大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)2375号 判決

被告人 久我寿太郎

〔抄 録〕

所論第一点の二は、被告人がいつ、どこで本件文書の内容を認識したのか、また、本件文書が公職選挙法一四二条の禁止を免れるために頒布する文書であることの認識をいつ、どこで得たものか、これらの点につき原判示は不明確であるとする。そこで、この点について考えると、本件文書頒布の当時は原判示の選挙の運動期間中であったことにつき被告人の認識があった点は、原判決が判示説明しているとおりであり、また、原判決の挙示する各証拠を総合すれば、被告人は、前記のように、栄久内燃機の三階会議室において藤倉和明らに本件文書を頒布する直前ごろ、本件文書の存在を確認し、その文書の内容の隅々まで目を通すことはしなかったが、黒住忠行候補の氏名や写真が表示掲載されていることを知り、前記のように、振興会本部において加藤専務理事から話されたことと考え合わせ、黒住候補の当選をはかるためにこれを頒布するものであることを認識したこと、そして被告人は前記のとおり本件文書を頒布したものであり、本件文書が多量に多数人の許に頒布されることを当然認識していたこと、以上の事実が認められるのであるから、本件の罪が成立するにつき必要な行為者の認識は十分に存するのであり、故意の成立に欠けるところはないというべきである。被告人の所為が公職選挙法一四二条の禁止を免れる行為にあたるとの法律的判断まで被告人が有している必要はない。そして右故意の存在ないしその成立時期などについては判決中に特段の判示がなされることを必要としないのであるから、原判決に理由不備の違法があるとはいえない。

(高橋 寺内 千葉)

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