大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)3042号 判決

被告人 大谷三ツ男

〔抄 録〕

しかし、記録によれば、被告人がすりばち池付近で猟をしようとして猟銃に実包二発を装てんしたが、獲物が見当らなかったので同所での狩猟を中止し、ジープに乗車し約一・四キロメートル離れた大湊地内に向おうとしたことは疑いない。所論は、被告人がすりばち池付近から大湊地内まで狩猟をしながら移動するつもりであったと主張するが、関係証拠を検討しても、右主張は認めがたく、かりにその意思があったとしても、被告人としては、当時の天候、道路状況(なお雪が降りつづいており、相当の降雪で道も悪かった。)などに徴し、また銃の安全装置が一〇〇パーセント安全といえない事情にかんがみ、少くともジープに乗る前には、その動揺等による銃の万一の暴発事故を防ぐため、あらかじめ銃から実包を抜き取るべき注意義務があったものといわなければならない。またたとい所論のように、この注意義務が昭和四六年法律四八号による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法一〇条三項に該当しないとしても、本件におけるその義務の存在は、条理上当然肯定されると解するのが相当である。

さらに、所論は、被告人が猟銃をジープの後部座席に銃口を被害者に向けぬように斜めに横たえたので、銃の置き方に責められるべき点がなく、本件事故は、被害者運転のジープの暴走とこれが砕石山に乗り上げたという偶発的な異常な事態の介在により惹起されたもので、被害者の一方的不注意に基づくものというべく、被告人には過失がないと主張する。

なるほど、被告人がジープに乗る際、銃口を山側に、銃床を海側に向け斜めに銃を運転席うしろの後部座席に横たえたことは所論指摘のとおりであるが、それでも、銃口が運転台の方向、すなわち運転者の方に向いていたことは否定しがたく、銃の取扱者としては、万一の場合を慮り、実包を装てんした銃は、たとい安全装置を施していても、右のような状況に置くべきでなかったと思われる。したがって原判決が、かような銃の銃口を他人に向けないようにして運搬すべき注意義務を被告人に課し、この点に過失を認めたのも正当である。記録によれば、被告人が猟銃を前記のように座席におきジープに乗車し、後部ドアを閉め終ったところで、ジープが発車し一〇〇メートルか二〇〇メートル走ったとき、ジープが道路左端の砕石山に乗り上げ動揺したことが認められる(被告人の司法警察員に対する供述調書)。この点被害者の運転にも落ち度がないとはいえないが、かような落ち度があるからといって、これに先だち被告人に前記のような重大な注意義務違反があり、これが事故発生の決定的原因と認められる以上、被告人の過失責任を否定することはできない。

(横川 山崎 中島)

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