わくなどに燃え移るおそれがあることを未必的にせよ認識し、この認識のもとに意を通じて行動したと認められるのであるから、放火罪についての故意および共謀に欠ける点はないと解される。

警察官は不法占拠者の排除、不法行為の防止、犯罪容疑者の検挙等のために出動したのであり、この出動は前述のとおり正当な職務権限にもとづくものと思われるが、その出動後に被告人らは放火行為に着手し、危険は警察官にも及ぶ情勢になったのであるから、これらの警察官も同条にいう「現在する人」にふくまれると解するのが相当である。

(横川 柏井 斎藤)

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