大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和47年(う)3132号 判決

被告人 株式会社アルテリーベ

〔抄 録〕

原記録の各証拠および当審における事実取調の結果によれば、本件会社は横浜店、銀座店、赤坂店などの各店舗をもち、社長たる会社代表者日比生一虎のもとに常務取締役、取締役、総支配人、管理課長、経理課長、調理課長、各店の支配人をおき、各店のチーフ・コック以下の従業員を合わせると、約一二〇名に達する規模の料理店業者であること、各監督系統に応じて従業員等の監督が行なわれ、代表者日比生も幹部会に出席し、経営、労務につき一般的な発言をしていたことを認めることができる。

しかし、本件のように本件会社の横浜店の調理責任者であって、同店の従業員関係を担当していた使用者たる望月勝が、事業主たる本件会社のために深夜十八才未満の男子労働者の小林善樹を調理人として使用した場合に、労働基準法一二一条一項但書に従い、本件会社がその責を免れるためには、代表者たる日比生が右の基準法違反の防止に必要な措置をした場合でなければならないところ、それは小林の深夜使用の禁止に関し単に一般的、抽象的に注意を与えただけでは足りないのであって、特にその禁止につき進んで積極的、具体的に指示を与えて違反の防止に努めたことを必要とするのである。

ところが、原記録の各証拠によると、代表者たる日比生は、一年に一回位しか現場に顔を出さず、一切を現場の監督系統に委かせて、自らは意慾的に年少者の深夜使用の禁止に関心を示していなかったこと、従って横浜店の調理責任者望月勝も、本店調理課長の三島礼二から「小林はコックとして使ってくれ、年令が足りないから注意してくれ。」と申しつがれたが、それも望月に対し深く留意させるほどのものでなく、仮に代表者ら幹部が年少者を深夜に使用しない意向を持っていたとしても、その意向は望月に対して徹底していなかったことを認定することができ、当審における事実取調の結果に徴するも右の認定を左右することはできないし、他に代表者が望月の本件違反行為の防止に法律上、必要な措置を尽したことを認めるに充分な証拠を発見しえないのである。

従って、原判決が本件につき労働基準法一二一条一項但書の規定の適用がないと解したことについて、法令の解釈ないし適用の誤りはないのであり、論旨は理由がない。

(龍岡 藤野 粕谷)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!